チャーチル時代からのらりくらりと逃げてきた宿題をついに(自業自得で)提出するとき

イギリスの未来はどっちだ。



EU離脱か残留か、近づく審判の日〜イギリスはなぜ「自傷行為」に向かうのか?(笠原 敏彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)
アジアではフィリピンが愉快な民主主義の結果を見せ、アメリカでもトランプ騒動が益々面白くなっていますけども、ヨーロッパのイギリスさんちでも天下分け目の国民投票が@一月ちょっとにまで迫っているのでありまして。
どちらの結果が出るにせよ、良くも悪くもイギリスの命運を決めるのは間違いないのでしょう。
そももそもこれって欧州連合構想が現実の動きとなった瞬間から問われ続けている命題ではあるんですよね。それこそ構想の生みの親の一人でもあるチャーチルさんですら、欧州統合プロジェクトにおけるイギリスのポジションについてハッキリとは言及しなかったわけで。
――イギリスはヨーロッパから「一定距離」を保ち続けるのか、それとも欧州の一員として協力し統合していくのか。
おそらく、ここで欧州統合賛成に舵を切れば最早他人事のフリはできなくなり、更なるコミットへ踏み込むのは間違いない。もちろんプロジェクト自体が頓挫する可能性はありますけども、そうならなければイギリスは政治的経済的文化的にヨーロッパと更に一つになっていく。
ということでこのお話がひたすら混沌なのは、単純に国益に関するメリットデメリットという枠を超えて、ヨーロッパ大陸国とは似ているようで違ってきたイギリス国家ひいては『文明』というお話にまでいってしまうからなのだろうと個人的には思っています。


例えばアナール学派の重鎮であるフェルナン・ブローデル大先生は、『文明』とは「何を受け入れ何を拒絶するか」その判断の積み重ねによって文明の特性となる、と仰っているわけで。
国の外からやってくるもの。難民移民なんか見た目にも解りやすい例ですけども、それは目に見えない政治経済文化といった哲学思想価値観なんかも同様で、イギリスは戦後になっても大陸で生まれた欧州統合熱を横目にどうにかその「ふるい」を維持してきたわけですよ。ぶっちゃければ自分に都合の良いモノだけを受け入れ、それ以外は体よく拒絶してきた。
だからこれまでのイギリスにとって欧州連合との関係は、ぶっちゃけ都合のいい関係でもあった。ユーロ炎上を見ても解るように、尚も欧州連合プロジェクトは前途多難なわけで。最終的にどう言う所に行き着くのかまだ確たることは何もわからないのだから、中途半端に付かず離れずで様子を見ようと。それがチャーチル時代から続く初期からのイギリスの伝統的政策だった。
当然それは文字通り全てを掛けてるドイツなんかからは批判されたりもしてきた。

キャメロン首相の国民投票実施の決断には、事態がコントロール不能になる前に反欧州感情のガス抜きを図り、保守党内の欧州懐疑派と国内ポピュリズムの増殖の芽を摘むという狙いがあったのである。
その判断には、EU残留か離脱かという大きな問題は国民投票などで明確に決着を付けなければ、問題が尾を引き続け、イギリスを不安定化させるという強い懸念があったはずだ。

EU離脱か残留か、近づく審判の日〜イギリスはなぜ「自傷行為」に向かうのか?(笠原 敏彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

ところがぎっちょん何故か「旗幟を鮮明にせよ」という声が国内で高まり、まさかの国民投票にまで至ってしまった。いやぁひたすら愉快な人たちですよね。


ある意味首長選挙よりも長期的国運を左右する国民投票。結果的にそうなったのではなく、今回のように長期的に重要であることが自明な議論を『投票』で決めるのは、さすがに民主主義信奉者の僕でも色々な意味でなんか残酷だなぁと思ってしまいますけど。


がんばれイギリス。