21世紀の戦争と平和

ウクライナが平和でありますように。


ウクライナ侵攻あの日何が 重なった“想定外”とキーウ攻防の舞台裏 | NHK | WEB特集 | NHKスペシャル
ということで1年だそうで。いやあ結局1年戦争を続けるとは思いませんでしたよね、いや、そもそも戦争が始まるとも思っていなかったし。
「不当な平和許されぬ」 国連総会で林外相が演説 | 毎日新聞
その節目に日本政府が国連でこういうことを言えたのはものすごい遺産というか、成長していると素直に感心するしこちらも驚きであります。それこそ二度のイラクアフガニスタンなんかの頃と比べるとずっと成長している。
ちゃんと日本国憲法の精神と平和主義教育の成果が出てて偉い!

 林氏は演説で「平和は原則に基づくものでなければならない。敵対行為は今すぐにでも停止すべきだが、それは必ずしも包括的、公正かつ永続的な平和をもたらすものではない」と指摘した。

 その上で「もし、ある常任理事国があなたの国を侵略し、領土を奪った後で敵対行為を停止し、平和を呼びかけてきたとしたらどうだろうか」と強調。「私はこれを不当な平和と呼びたい。このような行為が許されるのであれば、それは侵略者の勝利となってしまう」と述べ、ウクライナ支援を続けるよう訴えた。

「不当な平和許されぬ」 国連総会で林外相が演説 | 毎日新聞

ぶっちゃけそこまで言っていいのかとちょっと心配になるほどではあります。最近の日本政府の武器購入や同盟構築といった軍靴の足音とはかなりベクトルが違いながらも、かなり一線を越えてる発言じゃないかと。


いやまぁここまで散々ネタにしてきているように、一方では「降伏しろ」論が尚も続いている本邦でもあるんですけど。
ウクライナ侵攻、「戦え一択」にかき消される即時停戦の声 被爆地・広島からの訴え:朝日新聞GLOBE+
わかるわかる~、90年前のちうごくも盧溝橋で大人しく満州(+安全のためにもうちょっと大きい部分♪)の権益を大人しく認めていれば大戦争にならなかったのにね、なんで停戦しなかったの? 中国は日本と違って平和の敵!!1 同様にロシアのウクライナ侵攻も、キーウを直撃して抗戦意欲を奪って短期決戦を狙ってあげたのに戦争を続けたウクライナも平和の敵! 80年前の真珠湾でもおなじことをしていた平和を愛する大日本帝国がナンバーワン!
……とまぁ昨今の本邦にネトウヨ大杉言説には元々あまり賛同しないところではあったんですが、こうした一周回ってネトウヨ的価値観に辿り着いている平和至上主義な人たちを現実に見せられると、まぁちょっと同意してしまうところではあるよね。
まさかこんなに「侵略される方が悪い」「侵攻するのも仕方ない」「追い詰める方が悪い」的大日本帝国支持者が根強く残っているのにはのはリベラルな僕もびっくりですよ。




でもまぁ――「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」という千代ちゃんのマジレスはさて置くとして――上記林外相の言う『不当な平和』の何が悪い、と開き直られたらまぁそれはそれでちょっと考え込んでしまうわけで。
つまり『普遍的に善なる価値観がある』という私たちリベラルの大前提からは受け入れられるモノではありませんけども、多少の(ここ重要)権利が奪われたところで平和常態(ここも重要)である方が重要である、という価値観が別の選択肢としてあるのもまぁ間違いないわけで。
それこそ今回の当事者であるロシアはそう考えているし、また同様に現代中国がそう考えているのも間違いないでしょう。そしてそれは世界全体において少数派かというとそういうわけでは絶対にないし、本邦にもごくごく素朴で無邪気な思いから「抵抗しなければいい」と仰る人たちがいるように。そのように考える彼ら彼女らにとって、個人の権利や財産保護といった平和の中身ではなく、とにかく戦争が起きていない平和であること自体が重要なんですよ。
だからこそ、上記の「不当な平和許されぬ」という極めてリベラルな発言は、不当な平和が存在してもいいと考える人たちとは致命的に一線を画している。
しかし同時にまた、悲しいかなそれは確かに「戦争が終わらない」理由でもある。

  • 私たちは不当な平和がやってくると解っていながら、しかしそれでも戦争を終わらせるべきなのだろうか?
  • あるいはこのままでは戦争がすぐには終わらないと解っていながら、しかしそれでも不当な平和を拒否し続けるべきなのだろうか?

まぁ上記を言うのもやっぱりそれはそれで一つの選択肢だとは思うんですよね。そうしたポジションなのであれば堂々と主張すればいい。それこそ弱小国は強国に好いようにされるのがヒューマンカインドなのだ、と堂々と言われると確かに国際関係論(の一部)としてもそれなりに肯いてしまうところではあります。まぁリベラルな僕としては絶対に受け入れたくない結論ではありますが。
一方で、これまでのロシアの振る舞いを見ていれば確実に停戦の後には「不当な平和」がやってくるのが解っている癖に、そこに言及しないのはフェアではないよね。まるで政治がすげ変わってそれだけで市民の生活が変わらないと主張するのは最早プロパガンダに等しい。



ここまで割と誰も興味無いネタだろうなあと思いつつも趣味の日記を続けて来ていた僕ではありますけども、まさか21世紀にもなってこんな大っぴらに『戦争と平和』について語られる時代がくるとは思わなかったよね。その意味では、日本にとっても確実(良いか悪いかは別として)に影響のあった転換点となったよなあと一年経ってしみじみ思います。
みなさんはいかがお考えでしょうか?