オバマへの失望はトランプへの希望かもしれない

『核なき世界』の失敗はオバマがわるかったんやない、世界がわるかったんや!


「イエス・ウィー・ディド」、オバマ米大統領が任期最後の演説 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでオバマさんの最後の演説だったそうで。個人的には最初の印象よりもずっと思ったよりは努力はしていた大統領だなぁと思うと同時に、思った以上に『負の遺産』残しまくった大統領かなぁと。前任者が子ブッシュさんでもあったし、まぁ多少はね。

【1月11日 AFP】米国のバラク・オバマBarack Obama)大統領は10日、任期最後となる国民向け演説を地元シカゴ(Chicago)で行った。大統領に初選出された際に用いられたスローガン「イエス・ウィー・キャン(Yes We Can、わたしたちはできる)」を「イエス・ウィー・ディド(Yes We Did、わたしたちはやり遂げた)」に変え、ホワイトハウス(White House)での8年間を締めくくった。

「イエス・ウィー・ディド」、オバマ米大統領が任期最後の演説 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News

もちろんアメリカ及びロシア両国の核兵器が減ったことで地球上に存在する核兵器総量そのものが減ったのは間違いないものの、一方でそれ以外の(現状維持の英仏除いた)核保有国のほとんどはむしろ増えているわけで。「総量では減ってるからセーフ」か「それでも核は減ってない」のか。
もちろん核なき世界=ゼロというのは言葉のあやではありますが、これで「やり遂げた」というのもちょっと無理があるよね。



ただオバマさんを擁護すれば別に彼だけに限った話ではなく、トルーマンから子ブッシュまで歴代米大統領核戦略のほとんど全てが同様に、そのタイミングでの国際関係のトレンドや国内政治趨勢(よりぶっちゃければ議会勢力)によって左右されてきたわけで。まぁ最初から言われてたお話ではありますけど、問題が複雑で大き過ぎて個人の努力どうこうでどうにかなる話ではないんですよね。
――結果として見れば、オバマさんはそのどちらにも裏切られた。あるいは根本的にやる気が見られなかった。
当たり前の話ながら米ロの核兵器を一緒に減らすには相手との協調関係が重要なわけですよ。両国の核削減合意が進んできたのはほとんどその両国関係の良し悪しと一致してきた。それなのにロシアとの関係は、ほとんど冷戦後最低と言う所にまで行き着いてしまっている。これなら次のトランプさんの方がまだ望みはあるとさえ言えてしまうレベル。他を見ても、自身も成果の一つとして挙げているイランはどうにか成功と言えるかもしれないけれど、北朝鮮や印パそして中国の核兵器を減らすことは絶望的であります。広島訪問は、うん、まぁ、演出としてはよかったよね。
両輪のもう一つである国内政治勢力も、オバマさん誕生の瞬間を除けば議会の「ねじれ」現状はほぼ常態としてあり続けた。『核』に関する予算承認や、各種条約批准も議会の協力が無ければ進まないのにね。『核なき世界』を目指すにあたって最も重要なメルクマールの一つであった包括的核実験禁止条約=CTBTも批准できなかったように、減らすどころか増やすことへのハードルを上げることさえ無理だった。正しい(と考えている)ことをやるにあたって、独裁政権なら無視できる民意も、良くも悪くも民主主義国家では選挙で勝たなければなにも進まないのだから。



掲げた理想へ向けて本人のやる気こそあったものの、しかし結局は現実で動くべきだった外交も議会運営もまったくそうした方向へ進められなかったのを見ると、そらこうなるよねという印象ではあります。「口ばっかり」というのはオバマ批判の良く聞かれるフレーズではありますが、少なくとも『核なき世界』に関してはまったくその通りだったよねぇ。
彼は外交においても、議会運営においても、『核なき世界』という理想に失敗した。


個人のポジションはあっても、結局は国内にしろ国外にしろ現実のパワーバランスの限界でしか動けなかったオバマさん。
逆説的に、同じく個人のポジションを声高に鮮明にしているトランプ政権への慰めにはなるかもしれないね。オバマさんがあれだけ「言っても」結果はご覧の有様だったように。そうした現実の力関係を変えられるほどトランプさんが有能だったら困ってしまいますけど。


なにはともあれ、オバマ大統領おつかれさまでした。