EUはドイツの拘束具なのよ!

最近面白いと思っているブルームバーグのマシュー・リンさんのコラムから、現在のユーロ危機で槍玉にあげられてるドイツかわいそう、なお話。


【経済コラム】ドイツへの集中砲火はまるで第二次世界大戦−M・リン - Bloomberg.co.jp

コンセンサス(共通認識)は極めて明確なようで、世界経済が再びリセッション入りする、あるいはユーロが崩壊するようなことがあれば、それはすべてドイツの責任というものだ。ドイツ国民の貯蓄重視性向と分相応の暮らし、赤字を管理可能な水準に抑制する姿勢が、世界が直面する最大の脅威だという。
この分析には無理がある。まったく逆なのだ。確かにドイツは巨額の貿易黒字を有する。財政赤字削減にも取り組んでおり、メルケル政権は800億ユーロ規模の増税・歳出削減策を来年からスタートする計画だ。しかし、そうしたことは誰にとっても脅威ではない。その理由はこうだ。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aLQKPdtts8g8

そんなドイツ責任論が間違っている理由は上記引用先を見てもらうとして、最大の危機に直面するに至った現在、まぁそんなドイツ責任論へと回帰しちゃう現状は皮肉な話ではありますよね。だってそもそも、そんな壮大な欧州連合にとって最初の道筋をつけたはドイツを中心とした「欧州石炭鉄鋼共同体」だったんだから。

昔も今も、ユーロにとってドイツはクリティカルな問題です

欧州連合への最初の一歩だった欧州石炭鉄鋼共同体は、ぶっちゃけてしまえば、ドイツに対する近隣諸国への期待と恐怖のジレンマから生まれた。
当時西ドイツはより工業化を進めていきたいと思っていたけども、対するフランスベルギーオランダなどの周辺国家はそれを、ビジネスのチャンスだと思うと同時にヒトラーによる戦車や砲弾の過去をも同時に思い出させた。そのジレンマの解決方法としてのジャン・モネの石炭と鋼鉄の共同管理案だった。概ねそれは成功のうちに終わり、結果的としてそれは「政治より経済を優先させる」という教訓の成功例にもなった。


結局の所、その頃からEUはドイツの拘束具だったんですよね。表向きはあまり言われないけれど(裏では皆言っている)、欧州連合はドイツをいかにして封じ込めるかという目標の下にあったと。
で、まさに今の状況、これまでで最大のユーロの危機はそうした事を証明してしまっているわけだ。どっかのパロディ映画にありそうな『ドイツ以外全部沈没』的状況。

ドイツ国民の貯蓄重視性向と分相応の暮らし、赤字を管理可能な水準に抑制する姿勢が、世界が直面する最大の脅威だという。

というのはアホらしいけども、まさに正しい。ドイツだけが「まとも」であるが故に今回のユーロ危機はより過剰に強調されている面は確かにあるから。もしドイツがもっと無能だったらこんな危機は無かったかもしれない、ユーロ自体なかったかもしれないけど。


そうしてドイツはアメリカからフランスからEUから批判されてしまう。もっと周りに合わせろよ、と。
あの頃から何も進歩ないのかよ、と見ると確かにそう見えてしまう状況はまぁなんだか気の抜ける話ではありますよね。がんばれドイツ。