「一匹の亡霊がヨーロッパを歩きまわっている。反ユダヤ主義という亡霊が」

過去のやらかしによって自縄自縛なヨーロッパくん。



イスラエル軍、ガザ南部ハンユニスに前進続ける 戦闘まだ1カ月は続くとみる専門家も - BBCニュース
ということで案の定というか、ウクライナ事変と違ってほとんど誰もが「知ってた」と答えるような展開で凄惨なイベントが進行中だそうで。

しかし、米シンクタンク「ワシントン近東政策研究所」の軍事アナリストのネリ・ジルバー氏は、ハマスが崩壊目前だとの見方は「あまりに楽観的」だとBBCに話した。

同氏によると、イスラエルは戦闘開始前に推定2万5000?3万人いたハマス戦闘員のうち約7000人を殺したとしている。ただ、同氏の分析では、ハマスの五つの旅団のうち北部の二つは「極度のダメージ」を被っているが、南部の三つはまだ戦闘を続けているという。さらにハマスは今も「イスラエル南部だけでなく時には中部にもロケット弾を撃ち込み続け」ているだけに、ジルバー氏は、イスラエル軍の地上作戦は少なくともあと1カ月は続くだろうとしている。

イスラエル軍、ガザ南部ハンユニスに前進続ける 戦闘まだ1カ月は続くとみる専門家も - BBCニュース

うん、まぁ、そうねぇ。もちろんここで双方を――道義的にはイスラエルの方がより重く――批判することはできますけども、だからといって、悲しいことにだからといって口だけではなく実際の行動としてそれを止める気があるプレイヤーがいるかというと、まったくそんなのは見当たらないのが2023年の国際関係でもあるわけで。
――それこそそんなことが出来るのであれば、とっくにウクライナだって止まっているわけで。
――それこそもうあっちは丸2年以上戦争を続けることが見えてきているのだから。
……ということはつまり、イスラエルも誰も止めることができず、少なくともイスラエルが自発的に止める時期が来るのを待つしかないという救えない結論に。

「だってウクライナがそうなっているんだもんね」

現代国際関係においてこの言葉はやっぱり強すぎます。もう使用禁止にしたいくらい。
私たちがこれまで築き上げてきたリベラルな国際秩序は、「ロシアによるあからさまな侵略行為を止められなかった」という事実によって、ほとんどすべてこの言葉で片づけられてしまうレベルです。





ともあれ、イスラエルパレスチナ問題ではかのように『悲惨』位にしか今更思うところは最早ないんですが、一方でこちらもウクライナの時と同様に、ヨーロッパがまた面白可笑しいジレンマに陥っているなあと思うところではあるんですよね。
つまり「反ユダヤ主義」という亡霊によって。
イスラエルがおとなしくしていればまだ良かったんですよ。
ところがぎっちょん、今回のようにどう見てもやり過ぎなレベルで彼ら彼女らが殺しまわってしまうと、ヨーロッパは過去の自分たち自身の罪である反ユダヤ主義の否定と現在のイスラエル批判のポジションについて、より一層ジレンマに悩まされることになる。
その問題を議論するための反イスラエル反ユダヤ主義を「ちゃんと(ここ重要)」をどうやって区別すればいいの???


イスラエル建国によってそうした負の歴史についての問題をある意味で外に追い出すことができていたものの、足元のイスラム人口の増大とイスラエルの盛大なやらかしによって益々反ユダヤ主義について議論するのが難しくなっている。
ロンドンで反ユダヤ主義に抗議し大規模デモ、開戦以来初 前日には親パレスチナ・デモも - BBCニュース
特にそれはイギリスでは顕著で、ウクライナではあれだけ毅然とした態度を見せながらも、両者の区別をつけることがハッキリできないまま現状のイスラエルの行動の容認というか黙認というか看過につながっているのは間違いないわけで。
いやまぁどう見てもブリカスの自業自得だろというと身も蓋もないんですけど。
イギリスやドイツだけにとどまらない、反ユダヤ主義というヨーロッパの歴史そのものと深く結びついた燦然と輝く負の歴史。
それが多文化社会によるイスラム人口の増大と、イスラエルのやらかしによって再び現代における最前線の社会問題となりつつあるのは本当に皮肉なお話だよねえ。
ヒトラーイスラエル建国によってヨーロッパの外に追いやっていた反ユダヤ主義が、亡霊となって戻ってきてしまいつつある現代ヨーロッパについて。
共産主義という亡霊はほとんど駆逐できたのにねえ、反ユダヤ主義という亡霊の方はそうはいかなかった。


みなさんはいかがお考えでしょうか?