……全世界の誰もが、ほんの少し優しければ、シリアのあの子たちは学校に通い、友達を作って、幸せに暮らしただろう。でもそうはならなかった。ならなかったんだよ。アナン。
元国連事務総長のコフィ・アナン氏が死去、80歳 写真11枚 国際ニュース：AFPBB News
ということでアナンさんが亡くなってしまったそうで。いやあまだ幼かった頃の素朴なボクにも「きっと国連改革が進んで世界政府が生まれるんだろうなあ！」という気持ちにはさせるくらいにはカリスマのあった人でしたよね。少しだけ学を得た今になって振り返ってみれば、冷戦終結直後という後にも先にもここしかないというタイミングだったからこそ生まれた夢であったわけですけど。人の夢と書くもの。
国連を機能不全にしていた決定的な米ソ対立が終わり、少なくとも当時は「まだ」アメリカでは国内的な所謂『平和の配当』のことで頭が一杯で、冷戦後の国際関係のビジョンについては真剣に考えていなかった。つまり当時はまだ冷戦後の世界秩序について他の誰かが主導する可能性が存在していた。今ではギャグにしか聞こえない20年前の小沢さんの自衛隊国連軍化もちょっとだけ現実味あったよねえ。しかしアナンさんらが目指した国連改革にとって100年に一度というレベルの千載一遇の機会は、どっかのバカがアメリカのビルに飛行機を突っ込ませることで終わってしまった。
子ブッシュ政権の『9・11』以前に予定されていた政策を見る限り、もう少し惰眠を貪っていたはずのアメリカが目覚めてしまった。力の有り余っているアメリカが外の世界に目を向けてしまった。
国連改革の終わりの始まり。
以下オマケのお話。
（社説）アナン氏死去 国連の意義再確認を：朝日新聞デジタル
朝日新聞の社説の中の人は「国連の意義再確認を」と仰いますけども、そもそもの国連の意義って新秩序の構築ではなく既存秩序の維持存続こそが第一目標であったわけでしょう。アナンさんはそこから脱却しようとしたからこそ称えられているわけで。
（平和を維持するために）内政干渉を禁忌とした『近代』から、（現地の平和を維持するためにこそ）人道的な内政干渉をする『現代』へ。ザ・国連改革。
トランプ米政権は国連教育科学文化機関（ユネスコ）や人権理事会からの脱退を決めた。国連安全保障理事会は、「米欧」対「中国・ロシア」の構図が続き、さまざまな紛争の危機でも機能不全に陥っている。
アナン氏が平和維持活動（ＰＫＯ）局長だった９０年代、ルワンダとボスニアで虐殺が起きた。その悲劇は世界の良心を問うたはずだが、再びシリアなどで甚大な被害を生んだ現実を、国連加盟国は恥じるしかない。
国連の意義は何か。その役割と機能を強めるために何が必要か。未解決の課題を残したアナン氏の死去を機に、国連を立て直す道筋をもう一度、日本政府も考え、提起してはどうか。
（社説）アナン氏死去 国連の意義再確認を：朝日新聞デジタル
人道目的の内政干渉を諦めてしまった国連。でもこれって上記『近代国家』作法とは元々相いれない賛否あるお話で、中国やロシアが（自国及び勢力圏内への適用を恐れて）断固反対してきたお話でもあります。冷戦終結の混乱で自信喪失していたロシアだった時代ならともかく、そこに中国という援軍も加わって現在では「役割と機能を強める」課題はよりハードルが上がっているのが現状でしょう。恥じ入るどころか安堵している加盟国も多いに違いない。
国連を立て直すことはアナンさんが居た幸福な時代よりもずっと難しくなっている、という大前提を社説の中で指摘しないのはフェアではないよね。アメリカの反対という意味でも、中国やロシアの反対という意味でも。日本に提起せよというそれはアナンさんのそれよりもずっと難しい。
よく言われる『拒否権』って国連の足かせではなく、国連にとっての命綱なんですよね。何故ならそれがあることで国連には解決不可能な問題（大国間の利害調整）から逃げることができるから。もしそれがなかったら本当に無力な国連という現実がそこにあるだけになってしまう。いやまあ既に現実がそうだろうとか身も蓋もないことも言えますけど。シリアの場合は……。
――その上で、それでも進めるべきだというのはまぁ確かに頷ける正論ではあります。どうやって進めるつもりなのか僕にはまったくわかりません。そして、拒否権が無い時に、国連に何もできなかった時に人びとが国連に対して考えてしまうことを想像すると、おっそろしい話ですけど。
個人的にはアナンさんの時と同様「次の」トゥキディデスの罠後の空白を狙う以外にないとは思ってます。次もあるかどうかは解りませんが、どちらにしても今回のボーナスのタイミングはもう終わってしまった。次は何十年後かな？ 国連改革の為に、平和の為にはやく米中激突すればいいのにね！
国連改革の前途について。
みなさんはいかがお考えでしょうか？
