再び血染めのシャツを振り合うアメリカ人たち

どちらが先に振り始めたのかと言われると、これまた喧々諤々な議論になりそう。



オバマ氏、選挙不正の主張は民主主義を損なうと批判 - BBCニュース
【米大統領選2020】 これはアメリカの民主主義にとって危機なのか - BBCニュース
ということでマジモンな『民主主義の危機』が叫ばれているアメリカであります。

米大統領選から約10日が過ぎ、民主党ジョー・バイデン氏の当選が確実となってから1週間近くたった状況で、ドナルド・トランプ大統領は自分が負けたという結果をまだ受け入れていない。

これがアメリカ政治にとってどういう意味があるのか、BBC番組「アウトサイド・ソース」の司会、ロス・アトキンス記者が検討する。

【米大統領選2020】 これはアメリカの民主主義にとって危機なのか - BBCニュース

前回通常日記でも少し言及しましたけども、普段は日本のそれを聞いても「ば~っかじゃないの」と思っている僕ではありますけども、まぁ現在のアメリカに関しては割とマジのガチで危険が危ないのは概ねその通りだと同意するしかないなかなあ。


上記BBCの動画でも言及されているように、選挙人団制度によるアメリカって割とガバガバで結構危うい方法でもあるんですよね。
既に見られているように「得票数が多くても負けることがある」「得票数が少なくとも勝てることがある」「僅かな票の差が決定的な結果の違いを産む」単純な数の多寡によらないまるでマジックのような過程による選挙結果。
そりゃ不満が起こらないわけがない。


たとえば今回見事にトランプがひっくり返した、投票後に「潔く負けを認める」慣例も、ただ自己満足ではなくノーサイドを宣言し対立状況をそれ以上続けることなく終わらせることに一役買っていたわけですよ。
そこで敗北宣言が無くなってしまえば、選挙の正当性を疑ってしまえば、両者の対立は永遠に続くことになってしまう。


そもそも論をすると、今のアメリカで見られる極度に分断化されつつある状況が未知の領域かと言うと、まぁそんなこと全くないわけで。
建国直後の政治的混乱によって憲法だけでは足りないと、二極化を招かないような自制心と相互寛容を生み出してきたアメリカ。それでも彼らは結局は二極に分断し、挙句内戦へ陥り50万人以上の死者を出したのがアメリカでもあるわけでしょう。
南北戦争から10年経った当時ですら、こんな政治演説が行われてもいたわけで。

この国を破壊しようとした人間は誰もが民主党員だった。
20年のあいだにこの偉大な共和国が直面した敵は、誰もが民主党員だった。
……この世のものとは思えないひどい飢餓の中でさえも、北軍捕虜に食べ物を与えなかった人間は、誰もが民主党員だった。
貧しく痩せ衰えた北軍のある愛国者は、飢餓によって精神に異常をきたし、正気とは思えない夢の中で母親の顔を見た。彼は熱っぽい頬に母の唇をもう一度感じることを願い、手招きする母親の方に歩いていく。そして、境界線を越えて死の世界へと足を踏み入れる。その鼓動する美しい心臓に銃弾を撃ち込んだ悪党は、民主党員だった。
この状況はむかしもいまも変わらない。

所謂「血染めのシャツ(犠牲者たちのシャツ)」を振り、敵を負かせと政治運動をする人たち。
『9・11』後にも見られた光景でもあります。
ぶっちゃけ上記の民主党共和党に言い換えてもそのまま現代アメリカの二極化政治として通用してしまうことこそ、アメリカの民主主義政治が再び死にかけていることの証左なのだと個人的には思います。
「この国を破壊しようとした人間は誰もが共和党員だった」なんて。
血染めのシャツを振り合う、今も昔も変わらないアメリカ人たち。


だからこそ憲法や法に依らない伝統や慣例といった『不文律』が重要視されてきたんですよね。人びとのはてしない敵対感情を抑制する為にこそ。
そうした無数の慣例と伝統によってアメリカの民主主義政治はなんとか平穏無事に運用されてきた。
それらが「空気を読まない」「前例を無視する」ポピュリストな政治家によって失われてしまえば……。




ちなみに、アメリカの民主党共和党南北戦争という世界最大規模の内戦をどうやって乗り越え再び共存できるようになったのか、という前例を教訓として学ぼうとするならば、
かつてのアメリカは南北戦争の戦争の原因となった、「黒人市民の自由と選挙権」を諦め棚上げし妥協することで、再び共和党民主党はそれぞれ敵ではなく同じ国のライバル政党として再び共存をしていくことができるようになったんですよね。

同書の抜粋を報じたCNNによると、オバマ氏はトランプ氏について、アメリカを率いる黒人への恐怖をあおることで大統領に上り詰めたと記述しているという。

オバマ氏は、「まるでホワイトハウスにおける私の存在が、自然の秩序が乱されたという感覚を招き、根が深いパニックを呼び起こしたようだった」、「ホワイトハウスにいる黒人男性におびえていた何百万人ものアメリカ人にとって、(トランプ氏は)人種的な不安を鎮めてくれる特効薬に思えた」と記しているとされる。

オバマ氏、選挙不正の主張は民主主義を損なうと批判 - BBCニュース

はたして、今回も、以前と同様に何かを見捨てることで、彼らはまた一つのアメリカになれるのだろうか?
あるいは、今回こそ、何も妥協せずに諦めないことで、二極化と分断の更に向こうへプルスウルトラしちゃうことになるのでしょうね?


歴史に学ぼうとするならば、どっちも悲惨な未来しか見えてこないとは個人的に思ってしまうんですよねえ。
二極化するアメリカの民主主義政治の未来について。


みなさんはいかがお考えでしょうか?