「科学的根拠に基づくシェンゲン維持を許そう」「だが民主主義が許すかな!」

今ふたたび『科学的根拠』vs『民意』の戦いが眼前に。



日本料理店に「コロナウイルス、消え失せろ」の落書き、フランス海外県では島民が観光バスを襲って…… | 文春オンライン
ということでちょくちょくネタにしてきた非常時によって、良くも悪くも、本性が顕わになる私たちの人間社会であります。
「コロナちゃん」「黄色人種警報」 新型肺炎があぶり出した欧州の差別意識【世界から】 | 47NEWS
よかったね。中国人を差別して悦に入るのは本邦だけの悪行ではなくて、むしろ人類共通の真性だったのだ。


だからといって個人的には「ほら見ろ!」と言いたいわけでは絶対になくて、むしろこんなクソみたいな本能が奥底にありながら、
しかし良識と同調圧力でそれを抑制してきた人間社会というのはすごいなあごりっぱだなあと素朴に感心してしまうポジションではあるんですけど。
いやあやっぱりにんげんってすばらしいよね!



ともあれ、今回の上記記事として興味深かったのはこの辺かなあ。

 EUの執行部である欧州委員会は2月24日、EU内での国境管理を復活させる決定は加盟国に属するが、「信頼できるリスク評価と科学的証拠に基づいて」「他国と連携して」行わなければならないと喚起した。国境審査の復活を決定した加盟国はまだない。

日本料理店に「コロナウイルス、消え失せろ」の落書き、フランス海外県では島民が観光バスを襲って…… | 文春オンライン

もちろん建前としてはそう――シェンゲン協定維持なんでしょうけど、ただそれって、私たち有権者の世論の扇動されやすさっぷりを甘く見てるとしか言いようがないよねえ。
「人びとは理性的に行動するだろう」という理性的な人たちの楽観を見事に打ち砕いたのが、あのブリグジットやトランプの勝利だったのにね。
本当にその「信頼できるリスク評価と科学的証拠」は、ポピュリズムに煽られた『世論』に勝利できるの~???
とちょっとイジワルには考えてしまいます。


マスクの高額転売禁止へ 政府、緊急措置法で  :日本経済新聞
日本政府 中韓からの入国者に指定場所での2週間待機を要請 | NHKニュース
入国制限は遅すぎたか 透ける中国への配慮、指導力演出 [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
それこそ私たち日本の安倍さんだって、現在進行形で「民意に負けた形で」割とギリギリというか今更な対応を採っているわけだし。
あるいは『フクシマ』と卑下されたあの時にも散々見た光景だよねえ、



トルコが国境開放、移民数百万人が欧州に流入も 受け入れめぐり対立 - BBCニュース
そして更には新たな『難民爆弾』が準備されているとなっては尚更。その恐怖の総量はコロナも加わって威力は単純計算でも二倍であります。
移民のボートに向けて発砲、トルコからの流入を阻止 ギリシャ沿岸警備隊 - BBCニュース
それこそ、現場で起きていることといえば、上記のようなコロナ差別というだけでなくここうしたギリシャでの行動は氷山の一角でしかないだろうし。




はたしてヨーロッパはそれでもポピュリズムな意見に勝利することができるのか。
――しかしその勝利とは、つまるところ、彼らの内にある多数派意見の軽視=民主主義の敗北でもあるんですけど。
でも仕方ないよね。
だって有権者たちの疑心暗鬼による不安なんて科学的根拠は無いから無視してればいいんだもん!


皮肉にも『民主主義の赤字』があるからこそ、欧州連合は「私たちとは違って」疑心暗鬼とポピュリズムに勝てるかもしれない。
その構図を言祝げばいいのか、あるいは民主主義制度信仰者の一人として呪詛でも投げつければいいのか、僕にはまだわかりませんけど。


欧州連合がこれから直面するだろう――端から見ている分には愉快な――ジレンマについて。
みなさんはいかがお考えでしょうか?