東アジア情勢は複雑怪奇

が行き過ぎて逆に無風状態に陥っているのはちょっと面白いよね。他人事として見るならば。


ボルトン氏回顧録 ここに注目! | NHKニュース
ということで各所で色々と大騒動を巻き起こしているボルトンさんの暴露本だそうで。邦訳はよ! やくめでしょ!

そして回顧録の中では、さまざまな外交課題をめぐる安倍総理大臣とのやり取りが頻繁に登場しています。

おととし6月にシンガポールで行われた米朝首脳会談に先立って、ワシントンで行われた日米首脳会談では、安倍総理大臣が北朝鮮について「非常にタフでずる賢い」と述べ、安易に制裁を解除せず、慎重に対応するよう忠告したと明かしています。

ボルトン氏回顧録 ここに注目! | NHKニュース

しかし米朝会議に際しての、安倍さんの態度が、まんまイジワルな隣人役で面白いよね。
いやまぁそれが国内世論とそこまで乖離しているかというとそうでもないんですけど。
それなりに民意を反映しているとは言えるかもしれない。
一方で本邦でも(所謂左派を中心に)あの米朝会談の盛り上がりで「東アジア情勢は劇的に変化しているのに、いつまでも日米同盟や北制裁にこだわる日本はおっくれってる~!」とする向きも政権批判としてかなりあったりして、それも今となってはそれが正しい見方だともとても言えず、まぁ難しいお話だよね。


ボルトン氏著書に、韓国がここまで怒る理由 「仲介者」の実態が赤裸々に...: J-CAST ニュース
一方で韓国は「太陽」をやっていたそうで。

回顧録には、ボルトン氏が文在寅ムン・ジェイン)政権への対応に不信感を募らせる様子が多数描かれており、2019年6月に板門店で行われた米朝首脳会談では、文氏も参加を強く希望し、米側が対応に苦慮したとも説明されている。韓国は米朝の「仲介者」「仲裁者」を自任し、たびたび北朝鮮から非難されてきた。仮にボルトン氏の認識が正しければ、韓国は米国からも「お節介」だと認識されていたことになる。

ボルトン氏著書に、韓国がここまで怒る理由 「仲介者」の実態が赤裸々に...: J-CAST ニュース

うーんまさに太陽政策らしい韓国の太陽役と、そして日本の北風。童話のようによくできたお話。
こうした状況を考えると、まぁ韓国が日本に不信感を抱くのは無理はないし、同様に――まさに現在進行形でビラを巡って争っているように――北朝鮮が韓国に不信感を抱くのは無理はないよね。
答え合わせできちゃった感。
極東アジアに吹く北風と、そこを照らす太陽。
はたして厄介な旅人の態度変更に成功するのは一体どっちなんでしょうねえ。いやどっちも失敗しているとか身も蓋もないこと禁止。




ともあれ、今回日記の本題であるボルトンさんの暴露本で個人的に面白いと思うのは、やっぱり2002年の時から変わらず今でもネオコンな人たちにとっては北朝鮮問題はコストに見合わず出来れば無視しておきたい問題、なんだなあと改めて示唆されている点だと思うんですよね。
もうずっと「制裁して後は放っておけ」という基本的ポジション。
割と日本政府もそういうポジションなのであまり責められないんですけど。
でも仕方ないよね。北朝鮮を攻めるには副次的被害(韓国はもちろん日本、そして対中対露の関係悪化という意味でも)大きすぎるし、しかも攻めても「イラクのように」民主化しても既に周りには日本や韓国という成功事例があるので『アメリカの勝利』として掲げる大義という意味でもアピールし難い。
かくして北朝鮮問題は、皮肉にもネオコンや国際主義リベラルといった党派を越えたアメリカの共通見解として、クリントン子ブッシュオバマとずっと放置されて続けてきたわけで。
『核なき世界』という素晴らしい理念には賛同してみても、現実の行動としては核保有国が増えることすら止められない私たち。


ところが、そんな平和()な東アジアに、再選の為のアピール材料として外交を使おうとする暴君トランプが登場してしまうことになる。
どうにか北朝鮮代理人として振る舞いたい(でも米朝から邪魔だと思われている)韓国。
どうにかして北朝鮮をやっつけてやりたい(でもその手段はない)日本。
そして基本的には北朝鮮に関わりたくないというアメリカの従来の外交政策の本音を代弁する、ネオコンボルトン
……うーん、地獄かな?



いやあ北朝鮮情勢は相変わらず複雑怪奇だよね!
何が悲劇って、結局のところプレイヤーたちの同床異夢が激しすぎて、マトモな行動計画を持てずに結局北朝鮮の核配備が進むだけっていうオチそのものが。
ただ皮肉にもその不一致さが、とりあえずの現状維持=制裁維持によって、結果として北朝鮮が新たな利益を得ることを抑止ししてもいることなんですけど。
結局のところ北朝鮮問題の解決の難しさは、ほとんどそのまま当事者たちの不一致でもあるのでしょう。私たち日本を含め誰もが別のことを考えている。
まぁ別の国なんだから当たり前ではあるんですけど。
それを乗り越えるのが外交の叡智だろうとも言えるんですけど。


みなさんはいかがお考えでしょうか?