国家の接着剤

新生リビアさんちのイスラム法導入宣言について。


「新生リビアにイスラム法導入」、NTC議長発言に懸念も 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

【10月25日 AFP】リビアの最高指導者だったムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の死亡をうけて全土の「解放」を宣言した反カダフィ派「国民評議会(National Transitional Council、NTC)」は、シャリア(イスラム法)を基本として新生リビアの法律を整備していく方針を示した。イスラム教主義者たちは穏健な姿勢をとると話しているが、女性を中心に懸念も広まっている。

 国民評議会のムスタファ・アブドルジャリル(Mustafa Abdel Jalil)議長は23日、東部ベンガジ(Benghazi)で行ったリビア解放を宣言した中で、シャリアが法律の基本になると言明した。「シャリアに反する法律は全て無効だ」と語った。また、違法となる法律の一例として、42年続いたカダフィ体制下でイスラム教では認められている一夫多妻を禁じる法律をあげた。

 アブドルジャリル氏が、安全保障や教育などの重要課題より先にシャリアの役割について語ったことは、歴史的な演説に耳を傾けていた多くのリビア人を驚かせた。

「新生リビアにイスラム法導入」、NTC議長発言に懸念も 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

うちの日記のテンプレなお話ではありますけど、上記リビア国民評議会の宣言にしても、彼らが真に「積極的にやりたいこと」というよりはむしろその防衛的な反応から出たものだと思うんですよね。つまり、彼らはその『宗教』に頼る以外にリビアとしての国家の統一性を形成できないからじゃないかと。
それこそ今回の内戦以前から言われていたように、リビアはそもそもがバラバラな状態にあったわけです。諸部族乱立状態にあったものをカダフィさんがその強権によって抑え込んできたと。当然そんな「カダフィ後」はずっと懸念されていて、そしてそれが現実となった今、そこに立っている彼らがじゃあ国民のほとんど全てを占めるイスラム教から離れられるかというとそんなことありませんよね。だってそれを無くしてしまったら益々国家はバラバラになってしまうじゃないですか。結果的に彼らは好むと好まざるとにかかわらず、事実上それを選ぶ以外に選択肢はほとんど存在していない。


まぁ実際こうしたことは建国初期には結構よくある話ではあるんです。曲がりなりにも『単一民族』という幻想が成り立つ私たち日本からすると解りにくい話ではありますけど。例えばアメリカだってその建国期にはキリスト教プロテスタント)的な規範を基礎として、国家の統一性を確保していたわけだし。
ロバート・ニーリー・ベラー先生*1はこうした『共通の価値観(宗教や民族)』と、そして『建国初期における劇的な出来事(戦争や革命)』が融合されることによって、その国家として統一性が創造されると仰っているわけです。多種多様だったアメリカ人は独立戦争を乗り越えキリスト教的価値観の下に一つの国家として生まれ、そして現在の多種多様な国民を抱えるリビアカダフィ打倒を果たしイスラム教的価値観の下で一つの国家として再スタートを切ろうとしている。リビア人は一つのリビア国民として。


一連のアラブの春のお仲間であるチュニジアやエジプトにしても、今後イスラム教との関係性ってこうしたことからも考えなくてはいけないのかなぁと。皆さんはいかがお考えでしょうか?