中国様は下がらせたい

超大国たちの外交頭脳戦


中国、米国に取って代わりたいと思ったことはない=外務次官 - ロイター
うーん、まぁ、さすがに日本にはその意図を疑ってしまう人は少なくないでしょうけど、しかし概ね正直にモノを言っているとは思うんですよね。
米国との対立は本題ではない。もはや韜晦することはなくなったとはいえ、少なくとも今はまだ。

同次官は学術フォーラムで講演し、中国が世界における米国の「覇権主義的な」地位を担うとの憶測があると指摘。中国外務省が公表した講演録によると、次官は「これは事実に合致していない」とし、「中国はこれまで、米国に挑戦したり、米国に取って代わったりしたいと思ったことはない。われわれの目標は中国人民に良い生活を送ってもらうことであり、われわれの統治を絶えず改善することだ」と述べた。

中国、米国に取って代わりたいと思ったことはない=外務次官 - ロイター

(その後があるかどうかはともかく)あくまで地域的な支配強化がまず第一歩であり、当面の目標であることを考えれば不思議じゃない。
――かといって副次的な問題でもないのかというとそれも違うと思うんですけど。


現代世界版生存圏とばかりに、より外へ「安全地帯」を確保しようとする中国。
まぁそれ自体は別に不思議ではないんですよ。かつては欧米列強が、あるいは私たち旧日本帝国もそうしてきたように自分たちの安全保障という目的の為には、より外に勢力圏を求めていくのは必然であるわけでしょう。その境界が遠くにあればあるほど安心できる。現代アメリカだって、世界支配云々というよりは、そうやってより遠くまで自分たちの安全圏を広げていった「結果として」今のようになっているわけだし。
もしそれをできるだけ国力=カネがあるならどんな国だってそうするはずなんですよ。ただの平凡な国家である私たちは、それだけの余裕がないというだけ。
かつてのアメリカにはあったし、そして現代中国にも。


だからこの中国の講演で重要な部分は『われわれの統治』という部分だと思うんですよね。
ならば「われわれの統治」が及ぶ範囲って具体的にはどこ? 
具体事例でいえば、九段線は? 
台湾は?


面白いのは、そして中国にとって腹立たしいのは、中国が自国の周囲でそれをやろうとすればするほど、そのバランサーとしてアメリカがしゃしゃり出てくることになることでしょう。
だから「中国にはアメリカと(直接)対立する気持ちはないのに!」というのは、現代中国にとっては心底本心だと思うんですよね。まぁ端から見れば、いやそらそうなるやろ感いっぱいなんですけど。
アメリカさえ居なければ=アメリカと対立さえしなければ、もっと彼らの目論見は上手くいくのに。


だからトランプ外交が近視眼的アプローチだと批判されていたりするわけでしょう。
アメリカが後ろに下がるということは、当然こうした構図に影響を与えないはずがない。
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まぁ本心はそのはずなのに、わざわざ中国脅威論を盛り上げかねない、特に香港関係や経済面ではものすごい居丈高と見られかねない態度を見せているのは、こちらはこちらで中国側の失態だとは思ってますけど。
韜晦が過ぎれば周辺国から畏怖されないし、逆に攻撃的に過ぎれば更にアメリカがしゃしゃり出てきかねない。彼らも難しい舵取りだよね。


より単純なゲームをしたい中国と、それを邪魔したいアメリカ。
中国は本心からアメリカとは(まだ)対立したくないと思っている。この構図を私たちが誤解するのはあんまり良くない態度ではないかと思ってます。
そしてその狙いも。アメリカが撤退してくれるならば、まさに本心から平和的態度を見せることは中国自身の利益にかなっているんだから。
まぁ合理的なのは間違いないよね。


関与させたくない故に平和的態度を見せる中国と、これ以上深く関与しないで済むように強気な態度を見せるアメリカ。
国際関係の歴史の常であると言うと身も蓋もありませんけど。


米中対立が主要テーマとなった2019年の国際関係の基本的な構図について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?