今ふたたび『差別化された責任』が問われる時代

COP1から続く宿怨。


[FT]米国、温暖化対策を主導? (写真=ロイター) :日本経済新聞
ウルフ先生が面白いお話を書いていたそうで。

気候変動対策で後れをとってきた米国が、そのリーダーに変身するのだろうか。1月17日に公表された「炭素配当に関する経済学者らの声明」や、2月7日に民主党アレクサンドリア・オカシオコルテス議員率いる一派が米下院に出した環境対策法案「グリーン・ニューディール」をみると、そうなるかもしれないと思う。双方の温暖化対策への考え方は全く異なるが、これらは実現可能な解決策につながる土台になるかもしれない。

[FT]米国、温暖化対策を主導? (写真=ロイター) :日本経済新聞

少し前にもトランプさんの気候と気候と気象の違いについてのような古典的な愉快な発言があったりしましたけども、
「一体どうなってるんだ? 」トランプ大統領、記録的な寒波を受け、地球温暖化を皮肉る | BUSINESS INSIDER JAPAN
でもまぁ個人的にはトランプさんのそれはどこまでいってもプロレスというかブラフというか、その場その場のノリだけでモノを言っているだけで真面目に考えていないだろうなあと。
むしろ、彼の主張で数少ない一貫している「アメリカだけ*1が損をしている!」ことへの不満が、この気候変動問題でも同じように出ているだけだと個人的には思っているんですよね。
だからこの不満が解決されない限りは、トランプ爆誕以前にもあったバード・ヘーゲル決議のような元々あるアメリカのトレンドとしても「政治的に」気候変動問題は進まないと思うんですよねえ。
それこそトランプさんをバカだと笑うだけでは何も。


温暖化問題が解決しない政治的な三大理由 - maukitiの日記
この辺の気候変動問題における政治的限界のお話については、まぁ9年も昔の日記で書いたお話で、未だにちょくちょくこの日記にアクセスがあってかなり恥ずかしいというか後ろめたい気持ちが今日の日記を書く動機でもあったりします。*2
――ともあれ、そんな昔の日記ながら書いてあることは概ね現代でも、いやトランプさんが居る2019年の今でこそよりこの面が強くなっていると思うんですよね。

②「後進組の権利」を誰が保障するのか
日本やあるいは欧米各国のような先進国は先んじて環境を汚染してきた。確かにそれは一つの罪ではある。
では私たちの後を同じように追おうとしている後進組(中国・インド・ブラジルなど)に対して何と言えば良いだろうか、そもそも彼らに止めろという権利があるだろうか。*2
よっぽど傲慢な人でないのなら、私たちはそれを止める権利など無いと答えるかもしれない。しかし同様に、彼らに先進国の過ちを繰り返さす訳にはいかないとも思う。だけど、それはどうやって? 私たちはその分に見合うような保障を与えるべきだろうか。全ての先進国と全ての後進国とそれ以外の国に分けて、誰もが納得できるような保障が用意できるのか? と言うと、温暖化問題だけでなく経済問題や核問題でも、これまで明確にそれについての答えを出せた人は、誰も居なかった。

温暖化問題が解決しない政治的な三大理由 - maukitiの日記

まさにトランプさんのような人たちは、気候変動問題に限らず多国間条約でアメリカが「不当に」「過度の」負担を背負わされていると考えている。
――そしてその指摘って基本的には正しいわけですよ。私たち日本を含め先進国は、まさに上記でも書いたように率先して温暖化に寄与してきたことから責任が大きいのは確実なのだから。
しかしそれと同じくらい、ならば適切な負担の大きさとは一体どれくらいなのか、あるいは現状のソレがフェアではない、という意見にも一理あるでしょう。
少なくともトランプ支持者の人たちはそう=アメリカの負担が大きすぎると考えていて、だからこそ彼を支持ている。民主主義社会において、そうした人たちの声を少数だからといってまったく無視すればよいというのもむつかしい。



ちなみに、こうした気候変動問題において「先進国がより責任を追うべきだ!」という道筋をつけた一人が、我らがメルケルさんだったんですよね。
今では既に23を数えるまでになったCOPの記念すべき1回目において、開催地ベルリン、そして議長は統一したばかりのドイツ環境相アンゲラ・メルケル。1995年のCOP1回目の目的は、後の第3回に生まれるはずの京都議定書の土台を作り上げることであった。
そこで彼女はまさに彼女らしく、先進国が「地球の気候を守る責任を負うことを率先して実証する」ことが重要なのだ、述べたのです。それはつまり、先進国が具体的目標を課される一方で、(中国含む)発展途上国はその義務を免れるという意味である。
先進国の『差別化された責任』として。


COP23の今になっても続く宿怨は、まさにこのCOP1から始まった。


そして2019年の今といえば、問題が解決に向かうどころが更に政治的に難しくなっているのでした。
いやあこれならまだ京都議定書当時の方が政治の話は簡単だったかもしれないね。
今ではトランプさんが米大統領の椅子に座り、メルケルさんは去りつつあり、そして発展途上国の筆頭であった中国は最早その建前からは誰がどう見ても一線を画した存在になりつつある現状。


一体誰がどうやればこの政治的確執を解決できるの?
――まぁこの政治的難題の解決方法は、単純と言えば単純なんですよね。


はやく愚民どもすべてに叡智が授かりますように。

*1:ここは諸説。

*2:古い日記を見返した毎度のことながら、一体何でこんなノリ(文体)で日記を書いていたのか今ではまったく理解できなくて、当時の記憶も今は昔。コレに限らずもう恥ずかしい過去日記はさっさと消したいくらいの気持ちはちょっとあるけども、それやったらキリがないし。