「マネーか、然らずんば剣か」

「〇〇を取り戻すには戦争しかない」と考える人たち。


韓国人含む人質救出、仏世論「無謀な観光客のせいで軍人の命が犠牲に」-Chosun online 朝鮮日報
ブルキナ人質救出で死亡の2仏兵を追悼、パリで式典 危険犯した観光客に批判も 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News
うーん、まぁ、そうねえ。もともと「ジコセキニンロンガー」というジャップランド特殊論法は、ちょっとどうかと思っていたのでさもありなんという感じかなあ。

【5月15日 AFP】パリで14日、仏軍がアフリカ西部ブルキナファソで先週実施した人質救出作戦中に死亡した兵士2人の追悼式典が行われた。この作戦で救出された4人のうち、観光客2人は危険とされる地域を訪れていたことから批判の声が上がっている。

ブルキナ人質救出で死亡の2仏兵を追悼、パリで式典 危険犯した観光客に批判も 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News

身代金を払うのではなく軍を使って救出するオプションを採るアメリカやイギリスなんかもそうですけど、こうして『救出側のリスク』というのが限りなく現実と近い所にあるからこそ、それはマジの議論にもなるわけで。そこからの論理展開として、だから軍人を無駄死にさせるな、というのはベトナムからイラクまで見られたよくある平和主義運動の一つのあり方でもあるし。
日本の事例だけを切り取って「日本だけが」海外とは違うのだっていう『日本特殊論』をやるのは、右も左も、日本スゴイも日本クソも、同じ次元だよねとは常々思っています。そこでは上か下かの違いしかない。
無分別な出羽守と、無分別な日本スゴイ論の類似性について。




話を戻して、こうしたフランスとは違うもう一方には別のやり方=『金を払う側』で人質を取りもどす国々がある。
基本的には私たち日本もそちら側ですよね。
剣で対抗しない以上、金を払うしか選択肢はまずない。
ただそれも「日本だけが」マネーを払って解決しテロリストや誘拐犯を間接的に利しているわけでは絶対にないでしょう。
このジャンルで邦訳の中でおそらく最も知名度が高いだろうロレッタ・ナポレオーニ先生の『人質の経済学』なんかでも指摘されているように、例えばイタリアはそれはもう身代金をあっさり支払いまくっていることが更にジャーナリストたちを危険地帯へと向かわせる誘因、同時にそれは誘拐する側がイタリア人を狙うメリットにすらなっていると指摘・批判しているんですよね。
安田純平さん「身代金」の内幕は 本人は暗号で「拒否」、政府も払わず、そこにカタールが... : J-CASTニュース
安田氏「解放」で、いったい誰が得をしたのか | 外交・国際政治 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
安田さんの件では本人がひたすら強く否定しているように諸説あるかもしれませんが、個人的には間接的にカタールに「払った」派かなあ。
そもそもどこの国であろうと「我々はテロリストと取引し身代金を支払った」なんて堂々と言う国はあるわけない――というか国連安保理決議で禁止されているわけで。
安保理決議2199(ISIL資金遮断)の邦訳ができあがりました。ご活用ください | 国連広報センター
そりゃ安田さんもし払っていても言えるわけがないよね。それでも払っている国があるのも事実なんでしょうけど。(北の飛翔体を見ながら)決議とは破るためにあるのだ。
陰謀論的に見ると、あそこまで必死に安田さんが否定しているって、つまり日本は国連決議を順守する国という決死の擁護でありすばらしく愛国者的振る舞いだよね。「払った」とか言う奴こそ反日や!




ともあれ、こうした人質対応は、正解あるいは不正解がきちんと定義できるような問題でもない。
だからこれは普段から私たちが真剣に考え議論しておかなければならない問題だと思うんですよね。
私たちは軍を使って救出作戦をするべきなのか、それともカネを払ってでも救うべきなのか、あるいは見捨てるべきなのか。
それこそ結果の成否だけを見て後から言うだけでは結果論にしかならないでしょう。上記フランスや、あるいは安田さんの件を見た上で未来を考える必要がある。
おそらくあるだろう、次は、私たちはどうするべきなのか?



ちなみに上記『人質の経済学』の中のオチとしては、軍による救出作戦は成功率がそこまで高くなく(三回に一回は失敗する)、ただ身代金を払うのも次の誘拐への原資となると否定した上で、政府ではなく交渉の専門家を通じた必要経費のみでの迅速な取引(誘拐した側は人質を保持していくだけで必要な経費が増えていく上に、長引けば人質が別の誘拐組織へと転売されてしまう)がベストだと述べています。





国外で人質になった国民への対応について。
「身代金か軍隊か」
まぁ現代政治においても、いやだからこそ重要なテーマでもあり続ける『国家の役割(範囲)』に通じるとてもむつかしいお話ですよね。国境がないとかいうイマジンした世界は一体どこへいってしまったのだ。
国家による国民保護の範囲、そしてその正当性について。
――わー日本人ってこの話題で冷静に議論するのってにがてそー!!!(日本特殊論)


みなさんはいかがお考えでしょうか?