「偉大なアメリカの為だからセーフ」と考えたトランプさん

「卑劣な化学兵器使用をやすやすと見逃して、それが本当に『偉大なアメリカ』なのですか?」と囁く声にトランプは、




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ということで構図としては、ほぼほぼ「攻撃前夜」であります。

軍事攻撃はあるのか
トランプ大統領は「強力な」対応を約束しており、複数の軍事的選択肢について触れている。ジェイムズ・マティス国防長官も今週予定していた西部州の訪問をキャンセルした。

昨年4月にシリアで反政府勢力が支配する町で神経剤サリンが使用され、80人以上が死亡した際は、トランプ大統領はシリア軍の空軍基地への攻撃を命令。地中海東部に展開する米駆逐艦から巡航ミサイル数十発が発射された。

米国がバッシャール・アサド大統領率いるシリア政権軍を直接攻撃したのは初めてだった。

今月7日にドゥーマ化学兵器が使用された疑惑が生じて以来、米政府は英国やフランスと対応をめぐって協議を続けており、西側諸国による共同軍事行動の憶測が出ている。

トランプ米大統領が南米公式訪問をキャンセル シリア化学兵器疑惑で - BBCニュース

あれだけ中東撤退を叫んでいたトランプさんがこんなことになるなんてなぁ、という気持ちにはちょっとなりますよね。


でも、そもそも『9・11』以前の子ブッシュさんだって「米軍の国外派兵削減」という少し前までのトランプさんとほとんどまったく同じことを言っていたので、今回もそこまで異例な(「君子」かどうかはさて置き)豹変かというとそうではない。政治家の選挙公約なんて常にそうしたものだというと、私たちも見慣れた民主主義政治あるあるではありますけども。


それにこうした構図になるのはある意味で、彼の掲げた「グレートアメリカ」というスローガンの論理的帰結でもある、とも個人的には思うんですよね。子ブッシュさんもそうだったように、もちろん政権内部のネオコン的影響はあるものの、しかし自身は微妙に違う地平に立っている。
私たち日本のような手段も意思も持たない国ならともかく、世界に冠たる偉大な国家であればこそ、まず人類史に残りかねない蛮行――化学兵器使用がそうでなければ何が蛮行であろうか?――をただ看過することが許されないポジションに立つことになる。
シリア化学兵器の国際調査巡り米ロが衝突 互いに相手の安保理決議案を否決 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
今回も拒否権の応酬で国連なんて結局何の役に立っていないのだから、責任ある大国がどうにかする以外にないというのは正論でしょう。
ただリベラルな、あるいはネオコン的価値観から蛮行を見逃さないのではなく、むしろ自国の威信を守るためにこそ。


論理的、あるいは功利主義的には、あんな泥沼さっさと撤退して誰か(現状ではおそらく政府軍・ロシア・イラン・トルコ)が敵対者たちを概ね殲滅し終えるまで放置した方が都合がいいのはその通りでしょう。人権擁護という意味でも既に最悪というレベルなのだから、紛争が終わりさえすれば今よりは悪くはならないだろうという見方はおそらく正しい。その意味で、本邦にいっぱいいる『人権重視』なリベラルたちは正しい位置(敵対する一方が全員死ねば平和になる)にいて、シリアの人権問題について正しく沈黙している。
同様にオバマさん時代にやったこと=やってないことって、つまりそういうことでしょう。新たな泥沼に入り込みたくないという一心から彼は『IS』への限定的な攻撃のみで、シリア政府との戦争化をひたすら避けていた。


しかしトランプさんはそうでない。『偉大なアメリカ』と『中東撤退』という矛盾のうち、より重要なのは偉大なアメリカだと択びつつある。
実際、それを看過したのではまったく「偉大な国」とはふさわしくない、というのは確かにその通りでしょう。面白い皮肉なのは、それをほとんど気にしていなかった前任者オバマさんの「レッドライン詐欺」の顛末=アメリカの威信の失墜が、むしろ今回のトランプさんの変節に影響を与えたように見える、という点でしょう。
子ブッシュさんがオバマさんに影響を与えたように、オバマさんの前例がトランプさんの選択に影響を。


「正しい戦争だからセーフ」と考えたブッシュさんと、「戦争じゃないからセーフ」と考えているオバマさん - maukitiの日記
ファースト、セカンドに続く、サード・プレジデントの攻撃正当化についての論理的帰結。
「偉大なアメリカを守るためだからセーフ」




みなさんはいかがお考えでしょうか?