『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』見た

かつて『最高効率を目指したいので一部能力に極振りしたいと思います。』な廃人プレイヤーだった私たちへ。






名前を呼んではいけないあのネタばかりになってきたので、久々に息抜きアニメ感想日記。
アニメ視聴のみで原作エアプなので、「読まずに批判」な頓珍漢なことを言っていたら笑って許してくれると幸いであります。
TVアニメ「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」公式サイト
ということで自粛生活(日常)の合間に視聴しました。
うん、まぁ、作業ながら視聴のアニメとしては普通に完走できたので良い作品だったのではないでしょうか。


まぁ所謂CGDCTな「きらら」な日常系だよね。
それを敢えてなろうVRMMOモノでやろうとするのは新しかったのかもしれない。
でもぶっちゃけ日常系に挟まれるネタとしてありがちな「進路や将来の夢に悩む思春期な少女たちの群像劇」すらない、更に話の中身としては何もない虚無なので、むしろ正しく「かわいいことをしているかわいい女の子たち」路線としてはこちらの方が王道とすら言えるかもしれない。
もういっそOPの最後できららジャンプでもすればよかったのに。


ネトゲ廃人な自分としては、そんなきららアニメに真面目に突っ込むのもアレなものの、でもまぁ折角だし、以下適当なネトゲ話。





『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います』といういかにもなタイトルではありますけども、
別にそんな理由を持ち出さなくても、一部ネトゲプレイヤーにとって「極振り」にするのって結構あるあるなんですよね。
むしろ『最高効率を目指したいので一部能力に極振りしたいと思います』というのは廃人プレイヤーたちからすると一般的ですらある。


特にPvEゲームで一定以上の集団でパーティプレイをやる前提であれば、火力や防御能力を他の仲間にアウトソーシングできるので、特定能力に極振りすることこそ最適解なんですよ。
作中でもあったように移動力が遅いのであれば移動を手伝ってもらえばいいし、火力がないなら火力ある人にこそ火力全振りで殴ってもらえばいいし、そして自分が防御力に特化して敵を「より多く」集めることができればより早く成長することができる。


こちらも作中にあった攻撃全振りのメンバーと組んでいる様子がありましたけど、まさにあれこそが大抵のネトゲにおける『最高効率パーティ』なんですよね。
それこそあまりにも機械的な効率重視で、普通にゲームを楽しみたい一般プレイヤーたちから「ザ・効率厨」と蔑まれるレベルの。
もしガチでやってる大規模ギルドがあったら、ああいった最高効率パーティを複数運用して、更に戦闘向きではない生産職などのレベル上げを組織的ファーミングとして行っているんじゃないかな。


自分よりも強い能力がある人が居るのであれば、いっそ初めからその部分は捨て他に全て任せて、自分は自分が得意な能力を一つ上げた方が集団全体にとっても有利に働く。
自分も以前廃人プレイヤーたちの集まるグループでネトゲを渡り歩いたりしていましたけども、まぁそういう「事前に」チームとして用意できるなら尚更。
そうした育成のスタートダッシュで差がついて、更にはその先行者利益による資源独占でまた差が開いていく。
ちなみに、逆にソロプレイをするのであればきちんと必要な能力を各種伸ばす必要があって、ここが上記集団による協同プレイに勝てない理由でもあるわけで。


協力分業こそ人間社会における普遍の勝利の方程式の真理であることは、かのようにネトゲ社会でも正しく証明されている。
人生に必要な知恵はだいたいネトゲで学んだ その1「グローバル化こわい」 - maukitiの日記
人生に必要な知恵はだいたいネトゲで学んだ その2「妬み嫉みこそ人の本性である」 - maukitiの日記
やっぱり人生で必要な知識はネトゲで学べるんだなあ。
――だからこの廃人プレイヤーたちによる共同作業と同じように、結果的に防御に極振りした彼女がある種の「最強」とされるキャラクターにまで成長したことはほとんど同義である。
むしろ一周回って「ネトゲにおける極振り最適解」理論を証明したいがためにこの作品が生み出されたのであれば、より深淵なテーマを背景とした深いストーリーだということはできるかもしれない。



ちなみに所謂「初心者狩り」をしたい人たちにとっても「防御力極振り」は結構な最適解でもあったりするんですよね。
ダメージを実質0にまで抑えることができれば、弱い敵なら幾ら増えようと絶対に死ななくなるから。
――某有名作品SAOでも主人公がたくさんの格下プレイヤーたちから攻撃されても「自動回復の方が早いからダメージ受けないぜ(キリトッ」な俺TUEEEプレイをしていたように。
だから、初心者エリアで格下雑魚初心者たちを狩りまくってやりたーい! というゲスいロールプレイやnoob狙いのPKをしたい時に最適解なのは、火力が高いアタッカーよりも、むしろ防御力の高いタンクキャラでもあるわけですよ。
ただまぁそうではない普通の対人戦としては、相手が人間である以上『極振り』よりも総合力が求められることが一般的ではあるんですけど。






話を戻して、だからこそ逆説的に開発運営からすると『極振り』プレイってあんまりやってほしくない所ではあるんですよね。

  • だってその育成速度の速さは当然コンテンツの食いつぶしを生み、一般プレイヤーとの格差を生むから。
  • それが最適解だと広まってしまうと、大多数のソロプレイヤーたちが萎えてしまうから。

故に開発運営としてはデメリットを大きくして『極振り』をさせないようにするんですけども、しかしそうしたゲーム上の施策って上記の人間社会の普遍の真理である共同作業の否定と限りなくトレードオフでもあるんですよ。
制約を大きくすればするほど創意工夫をする協力プレイという「大規模なゲームとしての」楽しみは消えていく。
いやあゲームづくりって難しいよねえ。


更にはこのインターネットの普及した現代社会というのは、複数プレイせずとも個人の最適解が一瞬にして広まってしまう恐ろしい時代でもある。
youtubeや企業系wikiによって最適な育成方法やレア装備の入手方法は、それはもう一瞬で広まっていくわけですよ。
かくしてその情報の普及はプレイヤー同士の競合を生み、醜い争奪戦の様相を呈することになる。ゲーム内外で。
それなのにまぁあちらはまぁ平和で牧歌的な世界だよね。
上位ギルドによるボス独占や、効率厨なファーミング、あるいは最適解なテンプレ育成方法の普及による画一化も起きているように見えない。
そして何より、そうした攻略情報の普及によるコンテンツ食いつぶし速度の加速という、現在存在しているほとんど全てのMMORPGが抱える根源的問題も見えない。


あるいは、昨今のソシャゲ界隈でもそうなんですが、ある程度の順位の低いマイナーゲームってPVを稼げないのでyoutubeからも企業系wikiからも空白ページだけ作られ見捨てられ、その割に検索上位だけは独占されたまま放置されているので攻略情報が広まらずに埋もれたままになる、という構図があったりするんですよね。
なのでこの『New World Online』も、いつサービス終了になってもおかしくない低空飛行な売り上げなのかもしれない。
最早プレイヤーが数百人しかいないような。
うーん、『NWOぐらし!』かな?
やっぱりきらら系アニメにそうした現実世界の身の蓋もなさを期待する方が間違っている、というのは正論でもあるんですけど。




ということで結論としては、『New World Online』はすばらしいゲーム、という点だと思うんですよね。
このかわいい女の子プレイヤーたちにとってというよりは、
なにより(開発運営にとって)すばらしく都合の良い世界、であると。




アマプラにもあるので、みなさんもこの自粛生活でお時間があったら是非。