『原点』へと回帰する(ドイツを除く)欧州連合諸国たち

まぁつまりそれっていつか見た「対独大同盟」ですよね。


http://econdays.net/?p=6565
ということでいつもの、例によって例の如く、なクルーグマン先生のお言葉ではあります。「緊縮政策を推すバカな政治家爆発しろ!」……お、おう。

言うまでもなく,ドイツはこういう結論がお好きでないし,中央銀行の首脳陣たちもそうだ.彼らは,あくまで痛みをこらえきることで繁栄がくるという幻想にしがみつく構えだし,失敗してる戦略の継続こそ責任ある行動だと言い張る.でも,どうもフランスの大統領官邸からは,もはや全面支持は得られなくなりそうだ.そして,信じようと信じまいと,これはユーロと「ヨーロッパの企図」の両方ともが,ほんの数日前より生存の確率を増しているということを意味する.

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しかしこれってこのタイトルと合わせて、経済的にというよりも、ヨーロッパ大陸における国際関係としてもかなり面白いことを言っていると思うんですよね。
上記でクルーグマン先生は「統合を密接にしていくことで平和と民主主義を推進しようという長きにわたる「ヨーロッパの企図」の営為」とそれを説明しています。しかし、元々欧州連合による『ヨーロッパの平和』が意味する所と言えば、それは「対共産主義陣営」という表向きの看板と並んで、もう一つ「如何にしてドイツを封じ込めるか」ということがずっとその大前提としてあったわけです。


つまり、ユーロと「ヨーロッパの企図」が生存の確率を増していることを意味する、というお話が(それこそ)意味しているのってつまりそういうことだとも言えるんじゃないかと。ドイツを封じ込めるからこそヨーロッパには平和が訪れるのだ、という身も蓋もない歴史的経験を思い出している人たち。この辺は以前の日記でも書いたので引用。

20世紀以降のヨーロッパの平和とは究極的にドイツを如何に扱うかという問題でもありました。1871年ドイツ統一以来、ヨーロッパの勢力均衡は決定的に破綻してしまったのです。その時期にイギリスの首相となるディズレーリが看破し「欧州の勢力均衡は完全に破壊された」と述べたように、ドイツが強すぎて最早均衡状態を維持することができない。その破綻したバランスオブパワーが、案の定というべきか、結果的に二度の世界大戦を招いたのです。

現在の(再び統一された)ドイツを見てもそれは解りますよね。やっぱりこうしてドイツはヨーロッパ最強の経済国家として君臨し続けている。故に欧州連合はその成り立ちである『欧州石炭鉄鋼共同体』からずっと如何にしてドイツを封じ込めるかということが焦点となってきました。結果的にその試みは成功したと言えるでしょう。他ならぬドイツ人自身の「もう戦争などやりたくない」という意識によって、ヨーロッパの平和そのものである『欧州連合』はドイツ自身の協力の下進んだのです。欧州から戦争を根絶させる為の一つのヨーロッパとして、そして対ソ連の為に必要な一つのヨーロッパとして。

いかにしてユーロ通貨は象徴となったのか - maukitiの日記

結局、そんな状況が再浮上しつつあるんだなぁとも思うんですよね。まさに欧州連合――ドイツへの拘束具が効かなくなっているからこそ『ヨーロッパ人たちは反旗を翻す』のだと。そして実際にドイツはそんな自らのやり方を認めようとしない周辺国を煩わしいと思いつつある。
確かにその点からすれば、ドイツの暴走を許さないことこそがやっぱり19世紀後半からの歴史的事実として、ヨーロッパ大陸に平和をもたらしてきたわけだし。強大過ぎるドイツに必死に抵抗を試みる周辺諸国たち。まぁぶっちゃけものすごくいつか見た光景ではありますので、なんというか苦笑いするしかありませんよね。







端から見てての心象風景としてはこんな感じでしょうか。

(弾け飛ぶサルコジ
イギリス「拘束具が!」
アメリカ「――こうそくぐ?」
イギリス「そうよ。あれは装甲板ではないの。ドイツ本来の力を私たちが押え込むための拘束具なのよ。その欧州連合という呪縛が今ヨーロッパ市民の力で解かれていく。オランドにはもうメルケルを止めることはできないわ」