イマジンはいいぞおじさん

「銃を片手にヤツらがくる」



「あんたはネトウヨ以下だよ。」たった一言で『イマジン』の価値を毀損する町山智浩 - Togetter
再論「イマジン」とジョン・レノンは「お花畑」?~茂木健一郎氏の過去ツイートが再度話題に - Togetter
今週の日本の大喜利ネタの一つは『イマジン』だったそうで。

ネトウヨの方に質問したいことの一つは、みなさんはジョン・レノンのImagineはお好きではないのですか、ということ。「想像してごらん。国がない世界を。そのために殺したり、死んだりする必要がない世界を」という歌詞なのですが、やっぱり嫌い? ジョンは、お花畑?

うーん、まぁ、そうねえ。彼がそれを歌っていた時代――冷戦構造がガチガチに強固だった(と信じられていた)――ならともかく、今の私たち、シリアのあの惨状を見たあとにそれを言うのはさすがにお花畑すぎるかなあ。


国家の存在感・影響力がなくなった後に何が起きたの? 
――『イスラム国』がうまれたよ。


あの地ではまさに統治機構の失敗と弱体化により国家の存在が消えうせたからこそ「ああなった」というのが一般的な解釈でもあるわけで。
その地獄は多大な犠牲――数十万人の死者と数百万人の難民を払いながらもようやく終結しつつある。アフガニスタンでもイラクでも、あるいはパキスタンの部族地帯でも、基本的には同じ構図なんですよね。
この冷戦後の現代世界の状況を見ても尚「国がない世界」を楽観的に考えられるのは、よっぽど何も考えていないか、あるいは普段国際ニュースを見ていない人だけなんじゃないかなあ。
でもまあ確かに、既存の世界観にあてはまらない、近代国家システムの範囲外であろう「ここではないどこか」ではあったんですよね。それがあのシリアとイラクにまたがる広大な無政府地帯であり、だからこそ各国の自分探しを夢見てイマジンした若者たちを惹きつけたわけですけど。




また別の事例として面白いのは、そんなシリアだけでなく、リビアチュニジアアルジェリアなどでも、北アフリカの政治が混沌化し空白が広がった結果サハラ一帯を利用した人身売買が広まり欧州への『民族大移動』というレベルの難民危機も生まれている点だと思うんですよね。
もはや国に頼ることができなくなった人たちが、国=政府が強固に存在しているヨーロッパに殺到している構図。
国がない世界を逃れ、国がある世界こそを求める無力な人たち。



しかし最初にもエクスキューズしていたように、個人的には「あの時代に生きた」ジョン・レノンさんがそのように語るのも無理はないと思うんですよね。何しろ当時は世界が真っ二つに分断され、まさにその東西分断こそが永遠に近いほどの強固な世界観でもあったわけだから。同盟国の同盟国の同盟国の……そうした構図が世界中に広がり続くかのように思われたあの時代。
だからやっぱりその膠着性を打破する平和論の一つとしては当時は正しかったんですよ。
しかし結果としては幻想でしかなかっただけ。

経済相互依存の進んだヨーロッパで戦争などありえない

『大いなる幻想』を謳ったノーマン・エンジェルさんと同様に。
「世界の平和主義者は聞くべきだ!」だったはずなのに、その後二度の世界大戦へと突き進んでいったように。




  • 「想像してごらん。国がない世界を」
    • 国際テロリスト・ならず者たちのこの世の春がやってくる。
    • そうではない大多数の「無力の人たち」は、国がない世界を逃れて、まだ国が強固な世界へと絶望的な決死の逃避行がはじまる(それが出来る人たちすらまだ恵まれている)。

2019年という今の時代に後知恵としてジョン・レノンの『イマジン』への解答として個人的に応えるならこんな感じかなあ。


好きとか嫌いとかではなく、ただひたすら時代遅れになってしまっただけ。
でも単に一度の試みが失敗しただけなのだから、ジョンレノン的へーワ論に拘泥せずに、また次を探求すればいいだけじゃないかなとは余計なお世話ながらに思います。
今時、今更、敢えてそこでイマジンを持ち出す必要ないよね。
いやまあファンが高じて普遍的真理を突いたイコンとして扱うならば、信者やファンにはそれはそれでそういうものとして扱えばいいんですけど。身内だけならともかく同じ信仰ではない人たちにまで同意を求めるとそりゃこうなるよねっていう。


イマジンはいいぞおじさんについて。
みなさんはいかがお考えでしょうか?