「宗教から自由であれ」と頑なな人たち

「無色」を目指すからこそわずかな色にも敏感になってしまう人たちのお話。


仏「ベール着用禁止違反」、初の罰金刑判決 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
CNN.co.jp:ブルカ禁止法違反で女性2人に罰金、フランスで初の判決

ハインド・アハマス被告はブルカを着用した罪で120ユーロ(約1万2000円)の罰金を言い渡され、もう1人の女性も80ユーロ(約8000円)の罰金を言い渡された。2人は5月5日に逮捕されていた。

ハマス被告はCNNの取材に対し、この問題について上訴するために処罰を望んだと話し、「罰金を言い渡されてよかった。これで欧州人権裁判所に持ち込める」と語った。罰金については「これは金額の問題ではなく、信義の問題だ」と指摘、「街を自由に歩けるようになるために闘っている」と決意をにじませた。

CNN.co.jp:ブルカ禁止法違反で女性2人に罰金、フランスで初の判決

これまでちょくちょく日記でも書いてきましたけど、こういうオチになると。
自らの正義を示すためにワザと捕まったそうです。へー。まぁありそうなお話ですよね。これが逆なベクトルに向かうと「愛国無罪」な人たちでありほとんどやってること同じじゃないの、という感じになるのであんまり個人的には賛成したくはないんですけど。


で、同じ日におきた出来事としてこういう話もあるわけです。
ローマ法王:帰郷、歓迎と反発 ドイツ、厳格な教義嫌い 議員100人が演説欠席 - 毎日jp(毎日新聞)
ローマ法王の演説、80議員欠席…独連邦議会 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

【ベルリン=三好範英】ローマ法王ベネディクト16世は22日、ドイツを初めて公式訪問し、連邦議会で演説した。

 連邦議会での法王の演説は政教分離原則に反する、などの理由で、620人の議員のうち約80人が欠席。ベルリン市内では左翼団体や同性愛者などによる数千人規模の訪独反対デモも行われた。法王は同日夜、同市内の「オリンピック・スタジアム」で約6万人を前にミサを行い、23日にはイスラム教徒との対話に臨んだ。

ローマ法王の演説、80議員欠席…独連邦議会 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

勿論これはドイツの話であり、そして(ドイツキリスト教民主同盟の党首でもある)メルケル首相の出身に対するポジショントークという面も多分にあるんでしょうけど、しかしそれが『建前』として通用するレベルでキリスト教でさえ、公共社会の前面に出てくるのを是としない空気がヨーロッパにはあるんですよね。
もしこうした反発がイスラム教における宗教的指導者に対して行われたら、一体どんな反応になるんでしょうね? と個人的にはわくてかしたくなります。


さて置き、まぁこうしたヨーロッパの態度を「頑なだ」と言うことは確かにできるんです。彼らはアメリカと方向性は違うだけで、同じくらい自分たちの価値観を(本当に善かれと思って)人びとに広めようとがんばっている。彼らは伝統に明確にNOと突きつけている。それは欧州憲法における宗教色の徹底的な(事実上のキリスト教への)排除の姿勢からも窺えるわけで。むしろそうやって無宗教化したきたからこそ、逆に新しく入ってきた色に敏感に反応してしまうのかなぁと。
その意味では、上記逮捕された彼女たちが『欧州人権裁判所』に持ち込んで勝算があるのかというと結構微妙なラインではありますよね。これがヨーロッパ合衆国ならぬアメリカ合衆国だったらかなり勝算はあったんでしょうけど。それはやっぱり彼らのより大好きな「男女平等」な思想とぶつかるわけでもあるから。もしイスラム教の男性も同じような格好する習慣があれば、ここまでの騒動にはなってなかったんじゃないかなーとは少し思うんです。



そんな「自由な宗教であれ」な人びとと「宗教から自由であれ」な人びと。似てるようでぜんぜん違いますよね。どちらも一貫はしていて、そして同じくらい善意に溢れて押し付けがましい人たち。
まぁ端から見て、というより宗教戦争の歴史の薄い私たちから見て、ぶっちゃけ「めんどくさいなーコイツら」という感じではあります。だがそれがいい