金の話をしていてはお前たちの未来を守れない 金が無ければお前たちの未来を守れない

「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!」 

 
 

「よくもそんなことを」 トゥンベリさん、怒りの国連演説 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News
グレタ・トゥーンベリさん、国連で怒りのスピーチ。「あなたたちの裏切りに気づき始めています」(スピーチ全文) | ハフポスト
前回に続いての気候変動ネタ。
最近はもうすっかりお馴染みになった、気候変動テーマにおけるアイドルであります。いやあ現代のジャンヌ・ダルクみたいだよね。オルタ化したらトランプ支持者になっちゃうのかな? 

【9月24日 AFP】スウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さん(16)は23日、米ニューヨークで開幕した国連(UN)気候行動サミットで演説した。トゥンベリさんは、世界の首脳らが温室効果ガス排出問題に取り組まず、自分たちの世代を裏切ったと非難し、「よくもそんなことを」と怒りをぶつけた。

 アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)国連事務総長が開催した同サミットは、実現が危ぶまれる地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」を再び勢いづかせる狙いがある。熱のこもったトゥンベリさんの演説は、サミットの基調を定めるものとなった。

「よくもそんなことを」 トゥンベリさん、怒りの国連演説 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News

まぁその怒り自体は理解できます。
社会は実際に腐っているのに、親をはじめとする大人たちはみーんな見て見ぬフリをする! 賢い私だけがその悪に怒り震えている!
もしかして:中二病
環境問題かどうかは別として、しかしその『不正義への怒り』という点で見ると、割と少なくない私たちが、かつて子供であった大人たちが通った道ではあるよね。
僕も卒業文集なんかに「環境保護運動したい!」とかセクシーなことを書いていたタイプの子供だったのでよく解ります。今見ると足バタバタさせるの間違いなしなので、今後も重大犯罪などを起こさないようひっそりと生きていきたいと思います。




ともあれ、マジレスをするとこの気候変動の問題って解決策自体は意外と単純なんですよね。その「合意」ができないというだけ。
どこまでいっても『金』の問題でしかない。
温暖化問題が解決しない政治的な三大理由 - maukitiの日記
というかこのネタが盛り上がると、未だに上記9年前の日記にアクセスが増えてもういい加減消したくなるんですが、まぁ概ね正しいことを書いているとは今でも思ってるんですよね。この人知識のアップデートができてないとか石を投げないでください。

  • 世界全体を射程に入れた共通政策の実現性
  • 後進国への補償をどのように定めるのか?
  • 国内政治としての優先順位

まぁ9年前どころではない長期間で構図としては変わってないよね。彼女の言うように時間制限は更に短くなったのは確実だけれど。


だからやっぱり話は簡単なんですよ。気候変動をただちにゼロにすることは不可能だけれども、変化を緩めることは可能である。
お金さえあれば。
気候変動が問題だと言うならば、追加の費用を払えばいい。
――その上で、だれが、だれに、どれだけ、お金を払うの?
つまり「お金の使い方の優先順位」の問題でもある。それは単純に0か100かだったら話は簡単だったんですよ。しかしその費用負担の分配パターンは無限近い形で存在していて、しかもその上で、世界の200近い国々と地域がそれぞれ違う意見を持っている。
更にはその国々の間は明確に覆しようのないパワーバランスが存在している。


故に、私たちは国際社会における実効性ある合意が未だにできていない。
故に、今回のグレタさんのニュースのように「正当性ある子供の怒り」のような光景を見ても、おそらく今回の会議で何か具体案が決まることはない。
故に、小泉進次郎大臣風に言うならば、きっと30年後になっても実現できていない可能性が、高い。


お金の合意に失敗し続けている。
やる気があるとかないとかそういう問題じゃないんですよ。


費用負担というお金の合意ができなければ気候変動の為の政策を実現することはできないし、それでも経済成長が続くのだというおとぎ話が無ければ、私たち先進国の豊かな人たちが「かつて」そうしてきたように、「これから」同じことしようとしている後進国の貧しい人たちを説得できない。
「もう先進国の席はいっぱいだから、後進国のお前らにはヨットや飛行機に乗れる文明的で豊かな生活を送る席はねーから!」
なんてスネ夫のび太に言うみたいにやって本当に許されると合意できると思っているの? 
そうでなければ、少しでも誠実であろうとするならば、たとえウソだと解っていても「おとぎ話」をするしかないんですよ。


かくして現実世界の大人たちは、まるでブリーチポエムの様相を呈することになる。

金の話をしていてはお前たちの未来を守れない 金が無ければお前たちの未来を守れない

と見事なデッドロック状態に陥っている現実の大人=政治家たちに対して(自称)未来の若者世代代表である彼女は叫ぶのです、

「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!」 

うーん、もちろん否定派でやる気のない人も多いでしょうけど、それでも大多数の大人たちは真面目にやっているだろうにね。
結果が出てないだろというと身も蓋もありませんけど。
結果がすべてだという社会人しぐさとしては正しいかもしれない。まだ子供なのに。


地道に話し合うこと以外では先に進めない。しかしそれではいつまでたっても正義を実現できない。
だからこれって、古今東西の正義マンの多くが『革命家』ひいては独裁権力なんかを志向してしまう理由でもあるんですよね。だってそうすれば、こうした地道な議論の積み重ねをすっ飛ばして確実に一足飛びに正義を実現することができるから。
まぁ副作用もいっぱいあるんですけど。


ということで、この子が本当に何も解っていないんだなあ――もちろん「子供の無知」を責めることを大人がするのは絶対にフェアではない――それなのに周りの大人は無知を教えてあげないままただただ都合のいい偶像として利用しているだけなんだなあ、と個人的にしみじみ思ったのはこの件ではなく、少し前にあったトランプさんへの発言だったんですよね。
ザ・無知の無知。

 出発前に記者会見したトゥンベリさんは、気候変動の危機を軽視するトランプ米大統領らを念頭に「科学を理解せず受け入れない人は必ずいるが、そういう人は無視する」と述べ「私は行動するだけだ」と決意を示した。

「環境少女」ヨットで英出発 米目指し、排出ガス抑えた旅(共同通信) - goo ニュース

アメリカを動かさないで、この21世紀の現代世界において一体何が実現できるというの? 
それこそ無理だと解っていても彼と議論して説得して動かすべきでしょう。
もちろんこの人と話をしないという発言もトランプの「次の」大統領を待つ、という擁護もできなくはない。でもそれってつまるところ私たち「邪悪な」大人がやっている先延ばしと一体何が違うの?
もし本当に時間が迫っているのであれば、今でこそ世界で最も影響力のあるだろう*1超大国アメリカ大統領と話して、何でもいいから前に進めるべきじゃないの?
むしろ否定派であるトランプ大統領を論破してこそ大きな前進があるはずなのにね。しかし彼女は強い言葉で否定してみせただけ。


彼女は雰囲気で気候変動への怒りを訴えている。
まぁそれでも、16歳の子供だから、という免罪符で許されるべき年齢ではありますけど。そこを否定されるべきではない。嫌いな人とだって付き合わなければいいしね。
学校に行く気はあるようだし、まだ未来は白地図だと思われるので、是非今後も勉強していけばいいんじゃないかな。その熱意があればボーっと生きている愚鈍な大人である私たちよりもずっと大きな貢献ができるはず。勉強すれば。
勉強をしないなら……、うん、まぁ、活動家にでもなればいいんじゃないかな。
国際合意な国際関係か国際法、社会的費用や公共政策な経済学か、あるいはワンチャン『気候変動キャンセラー』とか開発できる科学者でもいいかもしれないね。30年後には戦闘前に「グレタ粒子散布!」とか言ってるかもしれない。戦闘前?




彼女のような子供が「恥ずかしい」と評する論理には一定の説得力がある。それは否定できない事実でしょう。

「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!」 

しかしその恥ずかしい政治家たちが話しているのはつまり、基本的には私たちが払った税金のことであり、そして短中期的に日常生活に確実に直結する経済発展の話でもある。
おそらく世界が気候変動対策に「本気になった時」、日本でも消費税増税よりもずっと大きなインパクトがあるのは間違いない。生活スタイルの変化の強要という意味でも。
私たち大人は、私たち有権者は、そうした『お金』『経済発展』の話ばかりをする政治家たちをどのように見ればいいだろうか? 
やはり投票先を変更すべきなのだろうか?



当日記はグレタ・トゥンベリさんを応援しています。
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:まぁこの理屈だと、ならばオバマ大統領時代にそれはどれだけ進み、そして大統領交代でどれだけ後退したのか、という手痛い反論もあるんですけど。