いつもの「これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが」を教えてくれる光景

内のくりごはんおいしい。


日本人が香港デモに無関心のままではいけない理由 一線を越えた警察の暴力、香港は戦場になった(1/5) | JBpress(Japan Business Press)
個人的にこれまで無責任にダラダラと書いてきたことと近い内容なので、中国報道の第一人者の一人でもあろう福島さんと近いポジションということはまぁ概ね自分の見方は間違ってなかったと一安心するお話かなあ。

 香港問題を極東アジアにおける自由と専制の対立と見れば、香港がこのまま中国化されてしまうと、東シナ海から南シナ海における自由主義陣営のプレゼンスにも影響してくる。逆に言えば、香港の自由主義的価値観が守られれば、それは中国の閉じられた全体主義世界の中で、唯一西側世界とつながる玄関になり、世界の完全な分断を防ぐ役割を担うことになるかもしれない。その存在が日本にとってどれほど価値あるものかは、地政学やパワーポリティクスを少し勉強した者なら想像できるのではないだろうか。

日本人が香港デモに無関心のままではいけない理由 一線を越えた警察の暴力、香港は戦場になった(1/5) | JBpress(Japan Business Press)

ポケットの中だけにとどまらない香港デモ騒乱 - maukitiの日記
「自由主義の倒し方、知らないでしょ? オレらはもう知ってますよ」 - maukitiの日記

今の香港は同時に、少し前までにはネットを通じた情報の自由化は政治的独裁体制を致命的に揺るがす(故に『歴史は終わる』)と素朴に信じられていたことへの反証としての存在しているのだとも思います。
少しでもそれに関心があるのであれば、香港の趨勢は、同時にリベラルな民主主義的価値観そのものの行く末までも考えざるをえなくなる。

ポケットの中だけにとどまらない香港デモ騒乱 - maukitiの日記

「民主主義政治の倒し方、オレたち知ってます」とばかりに対応を強める香港そして中国政府。
恐ろしすぎる香港デモ――デモ参加者の“ネットさらし”に中国当局が関与!? | 文春オンライン
「Hong Kong government is watching you!」
いやあ政府側もデモと戦うやり方が洗練しているよねえ。……洗練?




しかし一都市内部での争いの行く末が世界全体のトレンドまでも左右する(かもしれない)というのは、かなり興味深い構図だと思います。少し前にはシリア内戦でもホムスアレッポの都市攻防がオタクたちにとっては大きな転換点と囁かれたりしましたけども、あれだって地域的にはともかくグローバルな世界全体にまで影響を与えるほどではなかったし。
その意味で言えば、ちょうど30年前に終焉したベルリン封鎖にあった初期の東西陣営の争いに近いかもしれない。
ベルリン封鎖 - Wikipedia
あれも一地域内での支配権の綱引きが、結果として世界中にまで拡大していったわけだし。まぁ今回は空輸どころか直接の支援すら望めない以上、やっぱり趨勢は決していて、後はどのような状態で終結するのかという段階だとは思いますけど。
ということで歴史の教科書に載ってしまうレベルお話、かもしれない。米中というだけでなく、中国と西側陣営とのデカップリングの始まりだった、なんて。
それをお金で黙りますか? - maukitiの日記
そこまで行ってしまうかどうかは、こちらも以前日記で書いたように、中国的資本主義論理による『沈黙』の強制がどこまで通用するかのお話だとは思いますけど。アメリカでは割ともう失敗しつつあるものの、ヨーロッパや私たち日本ではそれなりに成功していると言えるかもしれない。



ともあれ、私たちが今目にしている香港の騒乱は、まぁ私たちの慣れ親しみそれ故に有難味を見失ってもいる民主主義政治が担保している安全性・安定性・穏健性を改めて教えてくれる、客観視させてくれるお話だとも思うんですよね。
――少なくとも有権者たちの疑義が致命的に大きければ、平和的に政策を変更させることができる。
こんな風に流血の事態にまで行きかねないよりは、まだ桜を見るだの見ないだので争っている方がずっとマシでしょう。
民主主義政治が、それでもまだ、最悪よりはずっとマシだと言える理由が今の香港にはある。


がんばれ香港。