党派性が私たちの生きる道?

近頃私たちの民主主義は良い感じ。



「変化」は唐突、トランプ現象やブレグジットを見よ 何も変わらないという停滞感、ダムが決壊したらあっという間(1/6) | JBpress(日本ビジネスプレス)
とても面白いお話。

 私たちはカオス的な変化と不毛な停滞に同時に対処しているというこの奇妙な感覚は、どうすれば説明できるのだろうか。

 キャス・サンスティーン氏は近著「How Change Happens(変化はいかに起こるのか)」で、「パーティズム(党派心)」なるものが一つの説明になると論じている。

 レイシズム(人種差別主義)やセクシズム(性差別主義)といった悪しきものと音が似ているのは、同氏の意図によるものだ。

 サンスティーン教授はこの本で、自分とは異なる政治的主張を有する人々をまるごと切り捨ててしまう人が今日では多くなっている、と説得力豊かに論じている。

「変化」は唐突、トランプ現象やブレグジットを見よ 何も変わらないという停滞感、ダムが決壊したらあっという間(1/6) | JBpress(日本ビジネスプレス)

ブリグジットやトランプのあれこれを見ていると、まぁ最近の私たちの現状を振り返ると同意するしかないお話ではありますよね。確かフクヤマ先生あたりも似たようなことを仰っていたし。



オバマさんの成功体験に支配される共和党 - maukitiの日記
眩しすぎたオバマさんに落ちる深い影 - maukitiの日記
当日記でもかなり昔にオバマ政権の党派性について書いたことがありましたけど、既にあの頃から米政治の「二極化」は見えていたわけで。「より」党派性にまみれていく私たち。
クリントンから始まり、子ブッシュで加速し、そしてオバマで決定づけられたという辺りかなあ。そしてトランプ劇場というクライマックスへ。
だから現状の当事者たちだけを責めるのはフェアではないよね。トランプさんや、あるいはブリグジットを煽ったボリスさんなど、彼らは良くも悪くもその『党派性』という現代政治の潮流に「より上手く適応した」結果でしかない。


この論考で面白いのは、ただ党派性の現状というだけでなく、そうした党派性がもたらすのは「停滞」と「カオス的変化」の両方だと指摘している所だと思います。
党派性があればこそその強固な支持層によってそうそう政治構造(勢力)が変わらない「停滞」が生まれ、しかし一度変化が始まればその党派性は相手との一切の妥協を強く拒むことでより大きなカオス的変化を導く。


これって日本の2009年にあったセイケンコウタイ劇場そのまんまだよなあと。
だからこそ、現状の安倍政権はその長期政権に見合うだけの数々の失敗を重ねながらもこうしてよく言えば安定し、悪く言えば不毛に停滞しているわけで。
旧民主党政権時代の失敗を振り返ってみて思うのは、逆説的に、政権交代に成功するほどの成果をあげながらしかしその『党派性』を支持層に固めることに失敗したことが大きかったのではないかと思います。それさえあれば、現状の安倍政権の自民党支持層のように多少の瑕疵はあっても、底堅い支持層によって最低限のを支持によって支えらることが可能となっていたのかもしれないのに。
いやまあ大々的な野党共闘を叫んでしまった果ての必然の分解だっただろう、というと身も蓋もありませんけど。あるいはそうしたトレンドに迎合せずに多様な意見を尊重した結果だと擁護することもできなくはない。
でも今の立憲民主党を見ると割とその反省を活かしている感はあるよね。とにかく強固な支持層を固めることを目標に。そのターゲットの是非や、あるいはその大きさについてはさて置くとして。
はたして日本のこの政治的停滞をぶち壊すだけのカオス的変化をもたらすのは一体どんな政策を掲げる政治家なのでしょうねえ――と考えるとまぁかなりおっそろしい光景しか思い浮かびませんけど。




本邦でも「ネトウヨ死ぬべし!」と「パヨク死すべし!」と大きな声でやっている人たちは少なくありませんけども、しかし実はそうした人たちこそ現代民主主義政治におけるトレンドの最先端を行っていたのだなあと思うと、ちょっと生暖かい気持ちにはなります。
遅れているのは、そうした左右の過激な人たちただ黙って見守っている僕たちの方だったのだ。
相手の政治主張は一切受け入れず、完全粉砕してしまおう!
〇〇を支持するやつらは売国奴! 
○○を支持するなんてレイシスト
こうやって党派性むき出しで政治的ライバルを攻撃することこそ、現代民主主義政治の最先端である。
すっかり令和が始まるもんだと思ってたけど、実は明治が始まるのかな?



単純な弱肉強食ではなく、より適応した者こそが生き残る。いやあ自然界の掟そのものを見ているようで面白いお話。
であればこそ、過激な主張を掲げる政治家たちが一定以上の『成果』をあげる姿を私たちは今目にしているのだ、と。


『党派性』こそ主流となった現代民主主義政治のトレンドについて。そしてもたらされる停滞とカオス的変化。
みなさんはいかがお考えでしょうか?