「ネトウヨなんかに絶対に負けないっ!」

という負けフラグな人たち。


「居酒屋で政治の話をしたいとすら思っていない」若者の投票率はなぜ上がらないのか【原田謙介×たかまつなな対談】 (1/3)
旧タイトル「ネトウヨに勝つ仕組みが必要」でプチ炎上。でも全部読むと、基本的にはまっとうなことを言っているお話だとは思うんですよね。
投票に行かない若者を嘆いてはみるものの、ぢっと私たちオトナの投票率を見てみれば……まぁお察しだよね。いわんや若者をや。
なので個人的には、先ず隗より始めるのが先決だとは思いますけど。

たかまつ:私が感じる課題は「ネトウヨに勝つ」ということです。もう何をやってもネトウヨが強すぎる。せっかくAbemaTVとかが、視聴者の声を吸い上げようと今までの地上波と違う仕組みを作ろうとしても、結局ネトウヨに媚びるみたいな番組作りになってきちゃう。そうじゃないと数字も取れないし、そうしないと数字が取れないっていうのは一番情けないけど、それは多分どんなにうまい作り手でも、割と陥っちゃう罠だと思うので。

「居酒屋で政治の話をしたいとすら思っていない」若者の投票率はなぜ上がらないのか【原田謙介×たかまつなな対談】 (1/3)

確かにこの部分は口が滑ったのか、本音が出ちゃったのか、あるいはPVが欲しくて過激なことを言っちゃったのかな、と少し心配になる部分ではありますけど。
よりによってこの部分はタイトルにしちゃったのは、おそらくタイトルを決めたであろう編集の人の方の功名心か悪意か無能か。


ともあれ、個人的には(賛同するかは別として)(ついでにその詳細な定義は別として)しかし「もう何をやってもネトウヨが強すぎる」というのは理解できるんですよね。
だって、彼らが実現したい「新たな」政治・社会・ビジョンがまぁ解りやすく明確だから。
親自民というよりは反野党、親米というよりは反中反韓、親権力ではなく反リベラル・反権力、親読売産経というよりは反朝日そして反マスコミ。それ以外に何か明確な共通ビジョンがあるかと言うと、実のところ経済政策や社会制度など内実は結構バラバラでしょう。


それでも、彼らの「新しくやりたい事」「新しく目指すもの」が概ね明確である故に、情報の送り手もリーチするコンテンツを作りやすい。つまり彼ら彼女らのビジョンが解りやすいからこそ強いんですよね。
ほらほら~野党や韓国や中国はこぉんなバカなことをやってますよ~(故に現状を打破しよう!)、なんて。
概ねネトウヨ的とされるニュースやまとめサイトの共通した論調ってこういうことでしょう。単純化された事実のみを追うなんてネトウヨってバカね。
――でもそもそも論で言えば、元々こうした「新しいビジョン」の前には、それとは鏡写しの光景が広がってきたからこそ生まれたとも言えるんですけど。
ほらほら~自民党アメリカはこぉんなけしからんことをやってますよ~(故に現状を打破しよう!)、なんて。
こちらも上記のネトウヨ同様、かぎりなく単純化された世界観が広がっていた。まさにそれ故の、そのカウンターとしての現状でもあるわけでしょう。


しかしそれらのトレンドは、二度の政権交代の実現によって概ね終焉した。負けたからではなく、文字通り勝利したからこそ。
だからこそそうした価値観は「次なる」「新しい」という形容詞は少なくとも喪失し、その目新しさは上記ネトウヨ的価値観にとって代わられることになった。
かくして現代の日本社会の空気は次なるステージへ。
“極右”の安倍政権が左派的政策をとり、共産党が「保守」と呼ばれる訳 | 『週刊ダイヤモンド』特別レポート | ダイヤモンド・オンライン
こうした構図があって、次はその新たな価値観として上記ネトウヨ的な世界観が「革新」とされてきているのだと個人的には理解しています。
ちなみに面白いのは、現に見られているようにここで「ネトウヨは少数派!」とやってしまうと――事実かどうかはともかくとして――少数派で認識させればさせるほど、結果として彼らの「一票の重さ」が増すことになるんですよね。
自分ひとり投票したって意味ないとは真逆の作用が働くことになり、そうした思いはより投票へのインセンティブとなる。




ということでネトウヨに勝つ為に必要なのは、それに代わる解りやすい新たなビジョンの必要性、なのでしょう。
既に過ぎ去った古いモノを復活させようと努力するのではなく、「新しく」次なるそれを見つけた時にこそネトウヨに勝てるようになるんじゃないかな。
「AnywheresとSomewheres」という現代民主主義政治の最前線テーマ - maukitiの日記
その解決策の不在の一例が「people from somewhere」な人たちの心を動かすだけの何かを提示できない私たちでもある。
つまりそれは、結果として見れば、(歪な形にしろ)愛国なネトウヨよりもマシなことを言えないリベラルな私たち、というオチでもある。


ネトウヨなんかに絶対に負けない!」と叫んでみても、まぁ結果はお察しであります。言っている時点で負けているともいう。
ただ安心できるのは、それは本邦だけでなく、アメリカでもヨーロッパでも、あるいは後続の民主主義諸国家たちも同様に、まさに世界的というレベルで「新しい価値観」としての民主主義政治での極右な人たちの台頭を許す羽目になっているわけで。
良かった本邦だけがネトウヨまみれになってるんじゃないんだ。
それが簡単に見つかったら苦労しないよね。


ネトウヨに負けないだけの、多くの人びとを魅了できるだけの新たな価値観の提示について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?