ふらっとときどきぶんだん

フラット化したのち分断されていく世界。


トランプとバノンの対中政策は正しい : 地政学を英国で学んだ
わぁい、グローバル化、maukitiフリードマンのグローバリゼーション論だいすき! 
世界はレクサスとオリーブの木で分裂するんだよ! 20年前フリードマンが言ってた!

結果として、中国が1970年代から続けてきた、補助金による補填、保護貿易主義、貿易ルールのごまかし、テクノロジーの強制移動、知財の盗みなどは、そのすべてが欧米にとってはるかに大きな脅威となったのである。

もし欧米諸国が中国にこれまでと同じやり方、つまり彼らを貧困状態からあらゆる未来の分野で競争できるようにまでしたこれまでのやり方を、そのまま許すような事態は、やはりありえないのである。

この点に関して、トランプの判断は正しいのだ。

トランプとバノンの対中政策は正しい : 地政学を英国で学んだ

グローバル教の教祖とも言うべきフリードマンさんがこうまで言う辺り、礼賛してきたはずのグローバル化の限界が明らかになっているのがよくわかるよねえ。
カネさえあればすべては一つになるはずが、しかしカネでは心までは買えなかったよというベタな寓話みたいな現実。
やっぱり時代はハンチントン!(こっちは23年前)


しかし元々、今大問題になっている公正な貿易問題のように、米中間の「齟齬」というのは存在し続けてきたわけですよね。これまではグローバリゼーションという大正義の前にそれが無いことになっていただけ。だからこれって私たち日本の時にもあった、いつもの光景ではある。
ライバルの台頭によってそれが誤魔化しきれなくなっただけ。
中国の中の人の意向を受けているのかいないのか、ファーウェイ排除を受けて「アメリカひどい!」的なことをおっしゃっている人も少なくありませんけども、そんなの私たち日本人にとっては今更すぎますよね。うちらも自動車をいっぱいぶっ壊されたりしたんやで。


今回の中国の件で違うのは、その帰結が前回日本のようなオチにはなりそうにない、という点でしょう。
現代中国とは最早それだけ大きな存在感を持つに至っている。
かくしてこれまで棚上げされてきた両国間の「齟齬」は、幸か不幸か、中国が妥協を拒絶できるだけのパワー(あるいはそれだけの自信)を持ったことによって、妥協による解決が難しくなっている。


この貿易ルールの齟齬だけなら、もちろんこれはこれで世界経済に大ダメージでもあるんですが、いきなり米中戦争という所にまではいかなかったかもしれない。
しかしこうした『齟齬』がいったん明らかになってしまうと連鎖的に他の問題が浮き上がってしまうことになる。
もし仮に貿易ルールでその不公正さを是正できるとなれば、他の問題でも同じように解決できると「信じられる」かもしれない。これまでのアメリカの主流意見はそうした楽観論によって、中国はいつか責任あるステークホルダーになるのだと信じてきた。
しかしそうした楽観論が悲観論に逆転すると、今度はまったく同じようにその不信感は他の問題へと連鎖していくことになる*1


現在進行形で続く九段線とその海域管轄権、そして現在の米中関係の基礎を生んだ「一つの中国」についての米中間の齟齬が明らかになってしまったら、米中関係は一体どうなってしまうのか?
一方はそれを「原則」と強調し、しかしもう一方は「政策」と装飾しながらも、しかしお互いにそこには深入りしないことで平和的な関係を維持してきたのに。


前大統領のオバマさんの対中国への態度が生ぬるかったと批判する声は少なくありませんけども、このことを恐れているとしたらまぁ賛成は出来なくても理解はできるんですよね。もし一度その不信感の連鎖を始めてしまうと、ニクソンから始まったアメリカの対中政策が根底から覆されることになりかねない。現状の混沌を見れば解るように、政権の政治的リソースを別に(それこそ国内的に)回したかったオバマさんにはやっぱり荷が重いよねえ。
まぁトランプさんがそのパンドラの箱をあっさり開けてしまったんですけど。


トランプ米大統領「一つの中国」支持 習主席に電話で - BBCニュース
大統領に就任してすぐトランプさんは習さんとの電話会談で、アメリカが続けてきた「一つの中国政策」を維持することには同意した。あちらが原則だと言うことには触れないようにして。
――ところが、米中間で慎重に隠されてきたいくつかの齟齬は、その最初の一歩である貿易ルールの是正に失敗することで徐々に水面上へ浮上しつつある。
当時こそトランプさんの「一つの中国」政策を疑問視する発言は批判されていましたけども、ところがぎっちょん現実がそちらへと追いつきつつある。
九段線は決定的な齟齬として表面化し、貿易ルールにおいてもフリードマンのような人物でさえ同意するようになった。「一つの中国」への疑問まであとどれくらい?


米中間にあったこれまでの信頼の連鎖は逆転し、不信感への連鎖へと変貌へ。
はたしてその連鎖は一体どこまでいくことになるのか。


世界が平和でありますように。

*1:実際中国は天安門で一度これにはまりかけた。