ゼロサムゲームに突入していく世界

東洋とか言いつつどう見てもそれって中国さんちのお話ですよね、なお話。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5249
中々面白いお話だと思います。再び「東西の逆転が起きる」の辺りは少し疑問が残りますけども、しかしその逆転を「起こそう」という意思は中国が既に明確に発しているわけで。その意味で興味深かったのは以下の部分です。

こうした効果は重要ではあるが、少なくとも、一層の繁栄と広がる機会という皆が得する変化を反映している。最大の難題が生じるのは、結果がゼロサムになる可能性の高い分野だ。その大きな例が資源であり、もう1つが政治力だ。台頭する東洋は間違いなく、世界の勢力バランスを変え、資源が潤沢で安い状況を変えていく。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5249

例えば単純に、これまでもあった中国の経済的発展、よく言われるような「中国の経済規模が日本を抜き、そしていつかアメリカも追い抜くのではないか?」という予想・あるいは事実は、それだけならば別に是非が議論されるような問題ではないんですよね。だってそれは非ゼロサムゲームでもあるから。中国が勝とうが別にそれは全体のパイが拡大しているだけの話であって、結果的には全体に利益をもたらすのだから。


しかし、それが政治的・あるいは資源の問題になると、まったく話は違ってくる。故に現在の中国に皆が懐疑的な視線を向けてしまう。彼らは次のゲームを始めようとしているから。
それらは本質的にゼロサムゲームにしかならない。引用先でも挙げられているように資源が解りやすい例で、誰かがより多く・高く買うということは、別の誰かがその値段で買うはずだったものだから。とはいえ、それらは、おそらく、まだ喫緊の問題ではない。まだ中国だけだから(といってもかなりインパクトはあるんだけど)。それ以外の後進国だった国々が参入するのは、いつか訪れる将来の話ではあるものの、しかしまだ余裕は残っているから。


で、それよりももっと問題視されるのが「政治力」の問題であると。東洋(ここではほとんど中国の意)が本質的に求めているのはその政治力、より正確に言えば「地位」なんですよね。
地位というものは、それはもう人間が強く根源的に欲していて、そしてもっとも付き合いの長いゼロサムゲームであります。その性質とは本質的に「より高い地位は他者から奪う事でしか手に入れられない」ということであって、上記の経済的発展のような「より豊かに」というものとは全く違う性質なんです。相手から奪うしかない以上、そこで両者の摩擦・対立は不可避となる。
そう考えると現在の中国と周囲の対立構造は、彼らがその「地位」を求めた時点で(そしてその本能を完全に否定も出来ない)、もう既定路線だったんだなぁと諦観してしまいます。だってそれはゼロサムゲームでしかなかったんだから。


ではこうした政治力・地位を巡るゼロサム競争をいかに解決すればいいのか?
という点についてはやっぱりさすがのフィナンシャル・タイムズさんでもぼんやりとしたことしか言えていないわけで。

 権力政治についても同じことが言える。我々が文明を破壊する力を持った今、強国間の関係は危険になった。原爆が使われた後、アルバート・アインシュタインは「文明と人類にとって唯一の救いは世界政府の創設にある」と訴えた。アインシュタインはナイーブだと非難されたが、彼のコメントは今も正しいのかもしれない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5249

『彼はナイーブだと非難されたが』と断る辺りに書いている本人の自信のなさが窺がえます。確かにそうした世界政府は答えの一つではあるものの、しかしそれが、もう既に始まっている現在の中国のゼロサムゲームに間に合うとはとても思えませんよね。
ともあれ、こうした不毛なゼロサムゲームの解決方法としては結局の所二つしかないわけであります。

  • 一つは、上記に書かれたような第三者機関(世界政府)によって、その競争のルールを決定すること。
  • もう一つは、話し合ってその不毛な競争をやめること。

後者は例えばかつて私たち人類が何度か成功した、そして失敗もした、方法でもあります。当事者同士の合意によるいくつかの軍縮条約などによってゼロサム競争に歯止めをかけようとした歴史的教訓。以前も書きましたけど、この方法で最も重要なのは「当事者が本気で無駄だと自覚した上で」やめることです。だから誰かがそれを中国に説得するか、あるいは中国自身が気付くしかない。
私たちはどちらでも好きな方法を選ぶ事ができる。一体どちらの方法をとるべきなんでしょうね?
「人類がひとつになる」ための、たった一つの冴えたやりかた - maukitiの日記
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まぁこれらってうちの日記でも以前書いたお話ではあります。その不毛で危険なゼロサムゲームをやめる為に、「統一された世界政府」を創るのが先か、あるいは「中国を説得する・中国が自発的に気付く」のが先か。あるいは私なんかには思いつかないもっと別の何か、画期的な方法があるかもしれません。皆さんはいかがお考えでしょうか?