正解しないアメリカ

個人的には『楽観』よりも『9・11』派かなあ。



米タカ派の中国批判復活…米中国交正常化から半世紀 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
Normalizing trade with China back in 2000 was a colossal mistake - Washington Times
面白いお話。

【9月10日 AFP】米国のリチャード・ニクソン(Richard Nixon)元大統領が樹立した共産主義国家・中国との国交は、半世紀に及んで多くの米国民から優れた外交手腕の成果とみなされ、その後も民主・共和両党の歴代大統領が踏襲してきた。

 だが米国の強硬派は今、別の見方を復活させている。マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官から見れば、国交正常化は誤りであり、それは中国をつけ上がらせ、米中間の緊張激化をもたらすお膳立てだったとなる。

米タカ派の中国批判復活…米中国交正常化から半世紀 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

ニクソンの国交正常化や、クリントン時代の貿易正常化など、関与すれば自由になっていくだろうというアメリカの楽観が今の米中対立に繋がったのだ、と。
天安門事件30年、中国を許した米国の失敗 - WSJ
まぁ結果的には概ねその通りかもしれないね。
――ただ、それを言ったらクリントンさんに限らず、子ブッシュイラクでも、父ブッシュのソ連崩壊でも、あるいはオバマさんの『アラブの春』でも、ずっと彼らはその楽観した未来を信じたせいでその後の泥沼に踏み込んでいったわけだしねえ。
『ウルカヌスの群像』では、アメリカの能力とイラクの将来展望、その二つの底抜けの楽観がネオコンたちにイラク戦争を決断させた要因だと指摘されているんですよね。
そんなネオコンの一人でもあるポンペオさんが、かつての政権の『楽観』を批判する、という構図はかなりウィットに富んでいて僕は好きです。


つまるところ、楽観ってアメリカの宿痾というか、国家の性質とも呼ぶべきものなのかもしれない。
それこそ国内的にも、あそこまで格差社会で貧富の格差があっても、アメリカンドリームという言葉に代表されるような「(すばらしいものになるに違いない)未来を信じる」ことこそがアメリカを一つにしている、なんて確かハンチントン先生辺りも仰っていたわけだしねえ。
いやまぁ、そもそもアメリカに限らず人間の失敗とは大抵そんな楽観からだろう、というと身も蓋もないお話になってしまいますけど。
あるいは事後諸葛亮
個人的にはこのポンペオさんの批判ってそういうモノだとは思います。
後からならなんとでも言えてしまうよね。本邦でも政治問題について、まぁ後からああだこうだ言う人はいっぱいいるわけだしねえ。




もし、今、かつての海南島事件のようなことが起きたらどうなっちゃうの~???
最早両者ともに「外交の知恵」を利用して穏健的に事態を沈静化するインセンティブはもう望めそうにない。
新型コロナ、「中国の責任追及を」 米大統領が国連演説―中国主席、政治化に反対:時事ドットコム
それは完全に中国を敵対的な競争相手として見るようになったアメリカもそうだし、あるいは2008年の金融危機以来自らの制度の正当性を確信するようになった中国という意味でも。
ちなみに、上記事件のあった『9・11』前の子ブッシュ政権は、クリントン政権から継承した経済政策はともかく、人権問題や軍事的警戒という意味では割と対中強硬路線を明確にしていたんですよね。
マイク・モチヅキ氏 演会講 「ブッシュ政権下のアジア政策」 | イベント・出版 | 公益財団法人 中曽根康弘世界平和研究所
故にその一見矛盾した対中政策は「関与」と「封じ込め」の両方取りのコンゲージメントなんて言われていた。


――ところがぎっちょん、そんなアメリカの対中政策の曖昧さは、『9・11』ですべてが変わることになった。


その意味で言うと、ポンペオさんが言う「中国をつけ上がらせ、米中間の緊張激化をもたらすお膳立て」になったのって、結局は『9・11』だとは個人的には思うんですよねえ。
彼らはテロリストと戦う為に、結局は第二次大戦のソ連の時と同じように、(今話題のウイグルをテロ組織と見ている)中国と手を結ぶしかなかった。
その後にどのような展開が待っているとも知らずに。
それさえ無ければ子ブッシュ時代までもずっと続いていた対中政策のコンゲージメントな曖昧さは続いていたかもしれない。
面白い歴史のifだよね。


今回も、やっぱり正解しなかったアメリカについて。


みなさんはいかがお考えでしょうか?