言論の自由、下から死ぬか 上から死ぬか

現代の赤報隊って、だれだ?



草なぎ剛「赤報隊事件」テロにあうメディアの側にも非があるのか。同僚を殺された記者たちの執念の実録今夜 - エキレビ!(1/4)
赤報隊(官軍でない)についての面白いお話。

ましてやマスコミへの不信は時代を下るごとに深まっている。文藝春秋の元編集者で作家の半藤一利は2002年の時点で、襲撃事件のあと朝日新聞が持ちこたえられたのは、世論が味方してくれたからとした上で、《同じような事件がいま起きたらと考えると、ぞっとします。報道被害やセンセーショナリズムがひどくなり、国民の間に「マスコミはやりすぎだ」と批判が強まっています。そこにつけ込み政府はメディア規制に乗り出してきた。「テロにあうメディアの側にも非がある」と世論を突き放されたら、もちません》との見方を示した(『新聞社襲撃』)。今回のNHKスペシャルが、赤報隊事件を検証するにあたり、警察ではなく新聞社側の視点を選んだのは、同じマスコミとして立場を省みるという意図もあるはずだ。

草なぎ剛「赤報隊事件」テロにあうメディアの側にも非があるのか。同僚を殺された記者たちの執念の実録今夜 - エキレビ!(1/4)

現代だからこそ赤報隊事件が重要な問題、というのは確かにその通りでしょうねぇ。世論のウケイカ云々より、そもそもマスコミの自滅・自業自得感は強いんですけども。でもこうした『マスコミへの不信』って欧米でもかなり一般的になっていて、殊更に日本だけが劣っているというわけでもないのが救いかもしれないね。いや、悲しむべきなのか。
その意味で敢えて冷笑的に見ると、今の不信感の蔓延によってわざわざ「下からの」違法なテロに走られるほどの価値がない、という構図さえ成り立ちつつあるのでマスコミの中の人たちの戦略的勝利かもしれないね。
――上記でも言及されているように、テロをするまでもなく、世論の(暗黙の)支持を得た政府が「上から」メディア規制をすればいいのだから。



ちなみにこうした手法を、実際にやってみせ、ほぼ成功を収めたのがアメリカの前オバマ政権でもあったわけですよね。
ウィキリークスとアサンジさんやマニングさんの顛末*1や、スノーデンさんとグレン・グリーンウォルドさんの顛末(彼の著書『暴露』に詳しい)で明らかになったのは、政権は機密情報源特定の為に記者や編集者の通信を傍受していたし、ついでに記事を出した編集者に対し「共謀者」として宣誓供述書まで求めていた。
「国家安全保障は言論の自由に優先する」ということをこれ以上ないほど示してみせたオバマ前大統領。
ウォーターゲートで荒れたニクソン以来、政治的圧力を使い「最も報道ジャーナリズムに敵対的」となったオバマ政権。きっと有権者からはそっぽ向かれたんでしょうね! 有権者を舐めるな!


「最も尊敬する男性」でオバマ氏が10連覇 トランプ大統領は2位 | ハフポスト
ところがぎっちょん、そんなオバマさんこそが10年連続でアメリカで「最も尊敬される男性」となっている現実。全然ダメージはなかった。しょうがないよね。だってリベラルな『黒人初の大統領』という点こそが重要であって、メディア規制なんて有権者たちにとっても大した問題ではなかったんだもん。
少なくともアメリカの国家安全保障の分野においては、合衆国憲法が謳う『言論の自由』は既に毀損されている。
いやぁまさに懸念すべき『現代版赤報隊』の末路を見ているようだよね。少なくともアメリカでの経緯を見ると「上から」によってメディアが殺される可能性が高く、そしてその上でも政府の信頼性はほとんど揺るぎなく、かなり決定的なメディア規制をしたところで政権への政治的ダメージは少ない、という民主主義政治史における注目すべき前例をオバマ政権は証明した。


言論の自由の死に方について。日本でもこうしたオバマさんの成功体験に追随する日はやってくるだろうか?
――と考えると、わざわざ赤報隊のように「下からの」テロに走るまでもなく、やはり「上から」死ぬ可能性がより高いとは個人的に思うんですよね。
山中所長が給与全額寄付 京大iPS研、論文不正 - 共同通信
共同通信公式 on Twitter: "【京大iPS研の論文不正】問題の論文を掲載した米科学誌の創刊に、山中伸弥所長が深く関わったことが分かりました。山中氏は今回の論文審査に関わっていないとみられますが、現在も編集委員の一人。(松吉) #山中伸弥所長 #iPS #京都大 https://t.co/rmsvYFJzLD"
山中伸弥先生の記事で炎上→共同通信、同一URLで記事全面差し替えを行い燃料追加 - Togetter
有権者の多数の反対を押し切っての強硬な対応どころか、世論の「ざまぁみろ!」という声と共に。



みなさんはいかがお考えでしょうか?