グレートゲームを未だに信じている、哀れで合理的な魂。
プーチン露大統領、「無敵」の核兵器を発表 - BBCニュース
プーチン氏「無敵」新型ミサイル発表、CGでフロリダ攻撃? - BBCニュース
プーチン氏 「無敵」新兵器を誇示 米ロの軍拡競争示唆 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
プーチンさんの演説が面白かったそうで。
プーチン氏は演説で、動画を使って、2つの新たな核兵器運搬システムを紹介。プーチン大統領は、察知されることなく攻撃できると説明した。動画には、米南部フロリダ州を複数のミサイルが攻撃するという内容が含まれていた。
プーチン大統領は1つのシステムについて、「低空飛行し、察知が難しい巡航ミサイルで、(中略)射程に制限がなく、飛行経路は予想不可能で、何十もの迎撃システムをかいくぐることができ、現存あるいは将来のミサイル防衛、防空システムの両方に対して『無敵』だ」と語った。
プーチン露大統領、「無敵」の核兵器を発表 - BBCニュース
「無敵の核」ですって。そんな最上級に強い言葉を使ってしまったら北朝鮮の報道官が困ってしまいそう。
ここで面白いのは、この米露間の摩擦がただ両者の拗れた関係からだけ生まれているわけではなくて、むしろ北朝鮮やイランといった外部要因がその悪化を加速させている、という点でしょう。
――北朝鮮やイランの脅威に備えるためのミサイル防衛拡大。
もちろんアメリカのその意図が純度100%上記の理由だけだと言うことは無理筋ではあります。しかし現実に――まさに私たち日本も同意するように――それが同盟国の要請による点があることも否定できない。北朝鮮のミサイルから自国を守るために、防衛力向上を願う私たち。
ところが、そんな北朝鮮に対する日本の防衛力向上も結局はロシアの攻撃能力を低下させることになることにはなんら変わりない*1。
ヨーロッパなどの一部を除き21世紀も尚、軍事均衡こそが平和と安定の礎であるこの世界において、自分たちが持つ「相手を予定通り破壊できる能力」が脅かされるのはそのまま現状が打破されることと同義である。
一方の防衛能力の向上は、もう一方の攻撃能力低下と同義である。正義か不正義かはともかくとして、まぁ理論的にはその通りですよね。
相手の「意図」がどうであろうと、相手の「能力」によって備えを決める。
軍事における古典的な箴言はおそらく現代でも生きているし、少なくともロシアはその通りに従って合理的にゲームをしている。無敵の盾と無敵の矛の連環の理とともに。
北朝鮮の核問題を放置した結果が、めぐりめぐってこうしたロシアの核兵器能力の向上に繋がるという、まるでピタゴラスイッチのような国際政治リアリズムの帰結。現実主義派への批判として昔からあるように、私たちはそんなピンボールのボールのようにただ自律しないまま外部反応に応じて動く存在ではないものの、しかしそういう面があることも否定できない。
今回の件はそんな古典的リアリズムの帰結そのものでしょう。少なくとも『核のドミノ』の最初の一歩は現実に起きつつある。
三度起きつつある核兵器開発の連鎖は、今回も上手く乗り切れることができるだろうか?
でもまぁ第二次大戦後世界において、おそらく最も重要な国際的ルールだったはずの『武力による国境線変更』も、まさにそんなロシアの論理によってあっさり破られちゃったからね。核開発競争がまた起こったって全然不思議じゃないよね。
『核兵器』をめぐる諍いも、容易にそんなレッドラインを越えてしまうんじゃないかな。「あやまちを繰り返さない」私たち日本としては、うん、まぁ、そうねぇ、これまで通り専修念仏を一層進める以外にないかなぁ。
ようこそ軍拡競争と核ドミノの時代へ!
世界が平和でありますように。