今ふたたび、スポーツに政治的意見を持ち込むことについて問われている私たち

大坂なおみさんはほんとうに世界を変えたのか、確かめられる時が。




ジョンソン英首相、北京五輪ボイコットに否定的 ウイグル問題めぐり - BBCニュース
元国連大使も米の北京五輪ボイコット主張 共和党の要求高まる 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでウイグル問題は、政府批判につなげる野党のおもちゃになっているそうで。

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は、大虐殺が「私たちの目の前で起こっている」とし、イギリス代表チームの北京大会の参加取りやめを求めた。

ジョンソン首相は、イギリスが「中国に責任を問うための、国連での国際的な行動を主導」していると説明。イギリスは「通常」、スポーツ大会のボイコットを支持していないと述べ、デイヴィー氏の呼びかけをはねつけた。

ジョンソン英首相、北京五輪ボイコットに否定的 ウイグル問題めぐり - BBCニュース

北京五輪をめぐっては、共和党上院議員7人が2月に開催権剥奪を求める決議案を提出し、「人権を認め尊重する国で」開催できるよう国際オリンピック委員会IOC)に対して誘致のやり直しを要求。同じ日には約180の人権団体などもボイコットを求めた。

 また前週には、共和党のジョン・カートコ(John Katko)下院議員もボイコットを求める書簡をジョー・バイデン(Joe Biden)大統領に送った。

 米政府は今のところ、北京五輪に出場する意向を崩していない。(c)AFP

元国連大使も米の北京五輪ボイコット主張 共和党の要求高まる 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

ただまあ、上記イギリスもアメリカもそうしているように、政府側としては実際の問題解決には繋がらず、象徴的な意味しか無い以上、アスリートへのペナルティにしかならない、という立場なのはまぁその通りだよね。
実際、1980年のモスクオリンピックのボイコットがその問題解決につながったかと言うと、まぁそんなことなかったわけで。
むしろ次への報復を惹起した点で、国際関係をより悪化させたとすら言えるかもしれない。


ただ、ボイコットを叫ぶ人たちの気持ちも理解できるんですよね。
――それは実際には、無力感の裏返しでもあるから。
そうすることで彼ら彼女らは自分たちの良識・倫理観に誠実なのだと自己弁護することができる。いやまぁただただ、政権批判のネタに飛びついていると冷笑することもできるんですけど。
BLMで散々指摘されていたように、だって「沈黙することは裏切り」になるのだから。



つまり、なまじ『ジェノサイド』と国際世論()に認定されつつある現状というのは、裏を返せばその強い言葉に見合うだけの行動が求められている。
その『悪』認定が巨大であればあるほど、対応の踏み込みも相応のモノにならなければならない。
――で、実際に何ができるかというと……、やっぱりアメリカ(あるいはオーストラリアやカナダあたり)の中国排除な動きがせいぜいでしかない。
私たち日本を筆頭に、まさか中国にそこまで強い反発をすることができないのが大多数である。


結果として、今起きているのは「これは正真正銘のジェノサイドや!」と叫ぶだけ叫んでみてもまるで行動が伴わない間抜けな私たちである。
いやあザ・口だけで悲しくなってしまうよねえ。
でもそれも薄々解っていた展開でもあったんですよね。だからこそ、これまで1940年代のナチスや1950年代のソ連相手にやっていたように、あるいは『北の楽園』を讃えていた私たち日本人のように、、私たちは中国の人権侵害を見て見ぬフリを続けてきた。
ただただ、これまでと同様に、色々あって暴露されてしまった現在では、見て見ぬフリを続けられなくなってしまったというだけ。
中国さんもジェノサイドするならもっとうまくやってくれればよかったのにね。


ところが、そこに一筋の光明を見出せるネタが見つかったわけですよ。
それこそ、オリンピックボイコット運動である。
政治的主張が『基本的には(ここ重要)』許されないスポーツに敢えてそれを持ち込むことで、緊急性の高い重要なメッセージを送ることに繋がるのだ。
ここで本当に皮肉で面白いのは、1980年のモスクワ以降、その過ちを繰り返すまいとオリンピック委員会が政治と距離を置こうとしてきた努力そのことが、よりスポーツでの政治的発言の希少価値を高めている点だよね。
故に、だからこそ、スポーツで行う政治抗議としてはこれ以上ないほどわかりやすい!
一発逆転ホームランや!
(やっぱり実際の問題解決に意味があるとは言ってない)




チキチキ! ならばスポーツ大会で「許される」「許されない」政治的主張のラインはどこなのか選手権! - maukitiの日記
かくして私たちは、去年黒人の人権問題で大坂なおみさんが見せていた「スポーツでの政治的意見の表明」の是非について、そのポジションの一貫性と誠実さを問われることになる。このmaukitiとか言う人、去年の9月時点で良い日記書いてる!

もし今回のように「黒人の人権を守れ!」が許されるならば、
ウイグル人たちの人権を守れ!」とスポーツ大会で言う事も許されるの?
この大阪さんの『勇気ある発言』の後ろには――もちろんそのことが彼女個人の責任に帰するわけでは絶対にない――世界中に無数にあふれている『人権蹂躙に関する政治的主張』の是非について、我々の態度が問われることになる。
その意味で、確かに、勇気ある彼女は世界を変えようとしている。

チキチキ! ならばスポーツ大会で「許される」「許されない」政治的主張のラインはどこなのか選手権! - maukitiの日記

以前反対していた人も、以前賛成していた人も、今回の「ウイグル問題を理由にしたオリンピックボイコット(あるいは五輪表彰台での政治意見表明)」について、今再び考える時だと思うんですよね。


そこに一貫した意見があるのならば、まぁ誠実であると誇ってもいいんじゃないかな。
「それはそれこれはこれ」言うのであれば、まぁ今後も自分のポジションに都合のいいように融通無碍に生きていけばいいんじゃないかな。一つの正義に固執するのって疲れるもんね。


今ふたたび、スポーツに政治的意見を持ち込むことについて問われている私たち。
オリンピック参加自体のボイコットや、オリンピックの表彰台で黒人問題やウイグル問題についての意見を表明するアスリートたちを見たいだろうか?
個人的には、中国と西側人権先進国が、同じ表彰台の上でウイグル問題でそれぞれ別のポジションを表明したら、クッソ愉快なことになると思うのでちょっと見たい混沌ラバー派かなあ。政治的中立なオリンピックとしては終わりだけれども。


東京オリンピックが控えている(ことになっている)、みなさんはいかがお考えでしょうか?