アメリカ帝国の遺産

その遺産をアテにして生きてきた私たちはどうなってしまうのか。


米補佐官、シリア撤収の条件を提示 同盟勢力の安全確保へ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでトランプさんのシリア撤退宣言は、案の定というべきか、まぁやっぱり大荒れだそうで。フラッシュマン帰還せず。そりゃマティスさんが退任しちゃうほどのインパクトもあるお話だから仕方ないよね。それってアメリカが冷戦後、特に『9・11』以来決意して目指してきた(アメリカの、アメリカによる、アメリカのための)世界秩序構築を諦めることに等しいわけだから。
マティスさんのようにアメリカ国内だけでなく、それに恩恵をあずかってきた人たち――むろん私たち日本含む――から反発が起きるのも当然のお話でしょう。

イスラエルを訪問中のボルトン氏は、エルサレムベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相と会談した際、シリア北東部からの米軍撤収については、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」を「打倒して再起不能にし、再び脅威とならないことを確実にする形」での実施方法を模索すると表明。「また、イスラエルと同地域の友人たちの防衛を保証し、ISIS(ISの別称)などのテロ組織に対して米国と共に戦ってきた人々を守っていかなければならない」とも話した。

 トランプ氏が先月に米軍のシリア撤収を表明した際には、同盟諸国には懸念が広がったほか、ジェームズ・マティス(James Mattis)国防長官の退任にもつながっていた。イスラエルは特に、米軍撤収後のシリアで敵国イランが影響力を増すことを危惧している。

米補佐官、シリア撤収の条件を提示 同盟勢力の安全確保へ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

トランプさんの心の友だったイスラエルも不安がっていると。
上記で言及されているように、イランとイスラエルはもう、最大のライバルというか、不倶戴天の敵というか、もし絶滅戦争がまたあったらここだろうなあという程度にはアレな関係だしねえ。


子ブッシュさんの2003年のイラク戦争も、一部界隈からは陰謀論的に「イスラエルの為」などと言われていましたけども、当時からどちらかといえばイスラエルイラク戦争に反対の立場だったんですよね。サダム・フセインを完全排除すること自体には異論はないものの、既にイラクの脅威は(後から解ったように核兵器が完成直前だった)湾岸戦争の時点でほぼ取り除かれ弱体化していたわけで。スカッドを撃ちこまれた記憶も今は昔。
むしろ当時から彼らが気にしていたのはイラン核開発だった。そして実際その懸念はその後のイラン核開発問題を見れば慧眼でもあった。
リチャード・ハースが『War of Necessity, War of Choice』で指摘していたところによれば「イスラエルイラク侵攻に同調するところか、むしろアメリカがそちらに熱中することで(彼らの本命である)イランへの注意が削がれることを恐れていた」と。
それでもイラク戦争は関与度でいえば基本的にはアメリカのポジティブな方向でもあったわけで。ところがそのイラク戦争のツケは、軍事的にも政治的にもまわりまわって元々あった冷戦後アメリカが目指そうとした遺産を食いつぶそうとしている。こちらでもイスラエルの懸念が大当たりですよね。


So long China, it’s been good to know you - Israel News - Haaretz.com
かくして中国に向かうことすら考えるイスラエルでもあると。でもまぁ正直アメリカの当て馬感はあるかなあ。逆説的にその役割がもたされるだけのパワーを持つようになった中国の証明でもある。そしてこうしたイスラエルの懸念と選択は、そのまま私たち日本や韓国にも当てはまる話でもあると。


はたして『9・11』以後目指されてきたアメリカ帝国の遺産は、そしてその遺産に与ってきた私たち同盟国は、新元号となる時代には一体どうなっているんでしょうね。(自己中心的に言ってしまえば少なくとも日本にとっては)平和な時代であった「平成」のおわり。
みなさんはいかがお考えでしょうか?