ほんとうの「民主主義の死」というのをご覧に入れますよ

また恒例パターンの繰り返しか。


トルコで強力な大統領制始動へ エルドアン氏9日宣誓 | ロイター
エルドアン大統領再選、トルコはもはや民主主義ではない | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ということでエルドアンさんが一線を越えてしまったそうで。本邦では毎年死んだフリをしている民主主義が、リアルに死んでしまいそうなトルコ。

これに伴って同国は長らく続いた議院内閣制から、強力な権限が付与される大統領制に正式に移行することになる。大統領に権限を集中する制度の導入は、昨年の国民投票において僅差ながらも賛成多数で承認された。

新制度では首相ポストが廃止され、大統領自ら内閣を組織して閣議を主宰するとともに、省庁の改廃や統制、公務員の任免を議会の承認なしで行える。4日付官報は、こうした一連の制度変更に関連する法律改正を定めた政令を掲載した

トルコで強力な大統領制始動へ エルドアン氏9日宣誓 | ロイター

あ、これはマジな感じ。でも仕方ないよね。イスラムの方が、強権政治の方が世界的トレンドだもん。個人主義とか()。
他にも、もちろんこれが主因だというつもりはありませんがEUがトルコ加盟承認について期待を持たせるだけ持たせて引き延ばした挙句に切り捨てたっていう恨みの歴史もちょっとあるんじゃないかと個人的には思います。あれのせいでトルコが決定的にあちらに行っちゃったよねぇ。まぁヨーロッパとトルコが同じ「欧州人」なんて現実絶対にありそうになかったですけど。
だったら何でその気を見せたんだっていうと、うん、ほら、安全保障上ヨーロッパの東側には『壁』があった方がいいし……(NATO的な意味で)。見事に逆効果なオチだった。


ともあれ、まぁしばしば死んだフリをする民主主義がマジで死ぬ構図としては王道パターンではあるんですよね。私たちが極北としてあげるナチスもそうであるように「民主的プロセスを通じて民主主義が死ぬ」といういつものお話。トランプさんのこともそうだとする人たちもいっぱいいることでしょう。
何も独裁者たちが強権によって反対意見を黙らせるわけではなくて、そうした強い権力を有権者が与えてしまう。まぁその理由は様々で、旧政権の失態で他政党がクソすぎたり、あるいは経済危機や外敵の存在の扇動があったりもする。
そうした雪崩を本邦でもしばしば見られるように「愚民たちが悪い!」と断罪してしまうのは簡単ですけども、しかしそれこそが衆愚政治とも言われるように民主主義政治の現実でしょう。いやむしろそうした自称「賢く」て「エリート」で「理性ある」人たちからの上から目線な意見に反発して生まれる現象でもある。


自分の生活さえ良ければ独裁者が居てもいいのか!? というのはしばしば議論されるお話ではありますが、まぁでも大抵の人はそれで自らの個人的生活の自由が奪われなければYESと答えるんじゃないかな。完全な普通選挙が始まってから100年ちょっとしか経っていないものの、投票の有無とは関係なく18世紀以降から概ね「自由の国」というのは存在してきたわけだし。
一般にそんな「自由の国」であると認められるために重要なのは、「司法の独立」「報道の自由」でもあります。
確かに自らの手で政治家を選ぶ選挙権がなくても、最低限それさえあれば個人の自由な生活としては必要十分なんですよね。西欧的価値観からすれば投票は絶対必要不可欠だとされていますけども、自由と投票は必ずしもイコールではない。つまり西側的民主主義以外にも「自由な国」があるのはまったくおかしくない。
――しかし世の権力者たちはすーぐその二つを制限したがるので、その抑止力としても投票には意味があるんですが。
アベ政権批判としても、上記二つを犯そうとすることに関しては現実的な「個人生活の自由が侵される危険性」という意味でその批判は正当でもある。ところが後者の『報道の自由』については、自業自得というべきかこちらもまた世界のトレンドとしてあるようにその信頼性の低下によって「民主的プロセスを経て」侵されかねない構図でもあります。権力者によるフェイクニュースが死すべしであるなら――既存メディアによるフェイクニュースは?
だからこそ私たちの自由な生活のためにも、メディアたちは自殺しないように襟を正して頑張ってほしいと個人的には願っているんですが。……(話題のオウム報道なんかを見ながら)うん、まぁ、そうねぇ。




ということでトルコもただ単に強力な国家指導者を求めているだけで、個人の自由が認められているなら別にいいんじゃないかな。中国が自分流民主主義を自称するくらいだから、トルコ流があっても別におかしくない。

  トルコは非常事態宣言下での政令として、警察官9000人程度と陸・海・空軍で6000人超を免職処分としたほか、学術関係者約200人、教員約650人も追放した。このほか新聞3紙、テレビチャンネル一つと関連12団体が閉鎖された。

トルコが公務員1.8万人免職、非常事態宣言下で−メディア閉鎖も - Bloomber

あ、やっぱだめそう。
ヨーロッパはこうした事態に一体どういう対応をとるんでしょうね。自業自得だろとか言わない。


がんばれ民主主義。