「タレント候補やめますか? それとも民主主義やめますか?」

「二人は幸せなキスをして終了」オチのハッピーエンドな日記です。ハッピー?


生稲晃子氏「富裕層への課税強化」に「反対」「賛成」と真逆の回答 あまりの矛盾にツッコミ殺到(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース
なんか最近ものすごくtwitterトレンドに乗ってて、よく知らないけどきっと素晴らしい政治家なんやろうなあ! と思っていたものの逆パターンで(察し)となったやつ。

 そんな彼女の“付け焼刃ぶり”が、新聞社が各候補者に実施するアンケートで露呈することになった。

「大手新聞社は候補者に対して、争点になりうる政策について賛否を尋ねるアンケートを実施しており、有権者が各候補者の政策を知る手がかりになるように、ネット上で公開しています。そこで生稲氏は、毎日新聞のアンケートにある『富裕層への課税強化に賛成ですか。反対ですか』という項目について、『反対』と答えています。

 しかし、朝日新聞が設けた『所得や資産の多い人に対する課税を強化すべきだ』という設問には『どちらかと言えば賛成』と回答しているんですよ。質問の趣旨は両紙でほぼ一緒なのに、回答が真逆になっています。これでは、生稲氏が富裕層への課税についてどんな考えを持っているのかわかりません」

生稲晃子氏「富裕層への課税強化」に「反対」「賛成」と真逆の回答 あまりの矛盾にツッコミ殺到(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース

うーん、これは邪悪とかそういう次元ですらなく、ただただ何も考えてないパターン。


ただまぁ天邪鬼的に逆張り擁護をするならば、ここまで「無関心」というのは毒にも薬にもならないからこそ、それなりに存在意義がある(故に自民党も上手く「使って」いる)んじゃないかとは思うんですよね。
票を集められるのも重要な資質であるし、更にそれが特に政治的意見を持たない「数」として計算できるならば尚いい。
タレント候補であろうとそうでなかろうと、少なくとも反ワクチンや怪しげな代替医療や福島差別などカルトな運動に熱心な寄りはずっとマシでしょう。実際に私たち日本人の大多数だって、そうしたノンポリで、極端に走らない中庸なポジションで、素朴に、まさに『富裕層への課税』について確たる意見も持たないまま生きているわけで。
その意味でやっぱり彼女は(もちろん実際には存在しないものの)平均的日本人を代表しているんだと思います。
いやまぁだからこそ自分は平均より上だと自称する「かしこいかわいいエリート」たちから批判されるのは理解できるんですけども。
……レイク・ウォビゴン効果*1? なにそれおいしいの?



でもこんな民主主義政治の欠陥なんて昔から言われているお話ではあるんですよね。
民主主義の古典的な学説においては「国民は知識を持ち思慮深い」という前提で話が進むものの、現実に生きる私たちはまぁミクロな個人的生活で見るアレやコレな出来事からまぁそんなことありえないということを知っているわけでしょう。
私たち愚かな日本人――と日本特殊論大好きな人たちが言いますけどもこんなのちょっと海外のニュースを見ていたらどこの国でも一緒だって解るはず――は、自分が本当は一体何を望んでいるのかすら理解しないまま、更には偏った認識で一杯という自覚すらなく投票所へ足を運ぶ。
石川優実さんの新しい心 - maukitiの日記
石川優実さん「私がグラビアをやってた時も風俗で働いていた時も私の自由意志で選んでやっていたことになるんだな。あんなしんどい精神状態の時のものを自己決定権といわれるのはつらい」 - Togetter
石川優実さん風に言えば「生稲晃子に投票したあんなしんどい精神状態の時のものを、自己決定権といわれるのはつらい」なんて。


今回の件もアンケートが馬鹿にされていますけども――いや実際にバカにしていい内容だとは思いますけども――本当にそれが価値があるなら初めからアンケート調査の結果で政治家を決めればいいんですよ。
この辺の構図は例えば投票支援サイトやアプリなんかも同様で、そもそもそれに価値があるのであれば初めからそのアプリやサイトが選挙権を持てばいいんですよ*2
それで彼女のような典型的なタレント候補は大部分、いやかなりの部分……まぁちょっとは減るんじゃないかな。
しかしそれでは民主主義とは絶対に言えないでしょう。
そうしたくないのであれば、やっぱり知識が偏り思慮の浅い私たちが身の丈にあった候補者を地道に選んでいくしかない。今の政治を変えたいと願うのであればそういう人に投票すればいいし、そうでなければそういう人に投票すればいいし、そして『富裕層への課税』に一家言ある人に政治家になって欲しいのであればそういう人に投票すればいいんですよ。
ただし、民主主義制度においては愚かな大多数の他の人は必ずしもそうはしないだろう、というだけ。

心理学で「自分は他の人と比べると、平均以上である」と自己評価を過大に捉えるという基本的な帰属の錯誤を生み出す認知バイアスのことである

レイク・ウォビゴン効果 - Wikipedia

……レイク・ウォビゴン効果? なにそれおいしいの?(二回目)




政治家はより賢く清廉潔白で国民に奉仕する存在であって欲しい、なんて。旧き良きアイドルへの幻想かな? 
――あれ、そういえばこの生稲晃子さんの前職って……あっ! 
彼女に投票しない人も、投票する人も実は同じことを考えていたなんて。両者はキスをして終了くらい素敵なハッピーエンド。やっぱり私たちは同じ人間であり、同じことを考えわかり合えるんだなって。


民主主義制度におけるタレント候補の功罪について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:レイク・ウォビゴン効果 - Wikipedia

*2:『操られる民主主義』の中で著者のジェイミー・バートレットは、まさにそのように投票やモラルの判断についてコンピューターに自発的に委ねる=操られる時代が近いうちにやってくると指摘している。