「国家の伝家の宝刀vsフェイスブック」の先にあるかもしれないもの

ゼネラルリソースもニューコムも無い世界なんてつまらなすぎる。


米当局、フェイスブックを独禁法違反で提訴 インスタなどの売却要求 - BBCニュース
コラム:提訴されたフェイスブック、重要なのはユーザーの心象 | ロイター
フェイスブックを提訴 反トラスト法違反の疑い 米当局と各州 | IT・ネット | NHKニュース
ということでフェイスブックが提訴されているそうで。

連邦取引委員会(FTC)と45の州の司法長官は9日、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでフェイスブックをワシントンの連邦地裁に提訴した。「インスタグラム」や「ワッツアプ」などライバル企業を買収し、競争を阻害したとしている。

米当局、フェイスブックを独禁法違反で提訴 インスタなどの売却要求 - BBCニュース

うーん、まぁ、そうねえ。
個人的な最も影響を受けたゲームの一つに『エースコンバット3』があるので、当日記でもしばしば、「国家を超越した(私設軍隊まで持つ)超大企業が現れる未来社会が全然やってこな~~~い!」的ネタを用いる僕ではありますけども、ゼネラルリソースもニューコム何故生まれないのか、そのマジレスについての身も蓋もないお話だよなあと。


つまるところ、現代世界ではこの国家による反トラスト法――『独占禁止法』が強力すぎるからなんですよね。
「競争が排除され消費者に悪影響が与えかねない」という大義名分を盾に、国家を越える権能を持ちかねない巨大企業たちを、文字通りの意味で、一刀両断し分割してきた伝家の宝刀。


近代以前には東インド会社など存在していたものの、今ではもうその存在すら許されなくなっている国家を超えるほどの力を持った大企業たち。
まぁそれってつまるところ主権国家化から始まった『国家』が近代以降それ以上に強くなった、というお話でもあるわけで。
パワーの源泉である、暴力装置、徴税権や通貨発行権*1、そして法規制、どれも国家に独占されてしまった。


機械が人を支配するのではない、それを使って悪意ある人が人を支配するのだ - maukitiの日記
前回日記でも書いたような、中国の企業支配の構図は見ていてわかりやすいですけども、まぁそれって今回のアメリカを筆頭にGAFAを目の敵にして規制しまくっているヨーロッパでも構図は同じなんですよね。
逆説的に、後進国なんかで「外資企業がやりたい放題している」なんて話がよくありますけども、あれってほとんどそのまま弱体な現地政府の存在とイコールでもあります。
独占禁止法と規制強化をちらつかせては、資産価値としてはその辺の中小国家を優に超える規模を持つはずの現代の世界的大企業たちの頭を押さえ続けている現代国家たち。
どれだけ国家による横暴であろうとも、独占し価格支配までするようになってしまっては「消費者である国民の利益」が損なわれる、という絶対的な大義名分を盾にして。





ここで面白いのは、まさにフェイスブック――ザッカーバーグが概ね善意から目指しているように、みんなが同じサークルに集まれば=独占されればより親密で豊かな交流が可能になる、と考えている点でしょう。
つまりここでは独占こそが私たちの利益になる、かもしれない。

フェイスブックは少なくとも、出発点では優位に立っている。反トラスト法に違反していようがいまいが、数十億人のユーザーは喜んでサービスを使い続けている。ザッカーバーグ氏が自身と株主のためにできる最善の策は、なるべく身を低くしてこの状態を維持することだ。

コラム:提訴されたフェイスブック、重要なのはユーザーの心象 | ロイター

そして実際に、それを利用している少なくない私たちも、そのように考えている。
ミクロな個人敵生活で「何でアナタは同じSNSを使ってないの?」なんて素朴な問いが無限に繰り返されているように。
そうそう、「いいね!」が欲しい私たちも、SNSは独占されている方が望ましいよね!


その意味で言うと、今回のフェイスブックを矛先にした独占禁止法の適用って、これまでとはちょっと趣の異なる構図になるんじゃないかとはと思っているんですよね。
はたして、今回のフェイスブックの独占支配を突き崩さんとするアメリカ政府の思惑は、「国民の利益」という大義名分に適うだろうか?
消費者である「サークルを完成させろ!」と叫ぶ人びとは、今回の件を受け入れられるだろうか?


もしそれが受け入れないと大きな反発を生む時、その先にあるのは独占禁止法という伝家の宝刀の陳腐化による、国家を超える企業が再び誕生するかもしれない可能性でもある。
独占禁止法と、巨大IT企業の未来について。


みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:この文脈からビットコインが脱国家世界の嚆矢と言われていたんですよね。