『(自国第一主義者たちの)諸国民の春』

自国第一主義なトランプ旋風は、旧体制を破壊する始まりになるのだろうか?



WHO、ワクチン輸出制限めぐりEUを批判 - BBCニュース
ということで、すっごく面白い展開なので、通常日記でもよく言及しているワクチン争奪戦なお話。

WHOのマーガレット・ハリス報道官は30日、BBCに対して、これまでに実施されたワクチン接種の95%はわずか10カ国に集中しており、接種が始まった低所得・中所得の国は2カ国のみだと指摘。それだけに、接種事業が進んでいる先進国が感染リスクの比較的低いグループへの接種を開始する前に、全世界の医療従事者は高リスク・グループへの接種を実現するべきだと、報道官は強調した。

WHO、ワクチン輸出制限めぐりEUを批判 - BBCニュース]

まぁやっぱり『宇宙船地球号』的な考え方としては正しいよね。
ワクチンは「国境超えて(ここ重要)」優先順位によって接種すべきであって、富裕国内でのリスクの低いグループは、後回しにされるべきである。
結局、私たちは『国の境目が生死の境目であるべきだ』と考えていたのだろうか? - maukitiの日記
まさに『国の境目が生死の境目であってはならない』のだから。


でも、本当に、私たち日本含むアメリカやヨーロッパの民主主義政治家がそれを言えるのかというと……、
まぁご覧の有様だったわけでしょう。
口にできないどころか、むしろ率先して「カネのある我が国がより多くワクチンを確保すべきである!」と叫んでいる現状ですらある。
本当に国民に危機が迫った時、そこで起きたのは、ほぼすべての国家が自国民を優先させている。
まるでトランプのように。
コロナ対応の失敗によって敗北したトランプが、コロナによって彼の言っていたことが一足遅れて主流となりつつある現状というのはホント面白い構図だよねえ。



普段からトランプ支持者たちのように、「自国を優先すべきである!」「ジャパンファーストだ!」とか言っているならば、別にそれはそれで一貫性があるんですよ。
他国よりも自国民こそが優先して救われるべきである。
まぁ結局トランプが言っていたこともそういうことだよね。
なので何故か本邦にも少なからずいたトランプ支持者たちがそれを言うのはまったく不思議ではない。
「自分の国にワクチンを優先しろ!」と。


――しかし、もし、これまで、トランプの自国第一主義的行動を批判していたのだとしたら……。
トランプ政権時代に散々見られたアメリカの自国第一主義的行為への糾弾って一体なんだったの???



元祖『諸国民の春』のように、これまでグローバル化と国際主義を大義名分に国を越えたエスタブリッシュメントたちによって抑圧されていた民衆が、自国第一主義をあからさまに叫ぶようになっている2021年。
確かに絶対主義国家の協力体制である『ウィーン体制』がそうであったように、現代もグローバル化と国際主義による自国第一主義の抑圧が世界に平和と安定をもたらしていたのは間違いないんですよね。
しかし、民衆の切なる願いが、そうした国境を越えて協力するという建前を破壊しつつある。
自国こそを優先すべきであると。

WHO、ワクチン輸出制限めぐりEUを批判 - BBCニュース
新型ウイルスワクチンの公平配分、「壊滅的な失敗」の瀬戸際に=WHO - BBCニュース
だから今のヨーロッパやアメリカの政治家や、あるいは日本の政治家でも、手の平を返して自国第一主義者になっているのも別にそれ自体は責められることでもないと思っているんですよね。
だって、他ならぬ私たち有権者たちの民意として「自国民にワクチンを優先させろ」と思っているんだから。
ワクチンを買い占めようとしている政治家は、真摯に民意に応えているに過ぎない。


私たち日本でも、医療従事者なグループから先に接種をするのは同意できるとして、ではその次に日本以外の国の医療従事者にワクチンを優先させることを私たちは許容できるだろうか。
そしてそうした行為を自国第一主義だと国連やWHOから批判されたとき、私たちは一体どのように答えればいいのだろうか。


コロナ禍で徐々に明らかになり、ワクチン争奪戦では弁解しようがないほどあからさまになった、自国第一主義的な私たちの振る舞いについて。
次のトランプが現れたとき、もうその自国第一主義的行動への批判に説得力はなくなってしまった。
中国やロシアの行為を笑えなくなってしまった。
結局、トランプこそが――まさにトランプ支持者たちが言っていたように――政治の『真実』を語っていたことになるのではないだろうか?
メルケル独首相、2021年に首相退任と表明 地方選連敗で - BBCニュース
現代でメッテルニヒに値するかもしれないメルケルさんが退任するとき、はたして現代のウィーン体制=国際秩序は一体どうなってしまうのか。
いやあ歴史のダイナミズムを感じられる展開でwktkするよねえ。


コロナは再び、世界に『諸国民の春』をもたらすのだろうか?


みなさんはいかがお考えでしょうか?