「フリー防衛費の時代」のおわり?

私たち日本も「あの時代は実質タダで防衛できてよかったなあ」と懐かしむ時代がやってくるのだろうか。


防衛費増額「GDP比2%以上」 賛成55%、反対33%: 日本経済新聞
割と衝撃的な数字が出てきた感。軍靴の足音が聞こえるね。
防衛ジャーナリストが自衛隊に「火事場泥棒」発言 元司令官「許せません」/芸能/デイリースポーツ online
うーん、まぁ、そうねえ。

 安全保障に関する自民党提言の中で防衛費について「GDP比2%以上を念頭にする」という案が出てきた。2021年度はGDP比1・09%となっている。ロシアのウクライナ侵攻で防衛に対する意識が変わってくるタイミングでの提言。香田氏は「この時期に『反撃能力』(敵基地攻撃能力の言い換え)と2%。問い詰めれば根拠なき2%と言っていいと思うんですけど、自民党がこのタイミングで出すというのが政治的な戦略が欠けていたかな」と苦言を呈した。一方で「予算を配分した時に、何%が適切かということは政府と自民党は建設的な意味として(話し合いを)やるべきだと思う」と現実的な議論の必要性も説いた。

 ここで半田氏は「『反撃能力』っていう言い方と今回のウクライナ侵攻が重なって見えるわけですよね。しかも突然GDPの2%を出したわけですから、ウクライナ侵攻に乗じて今まで実現できなかったことを一気呵成(かせい)にやっていこうと、言葉は悪いですが火事場泥棒のような印象を国民に与えかねない」と厳しく批判した。

防衛ジャーナリストが自衛隊に「火事場泥棒」発言 元司令官「許せません」/芸能/デイリースポーツ online

その数字の中身が実際にあるかどうかともかくとして――後述するように僕もそこまで厳密な中身があるわけではないという点には同意するものの――しかし、その「2%」という数字が、突然、出てきたわけでは絶対ないよね。
NATO事務総長「ドイツは防衛費支出の公約順守すべき」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
国防費のGDP2%達成、11カ国に増加 NATO報告書: 日本経済新聞
それこそここ数年の、今の戦争の当事者となりつつあるNATOではずっとのその防衛費2%ラインが議論され続けてきたのだから。
我々は自らの集団安全保障体制にコミットしており、その結束は揺るがないという言葉にとどまらない行動の最初の一歩として。
であればこそ単純にアメリカの要求だけではなく、その中身のない数字目標はNATO加盟国全体の目標としてきたわけだし。


NATO各国それぞれ事情が違うにもかかわらず何故その「2%」という数字が言われてきたのかというと、それはまぁ身も蓋もなく言えば「見栄」であり、良く言えば相手への「メッセージ」でもあるからなわけでしょう。
それはやっぱり言葉だけじゃ伝わらないメッセージでもあります。
意志ではなく能力を示すことこそが。
その意味で、上記軍事ジャーナリストさんが仰っているように、確かに問い詰めれば根拠なき2%だという指摘にも一理あるんですよ。まぁとりあえずGDPの2%を防衛費に注ぎ込んでいるのであれば一定以上の軍隊を持っているだろう、なんて。

日本の歴代内閣は1%以内に抑えることを目安としてきた。岸田文雄首相が就任した直後の21年衆院選で、自民党は2%以上を念頭に増額を目指すと掲げた。防衛白書(21年版)によると、各国が公表している予算額に基づく分析で米国は20年度に3.29%、ロシアは3.09%だった。

米欧30カ国で構成する北大西洋条約機構NATO)は加盟国に2%以上の水準を求める。

防衛費のGDP比とは NATOは2%以上要求: 日本経済新聞

しかし、おそらくその数字基準は概ね世界に受け入れられている数字でもある。




ともあれ、こうして日本にまで波及してきた火事場泥棒()なNATO2%目標が広まったそもそもの原因と言えば、まぁクリミア併合でもあったわけで。
トランプ氏、NATO加盟国の防衛支出増を要求 ドイツを名指し批判 - BBCニュース
そしてそこからその負担費をめぐってのNATO内でのアメリカとの不協和音な構図が生まれるわけであります。クリミアがあったにも関わらず、防衛費を増大しようとしないドイツどの関係に好機を見出したトランプによってむちゃくちゃに。

しかしその後、ツイッターではドイツを含む同盟国への非難を繰り返し、「ドイツがロシアのガスとエネルギーに何十億ドルも払っているようでは、NATOは何の役に立っているのか。どうして29カ国中5カ国しか約束を守っていないのか? 米国は欧州の防衛のために金を払って、貿易で何十億ドルも失っている。2025年まででなく、今すぐにGDPの2%を払うんだ」と書いた(太文字箇所は原文では大文字で強調)。

トランプ氏、NATO加盟国の防衛支出増を要求 ドイツを名指し批判 - BBCニュース

でもやっぱりその機会主義っぷりはともかくとして、結果論としてみれば正しかったわけでしょう。

  • ロシアのガスを買うのをやめろ。
  • 2025年と言わず今すぐ防衛費を増やせ。

トランプはウクライナを守るために2022年からタイムリープしてきたのかな???
トランプが献身()したおかげで、今のウクライナ情勢に多少なりともポジティブな影響を与えているのは間違いないんじゃないかな。
ああしてNATOの防衛費問題でむちゃくちゃしていると思っていたはずが、まさかトランプに感謝するときがやってくるなんて。いやまぁトランプが言うことだからと逆張りインセンティブを生んだ可能性はそれなりにありそうですけど。


クリミアをオバマが放置し、クリミアでトランプが煽った結果、防衛費2%神話がついに日本にまでやってきてしまった。
ということで防衛費GDP2%に不満のある人は、クリミア併合したプーチンを責めるべきだし、そして二番目に責任の重い=事実上クリミア併合を黙認し現在の状況を招いたオバマ(及びメルケル)さんのせいだし、もしくはアメリカの負担軽減という外交的成果を得ようとNATOで煽ったトランプさんのせいにすればいいんじゃないかな。


どちらにしてもなんもかんもクリミアが悪かったんや!
(今のウクライナ侵攻を見ながら)ぢゃあ何で2014年のクリミア併合の時何もしなかったの???
――と純真な目をした子供に聞かれると「ぐぬぬ……」としか言えないよねえ。当時は当時で我々大人も色々あってつらかったんや……。きっとミュンヘン会談のあの時の大人も同じことを思っていたんだろうなあ。



みなさんはいかがお考えでしょうか?