その工作は民主主義に効きすぎる

自由の代償は永遠の警戒である」と某建国の父も言ってたしね。


米、選挙介入でロシア人13人起訴 特別検察官が発表 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
前回日記でも触れたロシアによる米国大統領選挙での介入の顛末が出ていたそうで。

 公開された起訴状によると、被告らは2014年から現在に至るまで「2016年の大統領選を含む米国の政治および選挙プロセス」への介入を共謀。米国人を装って社会的・政治的な分断を生む問題に焦点を置くソーシャルメディアアカウントを複数管理していた。

 被告らのグループはロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領と親しい実業家エフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏の指示に従い「多数の」米国人に影響を及ぼしたとされる。この作戦には数百万ドル(数億円)の予算が投じられ、シフト制で働く「数百人規模」が関与していたとされる。

米、選挙介入でロシア人13人起訴 特別検察官が発表 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

いやぁおっそろしいお話ですよね。当日記でもずっと書いてきたお話ではありますが、日本にとっては欧米が揺れるテロなんかよりもずっと身近にある『脅威』じゃないかと*1
フェイクニュースで社会分断が加速する。
偽投稿、周到に準備か 「米大統領選前、1000のツイッター突然始動」 ロシア疑惑:朝日新聞デジタル
1千のアカウントが突然…米大統領選、ロシア介入の実態:朝日新聞デジタル
といってもこうして既存メディアで報道されるときはポジショントークとしてソーシャルメディアばかり強調されますけども、その元となった手法である「虚偽の情報で作られたニュース」という意味において、フェイクニュースの「効用」を証明してきたのは、他ならぬ既存マスメディアたち自身の手によるものだから、やっぱりこのフェイクニュース関連のニュースを見る度におまいう感は否めないんですけども。


私たちが愛し運用している民主主義政治において何故こうした分断工作が恐ろしいのかというと、そもそも私たちの間にはそうした『断層』がもう身も蓋もなくありふれまくっているから、でしょう。
多様な私たちには多くの違いがある以上、社会の内側に様々な違いがあること自体は避けては通れない。単純な政治的ポジションの左右というだけでなく、民族・宗教・貧富・既得権益・性差・そして世代等々。そしてそうした違いは断層線として容易に分断を生む。広義の意味での「同一化」政策を時代遅れとして否定する以上、このプロセスは覆しようがない。
――であるからこそ多様な99%の為の利益実現のためにも、民主主義政治はベストではないにしろベターな選択肢としてより考えられるようになった。


多元社会を掲げる以上、この避けようのない脆弱性はきちんと理解しておくべきだと思うんですよね。何もロシアのような介入が私たちの社会に分断を「生む」わけでは絶対になくて、彼らは「元々あった」火種に油を注いでいるだけ。もちろんその扇動自体は確実にギルティではあるものの、しかし分断の存在自体を否定しするのも欺瞞でしかない。
日本のネット界隈でもしばしばみられる光景ではありますよね。ネトウヨのバカが、パヨクのアホが、反米親米嫌韓親韓反中親中反日愛国が、老害ゆとりが、男が女が。いやぁ喧しい限りです。毎日みんな元気だよね。
既にここに分断は存在しているし、既にお互いに「俺と彼らは違う!」とばかりに相手を罵っている。
(おそらく上記のような外部介入でない)日本人の当人同士たちですらこうなのだから、火に油を注ぐのって簡単な仕事だよね。


「移民難民は追い出せ!」
という勢いのある口ぎたない暴言だけでなく、
「ああしたヘイトを煽る人たちはちょっとおかしいよね」
という冷静な反論でもそれは実現できてしまう。
それこそどちらもマッチポンプだってありうるし、そこから更に一歩進めば最早何もしなくてもお互いに「アイツらは外国の介入者たちだ!」と罵る合うところまで見えるようになる。あ、既に到達しているかもしれない。
民主主義政治と介入工作は相性が良すぎる。
こうして見るとSNS規制をして分断(=多くの場合で民主化要求)を抑え込もうとする中国やロシアが正しいのかも、ってちょっと思ってしまいますよね。その意味では、今回の一連のロシア介入だけを批判するのはあまりフェアではない。むしろそれは民主主義を輸出しようとしてきた欧米世界のお馴染みの伝統的介入ですらあるから。


これまで通り自由のままにしておくべきなのか、それとも中国やロシアのように規制するしかないのか。
そうなると、一方は民主化を拒否するためにSNS規制、もう一方は民主主義を守るためのSNS規制、という構図になってちょっと愉快だよね。SNSとは一体なんなのか。大量破壊兵器か何かかな?
「シリコンバレーが世の終末を引き起こす」ことを「楽観主義者」のビル・ゲイツさえ危惧している - GIGAZINE
そりゃビルゲイツさんも危惧しちゃいますわ。


民主主義を輸出されてきた独裁国家だけでなく、私たちも想定しないわけにはいかなくなった現代社会における外部からの政治的な扇動介入について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:こちらも欧米社会よりも「均一性」の強い日本ではあちらよりも遠くにはあるんですけども。