「モラトリアム欧州の時代」のおわり?

「戦うべきか、戦わざるべきか」
先日のそもそも独裁者プーチンに『非暴力抵抗』は国内で通用しているのか問題 - maukitiの日記の続き的日記。




ウクライナ侵攻を予言した教授、次の予測は「ロシアは弱い国になる」 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル
ウクライナ侵攻の予言はともかくとして、しかしこの方の言っている変わっていく欧州という論点はすごい面白いなあと。

ジェットコースターは、大きな急降下をしたところですが、この先、何回の急降下があるかは分かりません。私は66歳ですが、この戦争(ロシアのウクライナ侵攻)はおそらく私の人生で最も重要な戦争となる。結果にもよる面もありますが、欧州のみならず、アジア、世界秩序にとって記念碑的なできごとになるでしょう。

――欧州にとどまらない重要さとは?

 この戦争は第一に欧州の安定にとてつもなく重要な意味を持ちます。それにとどまらないのは、隣国による侵攻で国を破壊される事態に直面した際に、国の存在を守る権利があるのか、という問題が改めて提起されたことです。

 自由な人々が自分たちの生存権のために戦い、自由を勝ち取ろうとしている姿は、私たちの心を揺さぶります。世界中の国々で人々が鼓舞されている。ロシアが苦戦する姿は、中国をはじめとする国には警告にもなります。

ウクライナ侵攻を予言した教授、次の予測は「ロシアは弱い国になる」 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル

変わる欧州、というのはやっぱり今回のウクライナ侵攻における「プーチンの暴走」「ウクライナの覚悟」そして「ヨーロッパの変化」と並べる位には重要なテーマではありますよね。


戦うべきか、戦わざるべきか ウクライナ侵攻が問う戦後日本の平和論 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル
先日の日記で引用した朝日新聞の記事に「戦うべきか、戦わざるべきか ウクライナ侵攻が問う戦後日本の平和論」というタイトルが付けられていましたけども、問われているのは我々日本だけじゃなくて、それは欧州も同様なんですよね。
――いやむしろより距離的に近接している分彼ら彼女らの方がずっと当事者意識が強いとすら言える。
そこで想田先生は「戦わない」という主張なさっていたわけですけども、その一方で少なくとも「戦う準備はしておく」という覚悟を完全に決めつつあるのが現在のヨーロッパ諸国の状況でもあるわけで。


先日の日記でも書きましたけど、別にヨーロッパとは違う答えを出している想田監督のような『降伏』という選択肢が悪いと言うわけじゃないんですよ。
少なくとも何も決めずに「対話」や「外交努力」など実質何も言っていないようなモラトリアムな態度よりは、何かを決断しているという点でずっと誠実であります。
すなわちエドワード・ルトワック先生流に言えば、国家の安全保障を考える上での基本戦略としては『降伏』『先制攻撃』『抑止』『防衛』の4つがあるわけで。そこで彼はシリア内戦を例に、あるかどうかわからない(実際になかった)国際社会の支援をする位なら、反政府勢力はさっさとアサド政権に降伏すべきだったと指摘しているんですよね*1
その意味で、おそらく国際社会(あるいはアメリカすらも)は日本を助けてくれないだろうというポジションに立つならば確かに『降伏』は一つの選択肢ではあります。
人道主義的であろうとする想田監督が結果として、ガチガチな国際関係論の大家であるルトワック先生と同じ事を言っているのはホント面白い構図だと思ってます。



つまるところ、日本だけでなくヨーロッパに住む平和を愛するリベラルな私たちが、特に冷戦後から今まで「対話で解決できる」「国際社会が助けてくれる」と言いながらも実質何もしないモラトリアムな時代を過ごしてきたのは、まぁ概ね間違っていない指摘ではあるのでしょう。
ところがロシアが変わり、ウクライナは戦うことで国際社会(=欧米)の支援を得ることで、いよいよヨーロッパは変化しつつある。
ウクライナ侵攻受け「防衛費増額」 自民、提言案了承 軍拡競争懸念も | 毎日新聞
防衛費「GDP2%」に否定的 山口公明代表:時事ドットコム
はたして日本はどうなるんでしょうね?


「戦うべきか、戦わざるべきか」
平和を愛しながらも、その覚悟を決める、その準備をしておく、というのはなかなかジレンマな難しいお話ではありますよね。個人的には、再びモラトリアムに逃げ込むくらいなら日本には「ヨーロッパはもう飛び込もうとしていますよ」とアドバイスはしたくなるかなあ。
みなさんはいかがお考えでしょうか?
 
 

*1:『戦争にチャンスを与えよ』