扱いに困る北米兄弟のもう一人のほう

「フリーランド、あそこを見るが良い。イスラムかなんだか知らんが、ふらちな国家が姿を現したではないか。我輩はやつらと一戦まじえて、残らず成敗してくれるぞ」


カナダとサウジ、人権問題めぐり緊張高まる トルドー首相は謝罪拒否 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
カナダ、サウジとの対立でUEA・英国に支援要請へ=関係筋 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
サウジとカナダが人権問題めぐり対立、サウジはカナダ資産売却を指示 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
サウジアラビアとカナダの紛争が、派手に拡大中〜人権問題巡り投資凍結や大使追放まで - Togetter
お盆休みしてたら祭りに乗り遅れてしまいましたが、カナダとサウジがクッソ面白いことになっているそうで。

【8月9日 AFP】カナダとサウジアラビアの間でにわかに緊張が高まっている。人権活動家の拘束をカナダ政府が批判したことに反発するサウジ政府は、大使追放や新規の取引停止に続き、学生の留学先振り替えやカナダ資産の売却など追加の報復を続々と準備。カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は8日、「サウジとの関係悪化は望んでいない」としながらも、自身これまでに行った批判について謝罪を拒否し、人権問題では一歩も譲らない姿勢を示している。

カナダとサウジ、人権問題めぐり緊張高まる トルドー首相は謝罪拒否 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News]

うーん、まぁ、新しいというべきか、それとも古いというべきか。



外交で(取引材料ではなく)人権問題をマジで持ち出すことの是非について。
日本が「人権軽視をしない国でけしからん!」と怒られる日 - maukitiの日記
いまふたたび『独裁制と二重基準』の時代? - maukitiの日記
まぁこの辺は、私たちも現在進行形で同様のジレンマに陥っている「最悪の人権侵害国家であるはずの北朝鮮と『核廃棄』という大目標の為に取引をするのか?」でも散々書いたお話ではあります。邪悪な日本が自身の安全の為に北朝鮮との取引を容認しているのに比べて、カナダの方は人権重視ですばらしい!
「自由と民主主義を世界に!」
まぁ大義名分は理解できますよね。一昔前のアメリカでネオコンとかいう人たちがそういって中東に乗り込んでいったんですけど。その意図が善意であろうが野望であろうが、そうした行為は『現状打破』という行為に他ならない。であればこそ現状維持=均衡状態の維持を目指す国際関係のリアリストたちは、そうした行為を慎むべきだと言い続けてきたわけで。
そして現にカナダの行為はサウジとの緊張関係を生んでいる。


そうは言ってもトルドーさんの言っていることは概ね正論であり、これまで西欧=国際社会が沈黙していたことをぶっちゃけているだけだというのも確かにその通りなんですよね。日本ですら表向きのポジションとしてはカナダ側に立つしかない。でもそれをやったら『文明の衝突』一直線でしょう。ハンチントン先生大勝利ですよ。
その意味で、世界への影響を考えると、一周回って(本人は正反対にいると自負しているだろう)トランプさんと相似形なのは面白い構図だよね。中国がかなり悪どい貿易政策をしてきたのも事実ではあるものの、それを本気で責めたらそりゃ貿易戦争に行くしかないのに。しかし彼は狂犬故に敢えてそこへ突っ込む。
今回のトルドーさんの事もそれと同様でしょう。そこを深く突っ込むと西欧文明とイスラムは根本的に解りあえないという現実にしか行き着かないのにね。


いやあ困った北米兄弟たちだ。どちらも彼らは自身の正義を確信している。現状打破主義者たち。北米大陸にはそんなモノを生み出す何か(距離)があるのか。


(普段『人権』は普遍的価値観であると言っている)私たち日本もカナダの後に続くべきなのか? それとも、内政干渉をするべきではないとするこれまでの国際関係の慣習に従い、北朝鮮や中国にしているようにサウジの蛮行にも見て見ぬフリを続けるべきなのか? 
――北朝鮮の核か人権問題か、では既に私たちは核を選んだ。
――ならば、サウジの油か人権問題、では私たちはどちらを選ぶべきなのか。



まあ油は大事だもんね。その欠乏への恐怖によって、かつての私たちが戦争に走った程度には。残念ながら今回も人権問題は見なかったことにしよう! 普遍的(になかったことにされる)人権だから仕方ないよね。
みなさんはいかがお考えでしょうか?