私たちは「反対意見」をどこまで無視できるだろうか?

あるいは、どこまで無視すべきなのだろうか?



イギリスとEU、通商協定で合意を発表 その時の表情 - BBCニュース
イギリスが漁業でEUに巨大な譲歩。最後まで残る紛争解決とセーフガード問題:ブレグジット(今井佐緒里) - 個人 - Yahoo!ニュース
ということで、結局漁業権交渉で死ぬほどモメていたらしいイギリスとヨーロッパであります。


昨今の本邦でもウナギを筆頭に、もちろん他人事ではなく「漁業は私たちにとってとても重要なのに、何で解決しようとしないんだ!」と嘆き怒る声があったりしますけども、まぁ今回のブリグジット交渉を見ていても解るように、むしろ逆なんですよね。

漁業問題は、双方にとって全体的には経済的な比重が低いにもかかわらず、フランスだけでなく、オランダ、デンマークアイルランドを含むいくつかの加盟国にとって、政治的、社会的に重要な役割を果たしてきた。

どの国にとっても、漁業従事者の失業に直結する問題であり、漁場を失うということは、会社員が別の会社に勤めればいいという問題とは異なる。

それに、英国にとって「領土問題」と化しているだけではない。どの国にとっても漁業は文化や歴史につながる問題なのである。

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国家全体から見れば極一部でしかない人たちにとって漁業は死活的に重要だからこそ、政治的合意が難しくなってしまう。
そのことを議論するのは別にいいんですが、その不作為の原因について、どうでもいいから漁業管理が放置されているのではなくて、むしろ問題が複雑すぎて手に余る故に放置されている(ことが多い)、という点は忘れるべきではないよなあと。


皮肉にも民主主義社会であればこそ、私たちはその漁業関係者たちの反対意見を安易に無視することなど、とてもできない。

中国・長江の漁業資源保護へ10年間禁漁…ダム建設続き、実効性に疑問も : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン
一方で、民主主義政治に生きる私たちのそんなジレンマをここでも軽々と越えているのが中国なんですよね

 中国政府は来年1月1日、中国最長の河川である長江(全長約6300キロ・メートル)で10年間の禁漁措置を始める。急減している漁業資源の保護を理由とし、流域で働く漁師計約30万人に失職を迫ることになる。漁獲減の根本的な原因とみられているダム建設は続いており、禁漁の実効性に疑問も出ている。(湖北省荊州 南部さやか)

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民主主義政治と比較した、権威主義の大きなメリット。
環境保護という大義の為ならば、(愚かな)反対意見は無視することができる。
漁業資源保護の為にあっさりと10年間の禁漁措置を押し付け、「30万人の漁師たちに失職を迫る」なんてことが私たちの民主主義社会でできるとはとても思えないよねえ。
プログラムを学べばいいのでは??? なんて。そしてトランプ旋風へ。



ということで民主主義政治に生きる私たちは、今回の日記タイトルにあるような根本的で素朴な疑問に立ち戻ることになる。
絶対的に正しいとされる目的のために、反対意見を無視することは許されるだろうか?
そしてその「正しさの度合い」は一体どれくらいだろうか?
反対意見を説得する時間があるならば、まぁ好きなだけ反対意見を持つ人たちを説得してればいいんですよ。
……しかし、もし、今、家が燃えているので、喫緊に行動しなければならなくなったら?


今回の件は、『漁業』の問題ではありますけども、気候変動問題でグレタさんなどが叫ぶ「家が燃えているように、今すぐに行動し生活を変えなければならない」ということは、つまりこういうことでもあるわけでしょう。
「パリ協定」5年を前にグレタさん「必要な対策 進んでいない」 | 環境 | NHKニュース
温暖化対策、グレタさんが危機感 「誤った方向に進んでいる」:東京新聞 TOKYO Web
生意気な子供だと批判されがちな彼女ではありますけども、私たち大人のものすごく痛い所を突いているという点で、個人的には好意的に見ている面白い人物だと思っているんですよね。


つまるところ彼女は民主主義社会に生きる私たちこう言っているわけですよ、「気候変動問題は今すぐ行動しなければならないので、(権威主義的に)反対意見は無視し、今すぐ行動すべきである」
本人が意図しているのかしていないのかまでは解りませんけど。


漁業資源保護や気候変動問題、あるいはコロナ対策でも、
はたして民主主義政治に生きる私たちは、中国のように数十万人おそらくそれ以上の人たちに失職を迫るような非情な決断ができるだろうか?
もし、仮にそのように反対意見を無視し強行した時、それでも私たちの民主主義制度は以前のようにやっていけるのだろうか?


みなさんはいかがお考えでしょうか?