『世界の敵』に一番近い国

アメリカでもロシアでも中国でも北朝鮮でもイランでもなく、その国とは一体。


米、国連人権理事会を離脱 「政治的偏向のはきだめ」と - BBCニュース
ということで前回の通常日記でも少し触れたように、アメリカ――というよりはトランプさんが離脱しちゃったそうで。
これがトランプさんの手による暴走、というだけの意味かというとそうではない。それこそ『人権理事会』の誕生時からアメリカは反対――国際刑事裁判所なんかと同様に「恣意的に」利用されることを恐れて――だったことを考えれば、もちろんより踏み込んだと言うことはできるものの、従来の立ち位置から大転換したかというとそうではないでしょう。

米国は長年、人権理事会を批判してきた末に離脱を決定した。

米国は2006年の理事会創設当時も加入を拒否していた。理事会の前身である人権委員会と同様、人権侵害の疑いのある国にも加盟を許していたためだ。

加入したのはオバマ政権時代の2009年で、2012年に理事国に再選された。

しかし2013年には、中国やロシア、サウジアラビアアルジェリアベトナムといった国々が選ばれ、理事会は人権団体から非難を浴びた。

さらに、理事会から不当な批判を受けたとしてイスラエルがレビューをボイコットしている。

ヘイリー米国連大使は昨年、反政府デモで何十人もの死者が出ているベネズエラに何の措置も取られていない状況でイスラエルに対する非難決議が採択されたことは「受け入れがたい」と述べていた。

イスラエルは理事会で唯一、常設課題とされている国で、パレスチナへの対応が定期的に調査される。

米、国連人権理事会を離脱 「政治的偏向のはきだめ」と - BBCニュース

少し前にみんなも自分の好きな(都合のいい)人権問題にコミットしような! - maukitiの日記というネタ日記を書きましたけども、まぁもちろん念頭にあったのはこのすばらしき『人権理事会』でありました。ところがその後すぐにトランプさんがここまで一気に踏み込むとは個人的にも思いませんでした。彼はやっぱりスゲーなと感心してしまいます。。
国連人権理、中国代表部の横暴さ – アゴラ
アメリカも昔の日本堂々退場スみたいなことしないで、中国みたいに堂々と内部から改革()すれば良かったのにね。




ともあれ、上記でも「唯一の常設課題」とされているように、まぁイスラエルという国は国際社会において恰好の非難の的でもあるわけですよね。
もちろん話の大前提として、そのイスラエルへの非難に正当性がなく無罪・冤罪なのかというとそんなことは絶対にない。私たちが一般に持つだろう自由と人権の意識に照らして、イスラエルがやっていることは有罪である、というのはまったく間違いない事実でもあります。というかぶっちゃけネタニヤフさんってトランプさん同様に、歴代首相と較べて大分アレだよね。
――ただ、じゃあイスラエルだけが突出して非難されるべきなのかというとそうではないでしょう。
しかし悲しむべきか喜ぶべきか、人権理事会で最も凶悪な国家扱いされるのはイスラエルである。アメリカがしばしば指摘するこの構図って、まったく事実でもあるわけで。「質」という意味では世界最悪の人権状況と名高い北朝鮮ですらもちろんイスラエルの回数には遠く及ばないし、「規模」という意味では中国あるいはロシアが非難決議された回数というと……うん、まぁ、そうねぇ。インド人ってすごい数字を発明したよね。きっとイスラエルはそれらよりもずっと凶悪な人権侵害国家なのだろうなあ。


でもそうすべき理由はある。パレスチナ人をいじめるし、核は隠し持つし、横暴なアメリカと仲が良いし、ついでに太古の昔から我々の社会にとってユダヤ人は迫害すべk……おっとこれ以上はいけない。
つまるところ、みんなイスラエルがきらいなんだもん!


日頃は多くの価値観の相違からまったく合意できない私たちではありますが、しかしことイスラエルユダヤのことになると話は別である。日頃人権問題で反目し合うヨーロッパやイスラム世界やロシアや中国ですら、イスラエルユダヤへの非難については合意できる。
あれだけの大虐殺があっても尚、(もちろんイスラエル建国以来の所業を考えれば自業自得感はありますけど)ヨーロッパで嫌われ続けるユダヤ人ってよっぽどだよね。
ヨーロッパ世界と中東世界で嫌われるということは、事実上世界の半分以上であり、つまり現時点では『世界の敵』にもっとも近い国ですらある。ドイツによって600万人も殺されたのにこの有様、あるいはだからこそ600万人殺されるような羽目になったのか。


共通の『世界の敵』さえあれば世界は平和になる、とはしばしば語られる言説ではありますが、まぁ人権理事会の現実や、イスラエルを取り巻く現状を見るとなかなか現実味あるなぁと思ってしまいますよね。反ユダヤでは誰もが手を取り合える。それなのにアメリカのような空気読めてない奴らも居ますけど。



やらない善よりやる偽善とはいうものの、そうした恣意的な槍玉の選択が世界の人権問題の解決に役に立つのかというと、個人的にはまぁまったくの逆効果なんじゃないかとは思います。アイツらのやっていることは気に入らないからアウトとか、アイツらの場合は友達だからセーフとか。このことから私たちが学べるのは、友達を選べばいくら人権侵害しようがセーフ、以上のことなんてなさそうですけど。


ということで、みんなも自分にとって都合のいい人権問題にコミットしていこうな! そして自分たちは都合のわるい側にいるようにしような!
みなさんはいかがお考えでしょうか?