今日も「核武装論」をめぐって悲喜こもごも

奇しくもどちらも「24日発表」という辺り、色々考えさせられるなぁと。



日本 NPTの核不使用声明に署名せず NHKニュース
ということで日本は署名拒否したそうで。まぁもちろん拒否することによるダメージはあるんでしょうけど、しかしどう考えても署名した場合の方のダメージの方が大きそうなので仕方ありませんよね。
つまるところ今回の署名拒否は日本の核武装の為というよりは、まったく逆に日本が「非核」という現状維持を望んでいることを示す為にも、拒否する以外にない。
もちろん現状維持ではなく、これで日本を取り巻く核問題及び安全保障が何かが変化するのならばやればいいでしょう。せめて日本に核を向けているロシアか中国か北朝鮮のどこかさえ署名していれば選択の余地はあったかもしれない。でもまぁそもそもアメリカさんちの『核の傘』に頼っていながら「核兵器は使わない!」と声明を出すのも、それはそれでふざけたお話でしかありませんよね。自分が撃たなきゃセーフなのか。まぁ確かに『非核三原則』にも書いてありませんしね。
かといってその傘から抜けることなんて、それこそ中国やロシアを含め、現実問題としては誰も期待していないわけで。仮にアメリカの傘から抜けると言うことはつまり、すわ自主配備か、ということに絶対になってしまう。中の人たちがどう考えているかが問題ではなくて、「周囲から見て」どう見えるかが問題なのです。故にならないわけがない。日本がそうなったら事実上現状のIAEA=NPT体制は崩壊であります。
まぁこうした「他者からの視点」という観点について、無邪気な日本の核武装論者の皆様も同様で、この辺りの事情についてはまったく考慮されていないので疲れるお話ではありますが。
署名しなかったことでNGOから批判されたそうですが、ならば同時にもしこれに日本が署名した場合、アメリカや中国やロシアや韓国や北朝鮮といった周辺国から一体どういう目で見られることになるのか、についても考えるべきだよなぁと。
――ということで、今回の件で批判する点があるとすれば「一体なんでこんなことに巻き込まれたんだ」という点に尽きます。



まぁこうしたどこまでいっても現実問題に寄与しない愉快なお話はさて置くとして、個人的には『核』をめぐる問題についてはこちらの方がよりクリティカルではないかなぁと思います。
米韓原子力協定延長へ 韓国の核燃料再処理認めず - MSN産経ニュース
『米韓原子力協定』は現行のまま維持、というお話。でもこっちはニュースとしてあんまり扱いが大きくないんですよねぇ。東アジア全体の核問題に関わる重要な協議であるはずなのに。一方で、恒例行事な靖国なんちゃらがまた燃え上がっていたりするのも何だか疲れるお話ではあるんですが。

 18日まで行われた期限切れに合わせた改定協議で、韓国は核燃料再処理などを認めるよう求めたが、米側は核拡散を懸念し、拒否してきた。期限延長は5月の米韓首脳会談を前に対立の表面化を避ける狙いがあるが、韓国は事実上、交渉に失敗した。

 原子炉で使用した核燃料を再処理して取り出すプルトニウムや高濃縮ウランは核兵器の原料にもなる。1970年代に当時の朴正煕政権が核開発を秘密裏に進めたことを受けて、米国が韓国に原発技術を提供する代わり、核兵器開発能力を奪うために現行協定が結ばれた経緯がある。(共同)

米韓原子力協定延長へ 韓国の核燃料再処理認めず - MSN産経ニュース

しかし北朝鮮さんちの核実験もあって、改定のタイミングとしては見事に最悪ですよね。あちらでは「日本が認められて韓国が認められないのはダブルスタンダード云々」という反発があるそうですけども、しかしどう考えても時期が悪すぎます。
北朝鮮さんちの脅威が盛り上がるからこそ彼らは核主権をより求め、しかし北朝鮮さんちの脅威が盛り上がるからこそそれは絶対に認められなくなっていく。いやぁどうしようもありませんよね。
CNN.co.jp : 韓国で核武装の世論台頭、3分の2が支持 北朝鮮の威嚇受け - (1/2)
韓国がもくろむ時代錯誤の「核武装論」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
かくして韓国さんちでは定期的に「核武装論」が盛り上がることになる。もちろんそれは北朝鮮という脅威の存在あってこそ、と擁護することもできるのでしょうけど、しかし韓国さん自身の振る舞いとしてもこれまで結構ギリギリのラインを攻めてしまってきているので自業自得なお話でもあるわけです。
上記にあるように、そもそも「韓国の」秘密裏の核兵器開発が背景にあって、現行協定が生まれたわけで。
しかも更には、この協定がありながら尚韓国さんちは1982年・2004年にはその再処理及び濃縮実験まで勝手にやっていたとあって、それはもうアメリカさんちからの信用が低空飛行を続けているわけであります。
ただでさえ微妙な北朝鮮の核問題に火にガソリンを注ぐことになってしまいかねない韓国さんちの核問題。夢に終わった『朝鮮半島の非核化』について。ほんともうこれさ実現していれば世界は大分マシなものになっていただろうに。南北の兄弟そろってめんどくさいお話ではありますよね。


次の改定協議となる二年後には北朝鮮さんちが大人しくしてくれているといいね。