21世紀版『栄光ある孤立』へ

いやまぁ「世界からロシアが孤立している」のではなく、「ヨーロッパがロシアから孤立している」という見方もできますけども。実際、中国があるから多少はね。


【元ロシア・スパイ】英政府、ロシアの外交官23人を国外追放 - BBCニュース
【元ロシア・スパイ】 殺人未遂「背後にはロシア?」 プーチン氏にBBC記者直撃 - BBCニュース
【元ロシア・スパイ】使用された神経剤はロシア製=英首相 - BBCニュース

ということでイギリスでの毒殺が、ロシアの仕業かもと大騒ぎだそうで。

テリーザ・メイ英首相は14日、駐英ロシア外交官23人を国外追放すると発表した。英南西部ソールズベリーで今月4日にロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏(66)と娘のユリアさん(33)にロシア製の神経剤が使われたとされる殺人未遂事件に関して、ロシア側が説明を拒否したことを受けての措置。今回の国外追放は、1985年に元ロシア将校オレグ・ゴルディエフスキー氏の亡命後に31人が追放されて以降、最大規模となる。

メイ首相はロシアに対し、13日深夜までにこの件に関して協力するよう求めていた。この期限が守られなかったため、ロシアへの「明確なメッセージ」となるさまざまな措置を発表した。

【元ロシア・スパイ】英政府、ロシアの外交官23人を国外追放 - BBCニュース

しかし暗殺はロシアの伝統芸*1ではあるので、何で今になってこんな強硬な態度に、と考えると色々と現代の国際関係が見えてくるお話かなぁと。こちらも伝統的にヨーロッパには根強くあったロシア警戒のレベルは冷戦期の最大時からその終結を経てかなり低下したものの、それからクリミアにシリアを通じて再び段階が上がり続けている感じ。
イギリス側も、欧州連合離脱から弱みを見せられないとか色々と事情がありそうで。逆にロシアがこういう反発を受けるのはおそらく織り込み済みで、まぁクリミアを経た今ならそれもなんのその、というお話ではありますよね。


だからある意味でこうした強硬な外交的返答ってロシアからすれば「格上げ」と言うことはできるんですよね。あまりに弱小化した結果、これまで冷戦時代まであった「不倶戴天の強敵」から「取るに足らない弱小国」という扱いを多少なりとも受けてきたのがソ連崩壊後しばらくのロシアでもあったわけだから。


しかしクリミアで成功し、シリアでも概ね成功し、最早ロシアの影響力をアメリカもヨーロッパも無視することはできなくなった。確かに各種制裁を受けロシア経済にダメージを受けていることは否定できない。しかしそんな反発ってロシアが、なによりプーチンさんが悲願としてもとめていた大国としての『尊敬』の一側面ではあるでしょう。地政学的悲劇を繰り返さない為に強いロシアを。
――ついにロシアが再びまともに『敵』扱いされるようになりつつある。
サミットに加えられていた時のように冷戦以後盛り上がりかなり真剣に語られていた、ロシアを懐柔させ言うことを聞かせよう(ロシアをヨーロッパの一員にしよう)とはもう誰も言わなくなった。確かにこれはロシアの「孤立」ではありますが、同時にまた「栄光ある敵対関係」の復活でもあるんですよね。一方から見れば後退であるかもしれないものは、逆から見れば進歩でもある。


元祖のイギリスと同様に「栄光ある孤立(震え声)」な様子がないとは言えませんけど。しかし、それでも、やっぱり今のヨーロッパとアメリカが見せるようになったロシアへの敵対態度って、少し前まであったロシアへの見下した視線がでないだけプーチンさんなんかは歓迎するんじゃないかなぁと思ったりします。
強大な敵として見られるからこそ得られる尊敬。飼いならされるくらいなら、おそロシアの方がずっとマシだ、なんて。


国内的な示威行為(国外へ亡命しようが裏切者は許さない)と、国外的な示威行為(ロシアは強大な力を持っている)の一石二鳥の暗殺という手段。そういえば北朝鮮もやっていましたよねぇ。
まぁオバマさん時代からのアメリカも中東で多用していたわけだし、ロシアがそれに追随したって不思議じゃありませんよね。こちらも国境を開きまくった結果、中東世界の風景と似てしまうヨーロッパ都市として見ると皮肉なお話ではありますけども。


21世紀は暗殺の時代だ、なんて。まぁオバマさんがやっていたように戦争よりはマシかもしれないね。
世界が平和でありますように。