「2019年にもう一度きてください、ほんとうの民主主義を見せてやりますよ」

これが世界における最新版民主主義政治のチカラだぁぁぁぁぁぁッ!!!!11


【解説】 ブレグジットでいま何がどうなったのか - BBCニュース
ということで世界の範たる民主主義国家にまた新たな事例が加わってしまったそうで。

政府はEUとまったく新しい協定を交渉するという提案が、政府から出てくる可能性もある。この場合、離脱延期にEUの合意を得る必要があるかもしれないが。

2度目の国民投票が実施される可能性もある。この場合も、EUに離脱延期させて欲しいと頼むことになるだろう。あるいは、こう着状態を打破するには総選挙が最善の策だと、首相は判断するかもしれない。

どちらにしても、イギリスは未知の領域にいる。そしてブレグジット時計の針は、ちくたくと進み続けている。

【解説】 ブレグジットでいま何がどうなったのか - BBCニュース

ザ・泥沼。でもまあ色々と現代民主主義の縮図のようなお話かなあ。
一度は(気の迷いという面はあったにせよ)投票で方向性を決めたそれが、しかし細部を詰めようとすると元々の反対派だけでなく細部に不満な人たちもの反対も合わさってまったく前に進めない構図。総論賛成各論反対。まぁ少し考えてみればいつでもどこでもありそうな展開ではあるものの、しかしそこは大人として政治家としての職業意識で前に進められていたと。
でも今はそれがない。政治分断の時代だからね。しかたないよね。右も左も、相手側の意見は絶対的に間違っているので1ミリも受け入れたくなーい! というきもち。
選挙で選ばれた政治家の意見には、多かれ少なかれ有権者の意向が反映されているのだし。


もちろんここで「再度」国民投票に掛けることは可能ではある。一度だけならセーフかもしれない。
メイ首相が反対していた通り「それをやれば政治の一貫性はどうなってしまうのか」という批判はもちろんその通りだし、一度それを許せば無限にそのちゃぶ台返しが可能となってしまいかねないんですけど。そもそも、だったら一度目の投票の意味はなんだったの?
――そうやって『投票』すること自体の意味・重要性を徐々に摩耗させていくのは、それこそ長期的な民主主義の自殺といっても過言ではないでしょう。


「バイバイ」 トランプ氏、政府再開協議を去る - BBCニュース
仏デモ9週連続、収束の兆し見えず…参加者増 : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
といっても、まぁそんなブリグジットで醜態を晒すイギリスだけをアレだと責めるのはフェアではないよね。アメリカもフランスも他の欧州諸国も、対立する両者の分断の溝は深く、それ故に妥協的な政治合意を生み出すのにひたすら苦労している。そしてそんな閉塞感が極右と極左政党の台頭を招いている。
むしろ私たちが模範にしてきた――いや模範にするような他より「進んだ」民主主義国家である英米仏だからこそこういう事態に直面しているという言い方が正解かもしれない。



日本も他人事ではなくて、おそらく、最近の事例で考えると「憲法改正」がこうした政治的泥沼に陥る可能性は高くて*1もし本当にやるなら、こうした姿は将来の日本かもなあとちょっとメランコリックな気持ちにはなります。


ともあれ、こうした民主主義国家の失態を中国やロシアなどがせせら笑っている、というのはまぁその通りなのでしょうね。なにしろ私たちが無様に失敗すればするほど、相対的に彼らの政治体制の正しさが証明されるのだから。
(最早欧米世界では規定事実として語られるようになった)彼らの選挙介入や政治論争扇動は、一石二鳥な方策なんですよね。ただ相手の足を引っ張るだけでなく、西側民主主義国家の政治体制の欠陥が露わなること自体にメリットがある。


いやあ民主主義ってすばらしかったよね(過去形)。
既にコレに慣れ親しんだ私たちは、そりゃこの期に及んでもしばらくは民主主義にしがみついていくでしょうけど、よりマクロな視点で見れば、こうした失態が後発の未熟な国家たちに与える影響を考えると……。まぁ暗澹たる気持ちにはちょっとなるよね。
「リベラルな民主主義? ああ、過渡期にあった国民の意見統合も政治合意もできない欠陥ばかりの政治体制のことですね(笑)」と語られる日がいつかやってくるかもしれない。
やっぱり歴史は終わらないんだなって。フクヤマ先生を信じてた僕の青春時代はなんだったんだ。


みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:であればこそ個人的には(大多数を占めるだろうノンポリ人もそうだろう)憲法改正には消極的賛成でも、国民投票には消極的反対である。