新世界秩序という物語シリーズ打ち切りの戦犯

ノヴス・オルド・セクロールム。テドロスが今後も新世界秩序の救世主たらんことを。



WHO「多くの国が誤った方向に」新型コロナの事態悪化を警告 | NHKニュース
多くの国「間違った方向に」 WHO事務局長が批判―新型コロナ:時事ドットコム
ということでもう何を言ってもアレな扱いしかされなくなってしまったテドロスさんの、ありがたいお言葉であります。

 【ベルリン時事】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は13日の記者会見で、新型コロナウイルスへの対応について多くの国が「間違った方向に向かっている」と批判した。各国の指導者に対し、ウイルス封じ込めへの明確なメッセージを発するよう訴えた。

多くの国「間違った方向に」 WHO事務局長が批判―新型コロナ:時事ドットコム

まぁその言葉の前提に存在しているのが、彼らの正当性の無邪気な確信であり、(自身のこれまでの対応とは裏腹の)その傲慢な確信さがより反発を生んでしまっているのは皮肉で面白いお話だよねえ。
まさに彼一人だけで、世界中の人たちに、その決定に何ら責任を負わない政治家に、私たちの生活に影響を与える政治決定をさせることへの強い不信感を生むことになっている。
ヨーロッパ統合の風景でも見られたように、「既存国家を超えグローバルで緊密に結びついた世界」が近づけば近づくほど、我々が信じている民主制度と比較しての政治責任の曖昧さがより際立っていく。
ザ・民主主義の赤字。





まぁ当日記でも関心領域ど真ん中なのでちょくちょく言及してきた日記ネタではあります。
このおじいちゃんいつも同じこと言ってる。
――ただ、ここでほんとうに面白いと思っているのは、このテドロスさんの失態とそれに伴う「WHOへの信頼性そのものの失墜」ってただ一つの国際機関の失墜という文脈にとどまらず、むしろ(しばしば陰謀論的にも語られてきた)『New World Order』=新世界秩序を築くための正当性の根幹の一つへの瑕疵、でもあるわけでしょう。
物語はどこに消えた? - maukitiの日記
前回日記でも書いた、世界全体を射程にした協力体制を生むための『物語』の一つとしてかつて期待されていたもの。
そうした新たな協調体制の物語の大義名分としてあったのが「国連を中心として世界全体の人びとの幸福・健康・自由の追求する」ことでもあったわけですよ。
その世界全体での実現を追求するために、我々は国家という枠組みを越えてより一層協力すべきである。
ノヴス・オルド・セクロールム。
時代の新秩序。
新世界秩序。


確かにその一つである「健康」というのはミクロな私たちの個人的生活に直結していて、直感的にも理解できる解りやすい概念だよね。なかなか良く出来た物語であります。
翻ってWHOってその健康部分を実際に対応する最前線の国連機関でもあったわけで。
「国連は、WHOが世界全体の健康を追求しているように、人類世界全体の利益を考えているのだ!」なんて。
だから世界保健機関というのは、より意味のあり実効性を持つ『国連』を目指す人たちにとっても実はものすごく重要な機関だった。




ところがぎっちょん、私たちの健康を考えてくれるはずの世界保健機関というのは、実は御覧の有様だった。
……やっぱり、国連や国際機関や条約なんてアテにならない、自分の国家に頼るのがナンバーワン!

さらに「近い将来、『オールド・ノーマル』に戻ることはできないだろう」と述べ、感染拡大前の社会生活に戻ることは当面は困難だという認識を示しました。

WHO「多くの国が誤った方向に」新型コロナの事態悪化を警告 | NHKニュース

だから彼のこの発言ってものすごくダブルミーニングとして上手いことを言っていると思うんですよね。
近い将来、ミクロな我々が『オールド・ノーマル』に戻れなくなったと語る彼によって、
同じように近い将来、国連が『オールド・ノーマル』を脱却できる可能性は更に低くなった。
大国間(常任理事国間)のただの利害調整役でしかなかった、オールド・ノーマルな古い国連から脱却するために、その存在証明とするはずだった世界全体の幸福・健康・自由の追求という目標について、彼は致命的な瑕疵をもたらすことになった。
……まぁ米中対立によって、冷戦構造のような時代への回帰で国際機関や条約が更に弱体化されていくのは、かなり既定路線でもあったわけですけど。





今回のコロナ禍においての彼の責任はそこまでは大きくはないと個人的には思っていますけども、しかし本邦のリベラルたちも少なからず夢見ていた国連を中心とした新世界秩序という物語にトドメを刺した、という意味での彼の責任はかなり大きくて戦犯レベルなんじゃないかと思っています。


ただWHOの信頼性というだけでなく、
国連の存在意義であった「世界全体の利益」という中心的教義にまで瑕疵をつけてしまったテドロスさんについて。
前者は首を挿げ替えればいいものの、しかし後者の問題は割と致命的なんじゃないかなあ。


みなさんはいかがお考えでしょうか?