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『メディア規制』への道をフォックスニュース批判が舗装する

左右に共通する、メディアへの不寛容という現代民主主義政治のトレンドの最前線。


トランプの「無罪判決」を生んだFOXニュースの大罪 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ということで大概のウォッチャーからは「どうせ通らない」と見られていた弾劾裁判の投票ではありますけども、まぁ当事者ポジションな人たち(むしろ渋っていたペロシさん辺りは当然わかっていただろうし、ここではその支持者たち)は激おこなコラムが出てきていて、日本人的にはいとおかしという感じです。

もっとも、トランプに責任があるわけではない。結局のところ彼が政治的に力を持つ以前から、この地域にはそのような価値観を持つ人々がいたのだ。では、大統領の罷免を支持するのがたった48%、という責任は誰にあるのか。

答えは簡単だ。アメリカの郊外でテレビのあるレストランやジムに入ると、たいていあるチャンネルがついている。FOXニュースだ。トランプ・カントリーとは、つまりFOXニュース・カントリーのことである。

トランプの「無罪判決」を生んだFOXニュースの大罪 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

うーん、まぁ、そうねえ。
個人的にはどうしても、まさかトランプ支持者を直接批判なんてできない故に間接的に強い影響力を持っているメディアを批判している、という愉快な構図を幻視してしまうお話かなあ。
――その意味では、激しい怒りを滲ませているようで実はちゃんとリスクを勘案しているコラム、ではあるんですよね。
それこそ「トランプに投票した愚民が悪い!」というぶっとばす人も少なくないわけで。でもそれを言ったら「歴史的に」アウトなのは間違いない。


例えば本邦にも「自民党に投票するバカが悪い!」という人たちはいっぱい居ますからねえ*1
なのでこの問題はまぁそのまま本邦でも通用するお話でしょう。
「安倍政権の不支持率が、たったの○○%にとどまっている責任は誰にあるのか!?」
ただこの問題ってアメリカや日本にとどまらず、ポピュリズム吹き荒れる21世紀の現代民主主義政治がほとんどどこでも直面している問題ではあるんですよね。
かのブリグジットだって、フェイクニュースにだまされた有権者の投票によって~というのはずっと言われている構図でもあるし。


「一部メディアによる悪質な扇動のせいで民主主義が危機に瀕しているのだ!!!!」




さて、ここからが今回の日記の本題ではありますが、ここで非常に面白いのはフォックスニュースのような「悪辣な保守派メディア」に対して見せる上記のようなリベラルな人たちの『不寛容な姿勢』って、ほとんどそのまま保守派な人たちがCNNやNYTなど「リベラル派メディアの偽善」に対しての『不寛容な姿勢』とそっくりそのまま裏返しのように見える点だと思うんですよね。
つまり、彼ら彼女らはどちらも同じことを言っている。
「(あいつらが支持している)メディアの言うことは信用できない!」


もちろんその『罪』の重さについては、それこそ各々ポジションによって様々ご意見ご感想があるでしょう。
でも完璧な政治がこの世に存在しないように、完璧なメディアだって存在しないわけで。
粗を探せば幾らだって出てくるわけですよ。
実際、単に現状におけるヒドさという視点ではなく、単純に歴史的に罪を重ねた数の多さという意味で見ればこれまで傍流でしかなった保守メディアのそれよりも、長年主流にあったリベラルメディアの方が瑕疵が多いというのはある意味当然の帰結でもあるわけで。



皮肉にも上記コラムの著者が強い言葉でそのフォックスニュースへの批判をすればするほど、トランプが見せるメディア規制への道を舗装することになる。

  • 「偏りのある情報や不正確な情報を示したメディアに、裁判所が閉鎖命令を出すことを認めるべきか?」
  • 「偏った報道や不正確な報道に罰金を科す」

これはまさに共和党支持者でこそ半数近い支持を得る世論調査ではありますが*2、彼のフォックスニュース批判の一歩先にはこうした風景が広がっているのは間違いない。
おそらくは意図せずに、そして善意からなるトランプ批判の結果として「ウソつきメディアは規制しても構わない」というトランプ支持層の姿勢をほとんどそのまま擁護してしまっている。



本邦でも朝日や毎日や東京、あるいは産経や読売いった新聞についての批判の声が生む構図としては同じだと思うんですよね。
何もそれら新聞のレベルが左右「どっちもどっち」と言いたいわけではなくて、この左右のどちらの側の人びとも『信用できないメディアによる悪影響』というレンズを通して政治や社会の問題を見ている、という構図が生まれている点こそが重要ではないかと。
かくして『メディアへの不寛容』という左右に共通した構図は生まれている。
こうした状況が固定化してしまうと、政治による「メディア規制」という地点への道程としてはどちらも大差なくなってしまう。
結果として、その矛先がどちらへ向くか、という次元でしかない。
両者の共謀によって益々メディアへの信頼感は失われていく。

結局のところ、民主主義を破壊したのはトランプではなくFOXニュースなのだ。

トランプの「無罪判決」を生んだFOXニュースの大罪 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイ

その後にやってくるだろうと予想されるのは、「(民主主義を守るために)メディアを規制しよう!」というのはまぁ簡単に予想できてしまうよね。
そして最後のメディア名を入れ替えれば、ほとんどそのままトランプ支持者たちが支持する言説でもある。
トランプ批判者がトランプ支持者とそっくりな構図。
いやあ、やっぱり、いとおかし、だよね。



解決策の一つとしては、実際に相対的にこの愉快なジレンマがあまり起きにくいヨーロッパ流の所謂『戦う民主主義』がありますけども、はたしてアメリカもそのようになっていくのでしょうかね?
「民主主義を守るためにこそ、メディアの表現の自由は政治で規制しよう!」なんて。


みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:もちろんその反対には「旧民主党に投票したバカ」というような人たちがいっぱいいる

*2:『民主主義の死に方』第8章