世界でいちばんリベラルきぎょうさま

我々が諦めてしまいつつある普遍的価値観を実践している有望企業による、『文明の衝突』の実例。


ツイッター、在米中国大使館のアカウント凍結 ウイグル巡る投稿で | ロイター
ツイッター アメリカにある中国大使館のアカウントを一時停止 | NHKニュース
ものすごく面白い展開になっているなあと思っているニュースであります。

ツイッターは、アメリカにある中国大使館の新疆ウイグル自治区をめぐる投稿が人間性を否定する投稿を禁じた会社の規定に違反するとして、大使館のアカウントを一時停止したことを明らかにしました。

アメリカのメディアによりますと、中国大使館は今月、新疆ウイグル自治区の女性たちが解放され「もはや子どもを産む機械ではなくなった」とする内容の記事を紹介し、その後、ツイッターはこの投稿を閲覧できないようにする措置を取りました。

ツイッター アメリカにある中国大使館のアカウントを一時停止 | NHKニュース

先日のトランプ大統領のアカウント凍結事件と併せて、言論の自由的な構図から議論されていたりしますけども、
個人的にwktkしてしまうのはむしろこうしたリベラルな欧米的価値観の『実践』を、一企業であるtwitterが本気でやってしまっている点だと思うんですよね。


普段はリベラルなことを言っているくせに、かつて発明した『人道に対する罪』に相当するような、特定民族を狙い撃ちにしたウイグルの問題については途端に言葉を濁してしまう自称リベラルな私たち。
――でもまぁ、それを一方的に責めるのもあんまりフェアではないと思うんですよね。
だってそんなダブルスタンダードは、経済的合理性や、リアリズムとしてはまったく正しい態度だもん。


ここで中国共産党政府に対して口汚く罵ったところで何も解決しない、というのはその通りなんですよ。
ただ「悪いことをしているぞ!」と批判して解決するなら話は簡単だったのにね。でも絶対にそうではない。
いや、むしろ、批判することでより問題が悪化してしまう可能性だってある。中国と対立するより、協力関係を築くべきである。頭のおかしい一部反中ネトウヨを除けば、実際に2010年代の半ばまではそういう論調が主流トレンドだったのも間違いないでしょう。
そうやって中国が経済発展を遂げるまで様子を見ておけば『責任あるステークホルダー』になってくれるかもしれない。
更には民主化までワンチャンあるでこれ!


……でも、悲しいことに、そうはならなかった。
かくして、目的自体は失われたもののかつてあった「中国に投資しコミットすることで、グローバルな世界経済の一員に取り込む」という手段だけが尚も実践され続けている、これ以上ないほど歪な現代世界が移行期として爆誕している。
ウイグル人強制労働防止法案に「反対」 ナイキなどロビー活動 - 産経ニュース
ウイグル人の強制労働に、多くの世界的企業が間接加担か | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
ラコステとアディダス、ウィグル人「強制労働」の排除を約束 : サプライチェーンの精査を表明 | DIGIDAY[日本版]
Appleは「ウイグル人強制労働防止法」に反対するロビー活動を展開している - GIGAZINE
その挙句が、いま私たちが現在進行形で目にしているような、普段はリベラルな価値観を高らかに謳っているくせにウイグルの人権問題にはまったく沈黙するだけでなく事実上その協力関係になっている現代のグローバルな大企業達でもあるわけでしょう、。

「動かしつづける。自分を。未来を。」※ただしウイグル強制労働問題は除く

人種差別問題に敏感なグローバルな大企業たちの冷徹 - maukitiの日記

自分たちに都合が悪いので、ウイグル問題は固定化され続けてほしいと内心願っている人たち。




ところがぎっちょん、そんなアップルやナイキのようなまぁevilな企業たちとは裏腹に、堂々と彼らの悪事を批判するTwitter社がここにあるわけですよ。

同社の広報担当者は21日、「問題のツイートについて、人間性の剥奪を禁じる規約に違反したため措置を講じた。この規約では信教や社会階層、年齢、障害、病気、国籍、人種、民族を理由に特定の人々の人間性を奪うことを禁止している」と説明した。

ツイッター、在米中国大使館のアカウント凍結 ウイグル巡る投稿で | ロイター

人種差別に反対しているはずのアップルやナイキなどが、中国がウイグルで「人間性をはく奪」「ジェノサイド」していることに事実上沈黙していることを考えると、このtwitterの行動は画期的であると評する他ない。
措置を講じていない上記グローバル企業たちへのあてこすりかな?
いやまぁ人種差別には反対するけれども、国連が定義するところのジェノサイドはセーフですというのならば、論理の一貫性はあるのかもしれませんけど。


様々なしがらみから――それ自体は国際関係のリアリズムや経済的合理性としてはまったく正しい――各国政府や国連などの国際機関、他のグローバルな大企業たちがアレコレ建前を述べながら、結果として中国のウイグルなどでの行為を事実上の黙認をする一方で、しかしtwitterはこうして「リベラルな価値観に反している」という理由で中国大使館のアカウントに直接挑戦状を叩きつけている現状。
いやあ『文明の衝突』の最前線という感じでwktkしてくるよねえ!
皮肉にも中国の市場から締め出されているが故に、自由に『文明の衝突』に突っ走ることができているtwitter
しかし彼らのこの「措置」こそがより対立な方向へ導くことも間違いないでしょう。


今回の件ってそうした「ほかの文明との価値観の相克にどのように対応すればいいのか?」ということを改めて考えさせられるニュースだと思うんですよね。
同じ価値観を持つ文明圏だったら、かっこいいCMと一緒に人種差別反対などとキメ顔で言っていればいいんですよ。


しかし、もしそれが中国やイスラムなど、まったく異なる文化を持つ社会だったら?
――普段のキメ顔とは裏腹に言葉を濁して沈黙するべきなのだろうか?
――あるいは今回のtwittrのように衝突することを覚悟でそれを批判するべきなのだろうか?


まぁそこで躊躇ってしまったら、人権という『普遍的』な価値観の存在を信じるリベラルの自己矛盾になってしまうんですけど。その意味で、僕はこのtwitterの措置こそ、もっともリベラルな態度であると考えています。
それが世界平和につながるかというと、まったくの別問題だとも思いますけど。



私たちは正義のためならば、文明が衝突することも許容するべきなのだろうか?
みなさんはいかがお考えでしょうか?