正直者が報われる公平な社会を望む人びと

つまりその実現の為に今私たちがやることと言えば……。



Netflixがサービスを利用していない会員の契約を自動でキャンセルするように - GIGAZINE
前回も少し書いたnetflixの契約自動キャンセルという取り組みから見える「正直者が報われる社会」について考えたお話。

Wu氏は「契約したのに何年もサービスを使っていないことに気付いた時の沈んだ気持ちがわかりますか? Netflixは、使っていないものにお金を払ってもらうのは避けたいと思っています」と語り、「サービスへの登録もキャンセルも、簡単にできるべきだと私たちは考えています。そのため、サブスクリプションがキャンセルされても、10カ月以内であれば以前のアカウント情報やプロファイル、表示設定をそのまま使ってサブスクリプションを再開できます」と述べています。

Netflixがサービスを利用していない会員の契約を自動でキャンセルするように - GIGAZINE

その前提には、こうした『善行』が宣伝効果を生みより多くの顧客を獲得できるだろう、という合理的な予測があるわけですよね。
彼らは正しく「正直者が報われる」社会を想定している。そうした合理的な経営判断があるのでしょう。
いやあ、とりあえず初月無料だからとバカみたいにオプションを契約させようとするどっかの携帯会社なんかは見習ってほしいものだよね。
昨今では再びサブスクな課金方法が盛り上がっていますけども、一昔前に隆盛していたネトゲを複数やっていると月額課金を切り忘れてずっと支払い続けていたことのあるネトゲおじさんも多いはず。
ということでその取り組みには、個人的には賛同する所ではあります。
まぁ逆説的に、もしこれでnetflixがこうした取り組みを止めてしまったら、結局上記携帯会社のような「正直者ではない方が得をする」という不公平な社会を私たちが黙認しているということの証左にもなってしまうんですけど。






だから、こうした構図を改めて今考えると、我々の素朴な正義感の一種でもあろう「正直者が報われる社会であってほしい」というのは、ほとんどそのまま「正直者ではない者」への懲罰的行動を呼ぶインセンティブでもあるわけですよね。
山梨・高速バス移動女性の新型コロナ陽性発表・報道に見る「私刑」の構図(ふじいりょう) - 個人 - Yahoo!ニュース
日本でも多数出現…「自粛警察」の心理を理解できますか?(原田 隆之) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)
つまり、それは私たちの一部が今回のコロナで「自粛を守らない(ように見える)」人たちに見せた『正義』の振る舞いそのものでもある。
彼らが自分を正義――というよりはむしろ、正直者・ウソをつかない人間が報われる健全で公平な社会であろうとしてそれを破った人たちを正しく罰しているだけ。

我々は正直者が報われる公平な世界を建設している。新しい理想郷を建設するのである。
したがってウソをついて利益を得るようとする人間はいらない。人権などあるはずない。
たとえ親であっても、社会の毒と思えば微笑んで吊るせ。
今住んでいるのは正直者が報われる社会なのである。我々はこれより過去を切り捨てる。
泣いてはいけない。泣くのは今の生活を嫌がっているからだ。
笑ってはいけない。笑うのは昔の生活を懐かしんでいるからだ。

いやあせっせと張り紙や密告をする自粛警察って、ほんとうに正直者が報われる公平な社会の構築に熱心なんだなあ。




正直者が報われる公平な社会であってほしいと素朴に願う私たち。
――でもそれってほとんどそのまま正直者ではない者たちへの有形無形のバッシングや私刑と紙一重なのだと、今回の件でしみじみ思い知らされてしまったよねえ。
その健気な願いこそが地獄を生む。


みなさんはいかがお考えでしょうか?