ベルサイユの教訓

今回も「屈辱を与えない和平」を成し遂げることができるだろうか?


仏大統領の「ロシアに屈辱を与えてはならない」発言にウクライナ反発 東部では修道院燃える - BBCニュース
ということで割と非難轟轟で大炎上なマクロンさんの「ロシアに屈辱を与えてはならない」発現であります。

3日には仏メディアに対し、自分はプーチン氏に、ウクライナ侵攻という「歴史的で根本的な間違いを犯した」せいで、今ではロシアが「孤立」してしまっていると伝えたと明らかにした。

「国民と自分自身と歴史にとって、歴史的で根本的な間違いをしたと、本人に伝えた」と、マクロン氏は述べていた。

さらに5月初めにも、ロシアとウクライナの停戦を呼びかけ、西側諸国は「(ロシアに)屈辱を与えたいという誘惑や、報復したいという気持ちに屈してはならない」と強調していた。

仏大統領の「ロシアに屈辱を与えてはならない」発言にウクライナ反発 東部では修道院燃える - BBCニュース

極一部のアクロバティック擁護な心情的親露派のみなさんを除けば、気付くと日本を含む欧米世界には対露ウォーモンガーばかりな昨今において、こんなことを言ってしまうと大炎上してしまうのはさもありなんという感じではあるよねえ。


ただ一方で、これって以前から一般的な歴史的教訓に基づいた――平時に見れば割と「理性ある」発言だったとも思うんですよね。
つまり、私たちは第一次世界大戦後のベルサイユ条約でドイツに『屈辱』を与えた結果がどうなってしまったのかを知っているわけだし。更にはその反省として第二次大戦後のドイツをヨーロッパの一員として寛大に迎え入れたことをまぁ成功体験として認識しているわけでしょう。
その文脈――寛大なるフランスのおかげで!――から言えば、フランスのマクロンさんがそれを言うのはまったく不思議ではないと思うんですよね。。
今回もまたフランスは寛大にも敗者に手を差し伸べることで、ロシアを新たなヨーロッパの一員として迎え入れることができるのだ、なんて。
問題があるとすれば、未だウクライナが勝つかどうか解らない状況下でそんなことを言ってしまうタイミングの悪さと空気の読めてなさ、ということなんじゃないかな。
もしかしたらフランス大統領に上がってくる情報からはロシア崩壊秒読みなんていうyoutube動画タイトルみたいなソースがあるのかもしれませんけど。



メルケルのあとしまつ - maukitiの日記
先日の日記でも冷戦後のヨーロッパの目論見について少し書きましたけども、あの時もやっぱり『寛大に』ロシアを迎え入れることでヨーロッパの一員として組み込もうではないか、という機運はあったんですよ。
それこそが「G8」であったし、対テロ戦争を通じてのNATOとロシアの協力関係の構築でもあった。*1
――ところがそうした関係を、まぁ端的に言ってロシア=プーチンはまったく望んでいなかった。
同床異夢な人たち。
今回の、西側に近づくウクライナという現実に反発したロシアによるウクライナ侵攻で明らかになったように、彼らは明確にその接近にNOを突きつけているわけであります。


「屈辱を与えない和平」について。
はたして次こそはそれが成功するんでしょうかね?
どちらにしても、やっぱりそもそもウクライナが勝てるのか、という点こそが大前提なんですけど。


みなさんはいかがお考えでしょうか?
 
 

*1:この辺が割と難しくセンシティブな所で、現状の親露陰謀論者たちが言うように完全にロシアに悪意を以て東方拡大をしたというだけでなく、やっぱりそこには多少の(そして押しつけがましい)善意からヨーロッパがそうしていたのも間違いないんですよね。