日本のコロナ再流行を「政治のせい」にし過ぎると生まれかねない『不都合な真実』

「安倍ぴょんの演説シーンでマジ泣きしました!」
歴代総理大臣の中でも最高傑作!!」
「せーのっ、日本の自民党政治ってサイコ~~~!!!」




第3波の急拡大は「国民のせい」か GoToにしがみついた政権の姿勢、「気の緩み」招く | 47NEWS
ということで、いよいよコロナの第三波到来も自明になりつつあって再び「政治責任」が問われる空気となりつつあるようで。
「政治は結果責任!」が大好きな私たち日本人だもんね。

 安倍政権の当時から、政府はこうした国民の行動をしばしば「気の緩み」などと表現して、あたかも感染拡大を「国民のせい」と言わんばかりの発言を繰り返してきた。しかし、そもそも「気の緩み」を積極的に作り出してきたのは政権自身の姿勢だという自覚が、あまりにも足りない。

第3波の急拡大は「国民のせい」か GoToにしがみついた政権の姿勢、「気の緩み」招く | 47NEWS

この方の主張に同意するかはともかくとして、我々「国民のせい」ではなく「政治のせい」である、という主張自体はまぁ理解できなくはないです。


ただ、この人の言うように「政権自身の姿勢だという自覚が、あまりにも足りない」と批判する人は少なくありませんけども、ぶっちゃけその議論って割と諸刃の剣だとも思うんですよね。
今の全世界コロナな時代にそんな論理で政治批判を安易にしちゃっていいの?
この47NEWSを書いたジャーナリストの人、事実上の政権応援団になっちゃってない?



コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域とは-耐性ランキング - Bloomberg
文字通り全世界が同じタイミングで同じ危機に対応しなければいけなくなったことで、私たちは解りやすく目に見える数字で、そのコロナ対応の政策について海外と比較考量できるわけでしょう。
そして更には経済指標や感染者及び死者数の推移といった形で結果まで。
(もちろん現実には気候や他の環境要因などで差異は当然あるものの)世界全体が同時に一つの政治テーマに取り組むことで、必然的にその政治の対応について各国それぞれを相対評価することが可能となっている、かなり異例な、比較政治として興味深い構図じゃないかと。

新型コロナウイルス感染症(COVID19)が世界に広がっている中で、この公衆衛生上の危機をどの国・地域が最もうまく乗り切るかを予想するのは簡単ではない。
  だがブルームバーグは、コロナ禍を最もうまくしのいでいる国を特定するためのデータを算出した。経済や社会に最も痛手が少ない形でコロナに最も効果的に対応している国はどこだろうか。

(中略)

 ランキング2位は日本だが、異なる道を歩んだ。日本にはロックダウンを強制する法的手段がないが、別の強みを素早く発揮した。過去に結核が流行した日本は保健所制度を維持しており、追跡調査が新型コロナでも迅速に採用された。高いレベルの社会的信頼やコンプライアンス(法令順守)を背景に国民は積極的にマスクを着用し、人混みを避けた。

コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域とは-耐性ランキング - Bloomberg

少なくともブルームバーグは――その彼らが設定した価値基準によって――日本は世界で二番目にコロナ対応に成功していると評価している。


大阪府 新型コロナ 新たに210人感染確認 200人以上は8日連続 | 新型コロナ 国内感染者数 | NHKニュース
このコロナ真っ盛りのタイミングで都構想の住民投票に打って出た大坂維新や市長を批判する(概ね真っ当な)声もありましたけど、
コロナで観光業崩壊「ニューヨーク」の悲惨な今 | The New York Times | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
それは例えば世界でもトップクラスのコロナ禍に見舞われながらも、その政治対応が喝采されていた*1ニューヨークのクオモ知事やデブラシオ市長なんかと比較した場合、大坂のそれは一体どのような相対評価になるのでしょうね?
結果責任とは一体……うごごご!






つまり、ここでクッソ面白く愉快な構図が生まれていると思うのは、皮肉にも安倍政権や菅政権のコロナ対応について「政治のせい」「結果責任」と叫べば叫ぶほど、それ以上に事実上失敗している他国の政治家たちの相対評価が悲惨なことになってしまうとも思うんですよね。
それって、相対評価としては一周回って、日本の――安倍政権のコロナ対策を喝采しているようにも見えてしまう。
いやあ自覚の無い自民党応援団がいっぱいいるよねえ。


まぁ自国のことだけにしか興味が無く、自分たちの絶対評価が全てであり客観的で相対的な「世界のランキング」や「国際社会の評価」なんてどうだっていい、という自国ファーストでナショナリストな人たちであるなら、やっぱりそれはそれで一つの生き方だとは思いますけど。


普段から国際社会から目を建前に政策を批判しているなら……、うん、まぁ、そうねえ。


別に「だから日本政治はすばらしいのだ!」とか「日本の政治家たちの愚行を容認せよ」とか言いたいワケじゃ絶対にないんです。*2
しかし日本の状況について「政治は結果責任」「国民のせいではなく政治のせい」と安易に叫べば叫ぶほど、他国のそれを見たときとのギャップは大きくなってしまう。
この辺のコロナ対応の相対的評価としての整合性について、一体どう考えるのかなあと素朴に思ってしまいます。

 安倍政権も菅政権も、感染者数が比較的落ち着いていた時の状況に安住し、再び急拡大するという「有事」の発生を想定できなかった。つまりは正常性バイアスに陥っていたように思う。あるいは、感染が急拡大する前にワクチンが開発され、コロナ禍は「なかったこと」になる、あとは経済のことだけ考えていればいい、そんな淡い「願望」をもとに対策を講じていたのかもしれない。

第3波の急拡大は「国民のせい」か GoToにしがみついた政権の姿勢、「気の緩み」招く | 47NEWS

ならば、日本以上に再び急拡大し「有事」を招いているアメリカやヨーロッパの政権は、日本の安倍政権や管政権以上に、願望を優先している無能でありギルティなの???


まぁもちろん日本のコロナ対策が割と成功しているのは、「国民の献身と努力のおかげである!」とうまく回避することも可能でしょう。
――でもその場合も、「(日本国民と違って)他国の国民が怠惰で不潔な劣等民族だからである!」というレイシストな主張にかなり近づいてしまうんじゃないかとも思うんですけど。
勤勉で清潔好きな日本社会はコロナ危機に上手く対応して、どう見ても失敗している欧米諸国の社会は日頃から不潔で怠惰だから失敗したってこと???
更には日本よりも政治が上手くいっている(はず)なのに、政治に足を引っ張られている日本以上に失敗しているなら欧米社会の文明人しての評価とは一体……。
まぁドイツでハイキングをしている人のように、「ヨーロッパのコロナは変異しているので日本のそれとは単純比較できないのだ!」とウルトラCを決めてみてもいいですけど。


ひたすら愚かで無能な日本の政治家たちと、知性と理性あふれる欧米政治家の、コロナ危機の政治責任として見る相対評価について。
「国民のせい」か「政治のせい」か。
やっぱり、どちらを口にしたとしても割と愉快で面白いオチに辿り着いてしまうんじゃないかと個人的に思うんですよね。
世界同時に起きているコロナ危機を見渡した時に、安易にそれを口にしてしまうのってかなり繊細なポリコレ的配慮が必要とされるんじゃないかなあ。
僕には無理そう。



みなさんはいかがお考えでしょうか?
 
 

*1:米で人気急上昇、クオモ・ニューヨーク州知事がこの1カ月でやったこと。感染者76人で緊急事態宣言 | Business Insider Japan

*2:僕もGoToのそれを見てこの人たち迷走しているなあとしみじみ思ってます。かといって経済かコロナかのトレードオフにおいて、他に代案があるのかと言われると特に思いつかないので、迂闊なことは言えずお口チャックしていますが。