「俺たち全員めんどくさい!」

共感性を持つ善き人間である私たちは相手の嫌がることを進んでやるし、
共感性を持つ悪い人間である私たちも相手の嫌がることを進んでやるのだ。



会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問 どんな相手もしどろもどろになる | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
えっ、まって、そんなすばらしい情報が、無料で!?!?!?
――とタイトルに煽られページを開いてみて、あっ……(察し)、となるいつものやつ。我々は今も昔もパッケージやタイトルに釣られてしまうのだ。
ただまぁ日記ネタにはなりそうなので以下適当日記。

組織の中に一定数存在する「めんどくさい人」にどう対処したらいいのか。心理学者の内藤誼人さんは「例えば、会議で議論の本質とは異なる小さなことにこだわり、重箱の隅をつつく質問攻めをする人がいます。そうした人を上手にかわすには元英首相のサッチャーさんの実践例が参考になります」という――。

会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問 どんな相手もしどろもどろになる | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

うん、まぁ、そうねえ。
もし本当に効果があるとしても、ここでそれをネットに広く書いてしまったら、次から相手は当然その対応をしてくるんじゃ……。
相手がバカだと想定するのであればそれでいいかもしれませんけど、でもそんなバカ相手だったらはじめから対応に困っていないし。




結局、世の中――特に対人ゲームにおいては――というのは永遠に続くメタゲームでもあるわけで。
何かしらの有効策は、当然(こちらと同程度には頭を使って考えているだろう)相手がいる以上別の手段で回避され、そしてその別の手段を我々が更に他の手段で回避していく。
この辺の相手が同じ人間だからこそ陥るジレンマなお話については、ゲーム理論やあるいは『ノーフリーランチ定理』としても有名でしょう。

一方、この定理は「あらゆる問題で性能の良い汎用最適化戦略は理論上不可能であり、ある戦略が他の戦略より性能がよいのは、現に解こうとしている特定の問題に対して特殊化(専門化)されている場合のみである」ということを立証している(Ho and Pepyne、2002年)。
ノーフリーランチ定理 - Wikipedia

かくして、都合の良い万能の解答など存在せず、対人ゲームというはしばしば永遠のメタゲームとして回っていく。


例えば、多くのソシャゲが対人要素を導入することでガチャ課金へと誘導させようとするのもそういう構図だよね。
運営側が新規要素を用意しなくても、我々ユーザーたちが勝利を求めそのサークルの中で蠱毒のように無限に争い勝手にメタを回していくから。
まぁ偶にバカな開発運営が「何でも倒せる最強キャラ」をうっかり実装してしまったりもするんですけど。ナーフか次のガチャでのインフレ待ったなし。


ただ「めんどくさい人」という存在というのは私たちの社会とそのメタゲームを考える上で、面白いと個人的には思っているんですよね。
しばしば嫌韓ネタとして使われていた、

韓国「相手が嫌がることを進んでやります!」
日本「相手が嫌がることを進んでやります!」

というのがありますけど、あれって単に恣意的で人種差別的なレッテル貼というだけでなく、我々が持つ『共感性』の本質を正しく表した言葉だと思うんですよね。
――どちらもまず「相手が嫌がることだろう」と私たちが共感する所から始まっている。
相手への嫌がらせも、相手のことを思って手を差し伸べることも、どちらも共感性の表裏一体なんですよ。


めんどくさい人は、まさに正しくその相手に共感することで、めんどくさいだろうと思わせようと行動している。
そして、めんどくさい人の思惑通りに、私たちは「めんどくさい」と思わされている。

ひとつめの方法は、相手の質問に攻撃をする方法だ。

「それは仮定の話にすぎませんよね。仮定の話にはお答えできません」
「その質問は、まちがった前提に立っていますね」
「その質問は、不正確ですね」
「その質問は、いまの状況とは、ぜんぜん関係がないですよね」

などと攻撃すれば、相手の質問はやむ。

つぎの方法は、質問に質問をかぶせる方法だ。

会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問 どんな相手もしどろもどろになる | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン

上記「一発で黙らせる天才的な質問」を惜しげもなく開陳してくれる人も、結局は「自分がされたらめんどくさいと思うことを相手にしよう!」と共感性を基礎にした解答をしているのはちょっと面白いよねえ


ただそんな天才的質問を「めんどくさい人」の側から同じように、質問に攻撃され、質問に質問をかぶされたら、一体どうするの???
――もし自分の側にその解答があるなら、相手にも当然同じ解答があると想定するべきでしょう。
やっぱり都合の良いフリーランチなんて存在しないんだよなあ。
いやまぁ『同じ穴の狢』になってしまえば、両者のメタゲームは膠着状態になり均衡状態にはなるから、解決しているとは言えるかもしれないけど。
(それ以外の他者たちからどう見えるかはさて置く)





ということで今回の件について個人的なマジレスを考えると、悲しいかな『「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問』という銀の弾丸や魔法の杖は存在しない、というクッソつまらないお話になってしまうかなあ。
それは私たちに『知能』だけでなく『共感性』があるからこそ、その揚げ足取りと不毛な争いは無限に続いていく。


なまじ相手に共感能力があるからこそ、我々は「めんどくさい人」にめんどくさいと思わされてしまう。
相手が困ることを進んでやろう、という共感性豊かな私たち。
私たち人間が人間関係を円滑に維持運営していくための共感性が持つ、天使と悪魔。


みなさんはいかがお考えでしょうか?