ようこそ軍拡競争の世界へ!

トランプより愛を込めて。



米、核軍縮条約離脱を準備 ロシアに近く伝達と報道 | 共同通信 - This kiji is
トランプ米政権、中距離核全廃条約から離脱表明 - BBCニュース
ということでトランプさんが「堂々脱退す!」しちゃうそうで。

トランプ氏は、「自分たちができないのにロシアは好きに兵器ができる」のを米国は容認しないと述べ、「どうしてオバマ大統領が交渉や離脱をしなかったのか分からない」、「(ロシアは)何年も違反してきた」などと批判した。

バラク・オバマ米大統領は2014年、ロシアが地上発射型巡航ミサイルの発射実験を行った際、INF条約違反だと抗議した。オバマ氏は当時、条約離脱は軍拡競争再開につながると欧州各国首脳から圧力を受け、条約に留まったと言われている。

トランプ米政権、中距離核全廃条約から離脱表明 - BBCニュース

うーん、これはとっても終末時計が進む音。テンション上がったのかトランプ政権爆誕直後の発言で早々に進めてしまった分の帳尻が合って良かったかもしれないね。
広島・原爆資料館:米核実験で時計リセット 「302」に - 毎日新聞
核実験の有無を監視して時計を数えているより、それこそ実際の『平和』にとってはこっちの条約の方がよっぽど重要な役割を果たしていたはずなので、むしろこの中距離核戦力が制限されていた時間でも数えていた方がマシだったんじゃないかな感。


実際、この条約の世界的意義=(文字通りの意味での)全ヨーロッパの安全を担保してきたモノがなくなっちゃったことを考えると、専門書どころか教科書に載るレベルのトランプ政権の『遺産』になるんじゃないかと思います。それが正なのか負なのか諸説あるとして。
――といってもそれが今に始まったワケでは絶対にないよね。この(欧州での核戦力増強競争を制限していた)INF条約と、「欧州平和」を体現していた両輪のもう一方であった(通常戦力を管理していた)CFE条約は既にあっさりと消えてしまった後でもある。つまり、これから始まると懸念されている軍拡競争って上記CFE条約が実質的に破棄された10年前には既にあったトレンドでもあるわけですよ。今更驚くのは今更すぎる。上記引用でもあるように、オバマさんが体面を気にしてできなかったことをトランプさんがやっただけ、というお話はそれなりに正論でもある。


ここで重要且つ致命的なのは、そもそも何で敵対する国際関係に軍縮・軍備管理条約が必要かというと、軍事力の状況を相対的に均衡させることでお互いに不測の事態が起きることを避けようとしたわけですよね。そうすることでお互いに、単純な敵意からではない均衡崩壊による「不測の事態による」先制攻撃される危険性を許容できるレベルまで低下させることができる。少なくとも00年代の前半までは欧米とロシアにこの最低限の共存関係は成立していたんですよ。
ところがぎっちょんヨーロッパが東欧へと手を伸ばし始めると状況が変わるようになる。ロシアが欧米に明白な「敵意」を向けるようになった(もちろんそれはロシア側からすれば東方拡大を止めないヨーロッパから始めた「敵意」の対抗でもある)。90年代後半のユーゴスラビアで既に始まりつつあったそれは、ついにウクライナで爆発した。



この状況になると、ヨーロッパで最早軍縮・軍備管理の役割がなくなりつつあることは明白でしょう。だってそもそも「敵意がないにもかかわらず」という不測の事態を避けるためのモノであったそれは、しかしこうしてお互いに敵意があることは明白となっている(と両者が思っている)んだから。
私たちが今目にしているように、現代のロシアには「武力を使ってでも」達成したい目標が存在している。もちろんアメリカもそうだし、同時にそれはそのまま中国にも当てはまる。
そしてそんな中国とも戦おうとしているアメリカにとっては尚更。この三者の関係がまず大前提の構図であると。
平和を愛するヨーロッパ諸国や、あるいは私たち日本にとって「武力を使ってでも」が事実上存在しないからといって、しかし他にそれを持たない国がないわけでは絶対にないんですよ。だからこそ日本が属する東アジアにはそうした軍縮・軍備管理の概念が生まれなかったわけで。そりゃあの素晴らしきケンポーキュージョーも世界に普及しないよね。


CFEが終わり、INFが終わろうとしている。つまりヨーロッパが冷戦末期から謳歌していた安寧の時代の終わりでもある。
そしてヨーロッパで平和が終わるということは、つまり、世界全体への波及不可避と言うことでもあり……世界大s……うっ、頭が……。


軍拡競争時代。寒い時代になったものだ。ヨーロッパではそれが既に始まりつつあるし、それは東アジアでもまったく同様でもある。いやむしろ私たち日本だけが一方的にモラトリアムしていただけで初めから止まってすらいなかった。ようやく目覚めつつある今の日本も「護衛空母だからセーフ」とか結構愉快なことやってるしね。
それを知らないフリをし続けてきたのが一般的な大多数の現代日本人でもあったわけですけど。しかし同時にそれは、そうした有権者にウケようと言っていた政治家たちの罪でもある。有権者か政治家か、どちらがまず現実を認めようとしなかったのかは鶏か卵なお話なので、各々皆様方のポジションによって好きにすればいいじゃないかな。


日本的に思い出されるのは、ワシントン・ロンドン海軍軍縮かな? 1930年代に起きていった軍縮条約の無実化が、その後の国際関係をどういう風に暗示していたのかと考えるといやあwktkが止まらないよねえ。


みなさんはいかがお考えでしょうか?